DebtNet通信 (vol.1 #54)  
タンザニアがHIPCイニシアティブの完了点に
2001年10月2日


1)ルアンダのDebt Relief Networkのメンバー逮捕

英国のJubilee Plusからの情報によると、ルアンダのDebt Relief NetworkのGasana Alphonse氏が逮捕された。同Networkは、ナイロビで開かれた全アフリカの債務キャンペーン会議に出席し、帰国した直後に、代表のAshaba AbudulBastiとGasana Alphonseの両人が、警察に事情聴取された。この時は、家に帰されたが、その後、Gasanaがナイロビ会議に提出したルアンダの債務と貧困についてのペーパーを理由に逮捕された。政府はこの逮捕について、記者会見をすることまで禁じた。その後、Jubilee Plusなどの国際的な抗議が起こったため、ルアンダ政府は、Gasanaの釈放を約束したが、まだ、実際には、彼は釈放されたいない。(9月30日現在)

2)タンザニアがHIPCsイニシアティブの完了点(Completion Point)に

EURODADの情報によると、IMFは、タンザニアが拡大HIPCsイニシアティブによる完了点に近くなったと、認定した。

9月24日、ダルエスサラムのIMF駐在Tsidi Tsikataは、「タンザニアはIMFが課した30項目の改革のうち、25〜6項目を達成した」と語った。完了点に達すると、タンザニアは、向こう20年間に債務を返済すべき総額中、30億ドル分を軽減されることになる。この20年間には、新たな「Conditionality(改革項目」は加わらない。

30項目の改革とは、PRSPを作成する、その実施スケジュールを示す、貧困削減の実績を示す、教育・保健・水・道路なと社会部門への予算の優先配分、HIV/AIDS対策を示す、税改革などが含まれている。さらに、タンザニアは、コンサルタントを雇って、国営のTANECO発電所とDAWASA水道局を民営化しなければならない。

IMFは、新たに、10年期限で、1億5,200万ドルを融資する。これは、IMFに対するタンザニアの債務返済額の58%をカバーすることになる。一方世銀のIDA(無利子のソフト・ローン)は、20年の期限で、12億ドルを融資する。これはタンザニアのIDAへの債務返済額の69.1%に当たる。これらは、返済のための借金であり、タンザニアの債務危機を単に先に伸ばしたことに過ぎない。

タンザニアは、1995年以来、構造調整プログラムの実施の優等生と見なされたきた。たとえば、インフレ率は20%から5%に下げ、国内債務もGDPの3%にまで返済したし、公共部門の構造調整プログラムを遂行した。

3)モザンビークも完了点

9月25日、IMF・世銀(IDA)の理事会は、モザンビークが拡大HIPCsによる完了点に達したことを承認した。これで完了点に達した国は、ボリビア、ウガンダに続いて、3ヶ国になる。(タンザニアがこの後に続く予定)

モザンビークは、すべての債権者から、年間6億ドルの救済を受ける。(実質救済額額は3億600万ドルで、2000年4月の決定点において約束された額に5,300万ドルが追加された)これで、モザンビークは、拡大HIPsイニシアティブにより、総額38億ドルの救済を受ける。その結果、モザンビークの債務は73%削減されることになる。これにさらにG7以外に2国間の債権国が救済すればさらにこの率は上がるだろう。モザンビークの債務と輸出の比率は、2000〜2020年間、150%の上限を下回るだろう。また、2000〜2010年には73%減、2011〜2020年は44%の削減となる。

モザンビークが毎年、債務返済する額は、1998年の1億ドルに比べて、2002〜2010年は5,600万ドルに減り、貧困削減に回すことが出来る。また政府予算中、債務返済分が1998年には23%であったが、2000〜2010年には10%、2011〜2020年には7%に減る。
 IDAが拡大HIPCsにより、モザンビークの債務削減に加える額は、8,000万ドル(実質は6,300万ドル)である。これにオリジナルの削減の約束額9億7,500万ドル(実質は3億8,100万ドル)を加えると、10億5,500万ドル(実質4億4,00万ドル)となる。IMFは、1億7,300万ドル、(実質では1億4,300万ドル)である。

4)IMF・世銀の完了点についての追加のガイドライン

IMF・世銀は拡大HIPsイニシアティブの完了点について、新しいガイドラインを出した。これは、債務国が「外因的な、かつ長期にわたる逆ショックに晒された場合、に追加の債務救済を受けることが出来るというものである。これには、

(1) 完了点において、経済環境が根本的な変化を受けた時
(2) その変化は外因的なものであること
(3) 債務の持続可能性がすべての債務救済後においても維持されないこと


しかし、問題は、「根本的」と「外因的」変化についての解釈のあいまいさが残っていることである。たとえば、決定点の判定において、「外因的なショック」は3〜5年続かねばならない。また、完了点以後、債務返済と輸出の比率が、3年以上、15〜20%を超えてはならないとある。

チャド、マラウイ、ニジェール、ルアンダ、タンザニア、ザンビアの6カ国は、完了点に達した場合、債務対輸出ヒが150%を超える予想なので、追加の債務救済を受ける予定である。ニジェール、ルワンダ、チャドは、完了点後も150%をはるかに越える予定である。

5)オネール財務長官が国際破産法廷の必要を認める

Jubilee PlusのAnn Petifforさんからの情報では、9月20日の米上院の「アルゼンチン危機について」の公聴会で、ポール・オネール米財務長官が、「国際破産法廷の設立に賛成」と発言した。

これはジュビリー・キャンペーンが、債務帳消しにおいてFTAPを要求し、長い間、オーストリアのKunibert Raffer教授が米国の政府再生法第9条の適用を主張し、UNCTADが同法第11条の債務返済の「緊急停止」を求めてきたが、これは一歩前進である。詳細はhttp://www.jubileeplus.org

6)9月25日、Zoellick米通商代表は、ドーハの治安が保障されないので、11月のWTO閣僚会議を開くべきでない、と発言した。