DebtNet通信(vol.2 #17)  
「ヨハネスブルク・サミットに向けて」
2002年8月16日

長らくご無沙汰いたしました。DebtNet通信を再開します。  

 いよいよ、8月24日〜9月4日、南アフリカのヨハネスブルグで、国連の持続可能な開発世界サミット(WSSD2002)が開かれる。この会議は、国連としては最後のサミットになると言われている。同時に開かれる「グローバル・ピープルズ・フォーラム(GPF)を含めて、総勢6万5,000人という国連史上最大規模の会議になるだろう。
 しかし、米国のブッシュ大統領が、9.11事件の1周年が近いとして欠席、さらに国連加盟国189カ国のうち、代表団を送る国の数は、現在174カ国にとどまっている。
 5月にインドネシアのバリ島で開かれた第4回WSSD閣僚級準備会合では、「資金」「貿易」「リオ原則」「技術移転」「パートナーシップ」など、持続可能な開発を可能にする国際的環境をめぐって、南北が対立し、会議は決裂した。(DebtNet通信Vol.2 No.18を参照)
 バリ準備会合の決裂の原因は、「資金」と「貿易」、つまり今年3月、国連開発資金会議の「モンテレイ合意」(DebtNet通信Vol.2 No.19を参照)と昨年11、WTOのドーハ「閣僚宣言」(DebtNet通信Vol.2 No.20を参照)を追認する(米、日、カナダ、オーストラリア)か、あるいは、WSSD2002において新しく議論する(途上国、そしてしばしばEUが同調)か、という対立であった。
以下は、ヨハネスブルグ・サミットのスケジュールと問題点をまとめた。

ヨハネスブルグ・サミット(WSSD)について             北沢洋子

1) Friends of Chairの会議

 7月17日、ニューヨーク国連本部
参加国;南アフリカ(Zuma外相が議長)、友人はG8、デンマーク(EU議長国)、ノルウエー、スペイン、スエーデン、メキシコ、アルゼンチン、ブラジル、ジャマイカ、ベネズエラ、中国、インド、インドネシア(バリ準備会議議長国)、ヨルダン、エジプト、ガーナ、ナイジェリア、セネガル、ウガンダ、サモア、計27カ国

背景

2002年6月、カナダのカナナスキスのG8サミットに南アフリカのムべき大統領がG8首脳に、バリの第4回閣僚級準備会議の“失敗を修復する”ために、7月中に、ニューヨークで“Friends of Chair”という名で小規模、非公式の会議を開いて、打開を図ることを提案。ヨハネスブルグ・サミットの議長国である南アフリカが恣意的に選んだG8を含む26カ国を集め、“ウイーン・スタイル”(不明)の会議を開く。ここでは、表向きは“交渉”ではなく、非公式の“協議”にすぎないと広報された。これは悪名高いWTOの“グリーン・ルーム”方式を踏襲したものである。ここでの合意を、WSSD本会議で全参加国にゴム印を押させようという陰謀であった。

2) WSSD第1部 

インフォーマル・ミーティング
8月25日(土)〜25日(日)、ヨハネスブルグ
NGOとプレスを排除した秘密会議―“ウイーン・スタイル”
Friends of Chair会議で合意した文書を加盟国全員が承認する?
ブラケット[  ]になっている個所
バリ閣僚級準備会議で実施計画草案の中で、合意に達せず、[  ]になった個所
アナン国連事務総長、南アフリカの主張するところでは、合意に達した個所は全体の75%に上るという。確かに、10章中、第5章「グローバリゼーション」と第10章「制度的枠組み」が、全パラグラフが[  ]になっているが、これはもっとも重要な章であり、他の章でも、各書に[  ]が付いている。
議題;

