DebtNet通信(vol.2 #15)  
「英蔵相、ベンチャーファンドの規制を提案」
2002年5月18日

1) ブラウン英蔵相がベンチャー・ファンド規制を計画

 ブラウン蔵相は、英国財務省に、ベンチャー・ファンドを規制する法案を起草するよう命じたと、5月7日の『Financial Times』紙は報じている。
 彼は、ベンチャー・ファンドが、途上国の債務救済プログラムを妨害していると、確信している。
 「ベンチャー・ファンド」とは何か?その名の通り、破産しかけている会社の債務を探し、安値で買い叩き、より高い値段で売って儲ける。そのやり口は債務者に正価で買い取らせるよう告訴する、会社が回復して、自由意思で買い取らせる、あるいは、しばしば債務と証券のスワップに決着するところの債務再建交渉に参加するなど、さまざまなやり方がある。
 どこが悪いのか?ほとんど悪くない。商取引では、ベンチャー・ファンドは市場での唯一の買い手であり、したがって、主要な流通資金の供給源である。もしこれがなければ、銀行などの債権者は、その損失を削減することが困難になる。
 なぜ、ブラウン蔵相はこれを規制するのか?それは、商取引の市場とは関係ない。彼は、むしろ歓迎している。
 ブラウン蔵相の血圧が上がる原因は、ベンチャー・ファンドが最貧国の債務救済という国際的努力の受益者になっている点にある。
 どのようにしているのか?まず第1に、ベンチャー・ファンドは、最貧国がの民間債務を安値で買う。第2に、債務国を正価で返済するよう告訴する。第3に、債務国は裁判ざたを恐れて、正価で支払う。第4に、債務国はそれが出来る。なぜなら債務救済を受けたからである。
 このシナリオでは、債務救済は最貧国の教育と医療保健の改善にはつながらず、弁護士、投資銀行、ベンチャー・ファンドの出資者を儲けさせる。
  このようなことが実際に起こっているのか?イエス。勿論、大変、額とケースは少ない。ペルーのElliott Associatesというベンチャー・ファンドの例がある。これは、1996年、1,100万ドルでペルーの2,100万ドルの債務を買った。そしてすべての債権者が参加した債務のリスケに参加を拒否し、ベルギーの法廷にペルー政府を告訴した。2000年6月、ブルッセルの高裁は、ペルー政府がElliott Associates に債務の正価5,800万ドルの返済を判決した。これは、他の債権者に優先して返済された。結局、費用を引く前の儲けは4,700万ドルに上った。
 これは合法か?良い質問だ。多くの専門家は、ベルギーの裁判所が法の解釈を間違ったという。だが、重要なことは、債務者が債権者と平等に扱われたか、という問題である。たとえ、ならず者の債権者が、リスケの交渉に参加を拒んだとしても。
 ペルーは最高裁に持ちこむより、債務を返済するほうを選んだ。他の政府と同様にである。したがって、確実な法の前例がない。
 ブラウン蔵相が言わんとしているのは何か? 新しい点は少ない。彼は、国連の子ども特別総会に持ち出そうとしているのだ。英財務省のすずめの言うことには、彼は、貧困国に法的な支援をしようとしているという。その結果、貧困国政府が法廷で闘う根拠となる。
 これは、すでに「国際金融研究所(IIF)」が提案している。IIFは、将来のケースに決定的な判決を下せるような「3つの計画」を提案した。ブラウン案は、この提案を支持しているという点をのぞくと、詳細な点については、欠ける。
 ブラウン案は、国家破産の処理の改革という国際的な提案とどのようにリンクしているのだろうか? これまでと同じ議論である。もし、債権者が債務国が発行する国債について集団的行動条項に同意すれば、個々の債権者にとって、債務再建を拒否することは困難になるだろう。
 同様に、もしIMFが国際的破産プロセスについての合意を確保できれば、ベンチャー・ファンドが債務の正価での返済を訴えるという根拠はなくなるだろう。

 この『Financial Times』紙の記事に対するEURODADのコメント;

 ブラウン案の中で、ベンチャー・ファンドがさまざまな国の法廷を調べて、自分のクレームに有利な法廷を選ぶという、問題がある。
 IMFの副専務理事のAnn Krugerは、これに関連して、IMFの国際破産プロセスにおいて、すべての裁判所に拘束力を持つような国際協定を締結するという提案の根拠にしている。
 しかし、ジュビリーの法律家のKunnibert教授は、「この問題は、これらベンチャー・ファンドの多くがの本拠としている米国と英国政府が規制法を制定すれば、国際協定は必要がない」言っている。

急告;
第5回WTO閣僚会議は、2003年9月10〜14日、メキシコのカンクンで開催される。カンクンはユカタン半島の先端にあるカリブ海とメキシコ湾に面した世界有数のリゾート地であり、またサパチスタ・ゲリラのいるマヤの土地でもある。