DebtNet通信(vol.2 #18)  
「バリWSSD準備会議について」
2002年7月

1. 第3回WSSD準備会議では、何がきまったか?
  ― ニューヨーク 3月25日〜4月5日 ―

 政府代表、国際機関、さらにMajor Groupsと総称される9グループの代表が集まり、参加者総数は1,500人を超えた。
 準備会議の議長であるインドネシアのEmil Salim大使が「議長ペーパー」を提出し、これを議論した。
 1口に言って、第3回PrepComは失敗だった。
 第1に、 議長ペーパーの内容、議論のプロセス、目標などについて、明確な指導力がなかった。
 第2に、国連の予算不足のため、夕方以降のセッションが持てず、地域のグループ会議も十分に開かれず、必要な書類が適宜に出てこないことが多かった。
 第3回PrepComが終わった段階でも、皆が合意した部分や修正した最終文書が出てこなかった。エレクトロニックスの時代にこんな無様なことは考えられない。
バリ会議にまでの間に、議長ペーパーの代わりに議長提案として「WSSD実施計画」、「持続可能な開発ガバナンス」(これは副議長のスエーデンとナイジェリア大使が担当)を、事務局が作成し、それに、「パートナーシップ」の文書が加わり、バリの第4回PrepComに提出されることになった。

第1章「序論」の部分への新提案;
G77(ベネズエラが代表); リオの「アジェンダ21」の実施には、可能にする国際的環境が必要なのに、国際社会はそれに失敗した。
スイス; 持続可能な開発のためには、国内レベルのGood Governance(途上国政府の腐敗一掃を指す)と国際協力が必要だ。
EU;エコーシステムのアプローチと民間セクターの役割、などについて提案があった。

第2章「貧困根絶」;
EU; 国内貧困根絶戦略に環境問題を入れる
G77; 「貧困根絶のための世界連帯基金」の創設の提案。

第9章 「実施方法」
 資金、科学と技術、貿易、能力向上、決定への情報というサブ・テーマに分かれる。
 準備会議の直前に開かれたメキシコの国連開発資金会議の「モンテレイ合意」の諸問題が入る。最もモメた章であった。
 米国、日本、EU、オーストラリア、カナダなどの先進国は「モンテレイ合意」の文章を入れることを主張した。メキシコは「モンテレイを超えた行動」を提案した。
 G77は、ODA、紐なし援助、HIPCsイニシアティブの拡大、ブルッセル国連LDCs会議の行動綱領の実施、などを主張した。貿易について、G77は、市場アクセス、特恵待遇、貿易障壁の撤廃を要求した。

 第10章になる予定の「持続可能な開発のガバナンス」は、インフォーマルな議論が行われただけで、2人の副議長に起草が任された。バリに先送りされた。
 「ガバナンス」の議論で、常に問題になるのは、南北で言葉の意味が異なる点にある。
 先進国とIMF・世銀は、「ガバナンス」とは途上国政府の「腐敗一掃」を指す。G77は、IMF、世銀、WTOなどの「民主化」「透明性の確立」を言う。
リオ以後、国連に設立された「持続可能な開発委員会CSD」」、それにECOSOCの役割と機能の向上についての議論が、南北で激しく議論された。G77は、CSD、ECOSOCの強化を主張し、先進国は、IMF、世銀、WTOを重視する立場を変えない。CSDのメンバーを、政府に限らず、市民社会、ビジネスに開放するごいう「Universal Membership」は広く受け入れられたが、ロシアだけが反対した。
2005年までにすべての加盟国が、国内持続可能な開発戦略を作成することが決まった。

 第3回WSSD準備会議の結果について、2002年4月5日、ニューヨークで、グリーンピース・インターナショナル、地球の友インターナショナル、Third World Network、インドネシア・ピープルズ・フォーラム、南アフリカ市民社会事務局の5団体が声明を出した。
 まず、「実施」草案は100ページに及び、交渉は遅遅と進まない。そして、先進国政府は、精緻に組み立てられた1992年地球サミットの「アジェンダ21」を変えようとしている。とくに、米国は、「共通の、しかし差異のある責任性の原則」といった「アジェンダ21」のエッセンスを削除しようとした。(北沢註;これは、グローバリゼーションによる世界の均一化を狙った)このような米国の態度は、「はたしてヨハネスブルグ・サミットを開く意思があるのか」疑わしい、と非難した。
 
2.バリ準備会議について

「Type 1」
 当初5月の27日(月)に始まり、31日(金)までの5日間に、「世界実施文書」を採択し、6月3日(月)から2日間を、これまでの準備会議では手をつけてこなかった「政治宣言」を議論し、6月5〜7日を「閣僚会議」に充てる予定であった。
 しかし、「実施文書」をめぐる南北の対立が激しく、この議論が5日まで延びた。

3つの作業部会が設けられた。

第1作業部会;1〜4章 議長は日本(赤坂清隆)、とブラジル
 2    ;5〜9章 カナダとエジプト
 3    ; 「持続可能な開発の制度的枠組み」と、「Type 2」と呼ばれる「Multi-Stakeholder Partnership」(政府、市民社会の各セクター、ビジネス、地方政府間のパートナーシップ)の対話の結果をどう扱うか?
 Type2は、モンテレイ方式で、各Stakeholderの代表が出て、「パートナーシィップ」などといったさまざまなテーマで、対話を行う。
 地球の友インターナショナルは、「Type 2」について、本来政府の責任で「実施文書」を実施すべきであるにもかかわらず、これを“民営化”しようとしている、と警告している。市民社会の間でも、英国の王立国際問題研究所のように、「パートナーシップ」の面を強調して、積極的に評価するものもいる。