DebtNet通信(vol.2 #24)  
「アフリカのNEPADイニシアティブ批判」
2002年8月22日

「新アフリカ開発パートナーシップ(NEPAD)」批判

1.カナダでのアフリカ人専門家会議

 NEPADは、今年3月、メキシコのモンテレイで開かれた国連開発資金会議に、南アフリカ、セネガル、ナイジェリアなどの首脳によって、提出された文書であった。さらに、これは、6月のカナナスキスでのG8サミットにも提出された。8月26日から開かれるヨハネスブルグ・サミットにおいても、議論されることになっている。
  カナだのクレティエン首相は、NEPADを熱烈に支持している。今年5月、カナダ政府が アフリカ人の専門家をモントリオールに集めて、NEPADについて諮問した。しかし、多くの専門家は、G8サミットの提出するより、むしろ、「アフリカに送り返して、世論に問うべきである」と主張した。
 NEPADは、平和、安全保障、貿易、投資、エイズ治療薬、食糧安保、民主化、グッドガバナンスといった広くアフリカの政治、社会、経済開発計画を描いたものだが、その作成のプロセスには問題がある。アフリカの多くの首脳たちでさえ、最近まで中身を知らされていなかった。
  多くのアフリカ人にとって、これは、単に、古い、しかもすでに失敗した戦略を集めたものにすぎない。開発計画についての“改革”もでに実施ずみであった。
  例えば、IMF・世銀の構造調整プログラムはアフリカ経済と政府を弱体化した。サハラ以南アフリカの28カ国は全途上国の飢餓の4分の1を占めているが、この飢餓は1980〜1996年に発生したのだが、この期間、ここでは、最も広範な貿易自由化が行われた。NEPADは、援助金を、外国の直接投資を促すための法的、制度的改革に使うという点にある。外国投資が貧困を削減するという立場に立っている。

問題点

 第1に、経済成長と外国投資が必ずしも貧困を削減しない。たとえば、ラテンアメリカでは、1990〜97年に貿易と投資が激増したが、貧困と経済格差は増大した。貧困を削減するためには、市民社会、とくに貧しく、弱い人々の参加が必須である。民主主義とガバナンスのビジョンを持たない開発計画は、市民社会をエンパワーメントしない。
 第2に、NEPADの改革を実施しても外国の直接投資は来ない。なぜなら、アフリカでは、NEPADに盛られた改革をすでに実施してきたのだが、ますます、外国投資は少なくなっていた。グローバルな外国投資の中で、アフリカのシェアは、1990年代半ばにはわずか1.3%、今日では1%にとどまっている。
 開発に必要な援助は、貧しい人々のBasic Human Needsの権利に基づいたアプローチを採るべきである。しかし、NEPADでは、社会サービスを基本的権利と認めていない。また教育の権利、健康の権利を強調していない。
 NEPADには、社会部門に投資する目的は、アフリカがグローバリゼーションのプロセスに参加することを可能にする、なぜなら、生産性と経済成長を高めるからだ、と書いてある。
 事実は逆である。経済成長はそれ自体が目的ではない。貧しい人々の生活の向上を目安にするべきである。
 真の“パートナーシップ”とは、貧困の根絶、不正義を正し、グローバルな機関を改革ために、アフリカの改革とともに、北の経済の改革が必要である。多くのアフリカ政府は、現在の貿易のルールの改革と債務の全面的な帳消しを要求している。最近いくらかの国で債務が帳消しになったとはいえ、多くのアフリカは教育費や医療費よりも多くを債務返済に充てている。
 IMF融資に付随した“条件”は114件にのぼる。そして、アフリカ人自身が、貧困と不平等をなくすためにどのような経済運営するのかを決定する権利を奪っている。これらの条件は、北の経済を利する貿易を促進する。
NEPADが発表され、G8がこれを承認すると、これは國際的な議題になった。今日、市民社会の参加が必要である。

2.アフリカの開発挑戦宣言

 4月23〜26日、アクラでCODESRIA(アフリカの開発と社会科学研究者評議会)とTWN(第三世界ネットワーク)―アフリカが共催して、20カ国のアフリカの学者、知識労働者、市民社会組織、政策機関、さらに、アジア、ヨーロッパ、北米ラテンアメリカの代表が「新ミレニアムにおけるアフリカの開発挑戦」についての会議を開いた。
 会議の議題は、アフリカと世界貿易、開発資金、市民社会、民主主義、教育、保健、社会サービス、開発、ジェンダー平等などであった。以下は、その会議で採択された「宣言」の要旨である。

 これまで、アフリカ政府は、すでに「ラゴス行動計画」「構造調整に対するアフリカのオルターナティブな枠組」などを打出している。しかし、これらのアフリカのイニシアティブは、つねに外部の圧力によって、実施を阻まれたきた。今回のNEPADは、国連のアフリカ経済委員会で「アフリカ回復のための契約(Compact)」、それに世銀で「アフリカは21世紀に値するか?」などの文書が討議されている時期を1にする。
 アフリカの市民社会の発展と民主化は一様ではない。しかし、これらはアフリカの開発に必須条件である。
 NEPADについては、そこに述べられたゴールは、善意に基づくものであることを認める一方、これらのゴールを達成する開発のビジョン、経済手段については明白ではない。その結果として、NEPADは、真の開発のゴールを実現できないだろう。その逆に、アフリカに敵対的な外的環境と国内の弱さを助長するだろう。「債務」などの項目では、NEPADは、ジュビリーなどが獲得したものを後退させている。
 NEPADの最大の欠点は、世銀の「アフリカは21世紀に値するか?」と国連アフリカ経済委員会の「アフリカ回復のための契約」をコピイしていることである。

  1. 過去20年間、アフリカに導入された構造調整プログラムを繰り返し、そのネガティブな影響に触れていない。
  2. NEPAD実施についてアフリカの人々の役割を認めていながら、その企画、構成について、アフリカ人は何の役割を演じていない。
  3. 社会、ジェンダー平等を強調しているにもかかわらず、女性が周辺化するような社会経済政策をとっている。
  4. アフリカのイニシアティブであるといっていながら、主なターゲットはドナー、なかでもG8である。
  5. 民主主義のビジョンは、機能的な市場を作ることに向けられている。
  6. アフリカの開発危機をもたらしたものが外的な条件にあることを見過ごしている。反対に世銀、IMF、WTOさらに米国の「アフリカ成長機会法」「コトノー協定」などアフリカの経済にとって不利な環境を作っている機関や協定への関与を強めている。
  7. 資金の動員方法としては、まず第1にアフリカ経済を構造調整プログラムやWTOのルールから切り離すことである。

(「宣言」の全文が入用の方は北沢まで請求ください)