(1) 資金問題
持続可能な開発と国連「ミレニアム開発ゴール」(2015年までに貧困を半減する)を達成するために、
2002年3月国連開発資金会議の「モンテレイ合意」をめぐって、G77は、モンテレイ合意に入っていない目標数値、目標期限を設置することと、「新しい、追加の資金の拠出」を要求。米国、日本、カナダ、オーストラリアが、「No New Target」のマントラを唱えて反対。
「モンテレイ合意」の問題点
1. 債務帳消し
G77はIMF・世銀の「拡大HIPCsイニシアティブ」以上のより深く、より広く、より早い重債務最貧国の債務帳消しを要求
NGOは、重債務最貧国については即時、全面的帳消し、中所得国の重債務については、不法な(illegitimate)債務の帳消しを要求。
2. ODAをGNPの0.7%を拠出 
アナン事務総長が、0.7%の達成は困難として、ミレニアム開発ゴールの達成のために、現行の「ODAの倍増」を呼びかけた。
すでに、ノルウエイ、スエーデン、デンマークルクセンブルグ、オランダが0.7%を達成。今年3月、ポルトガル、アイルランドが公約。その後、フランスが公約。EUは、向こう3年間に200億ドルの追加のODA拠出を公約。EUは現在の0.3%を0.39%にする。米国は、モンテレイ・サミットにおいて、ブッシュ大統領が、3年後から3年間に毎年50億ドルの追加のODAを公約。ただし、議会の承認がなければ、反古となる。
この新規のODAについては、米国、EUともに、新たな条件が付く。
3. 為替取引き税(CTT)
債務帳消し、ODAの倍増を行っても、ミレニアム開発ゴールは達成できない。とくにアフリカはHIV/エイズの蔓延という非常事態下にあるので、大きな資金を必要としている。
その解決案として、CTTの導入があるが、「モンテレイ合意」には、“新しい、革新的な資金源”と表現され、さらに、その導入の可能性についての研究に取り組むといった、回りくどい表現になっている。CTTの導入に反対しているのは、米国と日本である。カナダ、フィンランド、フランスなどの議会が導入決議をしており、ドイツは経済協力相の名で、「導入は可能である」という調査報告書をモンテレイ・サミットで発表した。
G77は、強く要求していない。

(2) 貿易問題
2001年11月、ドーハのWTO閣僚宣言について。
米国、日本、カナダ、オーストラリア、EUは、「ドーハの議論を“Reopen”しない」を主張。
G77は、途上国の製品に対する先進国の市場アクセスと、先進国の農業補助金の廃止を要求。ドーハ閣僚宣言では、「補助金の段階的廃止」といった曖昧な彪源に終わった。G77は目標数値と期限の設定を要求。

(3) Rioの2大原則
「共通の、しかし差異のある責任」;環境破壊については、先進国により責任がある。
「予防的アプローチ」;事前に環境の安全性の保障を必要とする。
米国、日本、カナダ、オーストラリアがこの2大原則を拒否。

(4) 目標数値と期限の明記
G77とEUは、ミレニアム開発ゴールでは、設定されなかった公衆衛生(Sanitation)についての目標数値と期限の設定を要求。米国が反対。

(5) GEF拠出金の増額
追加の資金の必要性については合意しているが、拠出額の設定に米国、日本が反対。

(6) 連帯基金の設立。
G77が要求したのに対して、米国、日本、EUが反対。

(7) 企業の社会的責任
多国籍企業の「行動規範」をめぐって南北が対立。EUはG77を支持。

(8) 環境についての技術移転問題
日本が特許権付き、商業化された技術の移転に反対。

(9) パトナーシップ
重要性については、確認された。
ボランタリーなものか/交渉による契約なのか、をめぐって決まらない。
「NGOは、ノウハウ、企業は資金」を出し、政府の行政の代行をやらせる?

3) WSSD第2部 公式会議始まる

ハイレベル(閣僚レベル)会議
全体会議1
実施計画草案と政治宣言草案の討議
NGOは参加出来るか?「席がない」という理由で制限の可能性。 プレスは排除
8月26日(月)午前 開会式
8月26日   午後 水/衛生 健康の項を議論
8月27日(火)午前 農業 食糧安全保障
8月27日   午後 エネルギー
8月28日(水)午前 種の多様性/エコシステム(海洋、森林)
8月28日   午後 クロス・カッティング問題

全体会議2 (1と2は並行して進行)
政治宣言草案を討議 5つのセッション

3)WSSD第3部

全体会議3
8月29日(木)午後と夕方  首脳を送らない国の閣僚級のスピーチ、
8月30日(金)1日中   NGOのスピーチもある。

8月31日(土)       休み
9月1日 (日)       休み

4) WSSD第4部

首脳会議(サミット)
9月2日(月) 午後       首脳のスピーチ
9月3日(火) 午前と午後    
9月4日(水) 午前
5セッション
106人の首脳が参加を表明。
先進国では、米国、スイス、ギリシア、オーストリアの首脳が欠席。
途上国は、インド、フィリピン、サウジアラビア、シリア、カタール、エジプト、エストニア、パレスチナ、チリ、チャド、キューバなど45カ国が欠席。
政府代表団の数は174カ国が参加。国連加盟国数は189カ国。

並行して、9メジャー・グループと首脳とのラウンド・テーブル 
5セッション
テーマ;“Make it Happen”―アカウンタビリティ、責任性について―

5) NGOの情報

8月24日より、午前8時30分〜10時
Sustainable Development Issues Network(SDIN)によるNGO戦略会議
8月31日(土) NGOによるデモ
南アフリカの市民社会が分裂しているため、共に世界社会フォーラムの南アフリカ支部を名乗っている。
主催:Civil Society Forum―キリスト教会、労組系
   Civil Society Indaba―トロッキスト系  

グローバル・ピープルズ・フォーラム