DebtNet通信 (vol.1 #51)  
世銀の鉱山業への融資問題
2001年9月10日


世銀の鉱山業への融資問題

ワシントンのIMF・世銀年次総会に対する反グローバリゼーション派のデモが掲げている要求の1つに、「世銀は、石油、ガス、鉱山、大規模ダムに対する開発融資を止めろ」というのがある。

1) 世銀にエネルギー部門への融資

世銀のエネルギー部門における融資では、化石燃料開発プロジェクトと自然エネルギー開発プロジェクトの割合は20対1である。石油、ガス、石炭など化石燃料開発プロジェクトが社会、環境の面で悪いという証拠が明白になっており、しかも京都議定書が調印されているにもかかわらず、世銀は、化石燃料開発プロジェクトに、年間20億ドルを融資している。

1992年のリオ地球サミットから2001年8月半ばまでの10年間、世銀グループ(IBRD、IDA、IFC、MIGA)の石油、ガス、石炭開発プロジェクトに対する融資総額は200億ドルにのぼる。同じ期間、世銀グループの再生可能なエネルギー開発プロジェクトに対する融資総額は、11億ドルに過ぎない。これは、世銀内部の調査、「再生可能なエネルギーは、ほとんどが農村部に住んでいる20億人の貧困層にエネルギーを供給するには、最も費用が有効に使える方法」だという報告書にさえ反している。

2)世銀が化石燃料プロジェクトに融資した結果、1992〜1998年間、最終的に、375億トンのCO2を放出することになる。これは、今日、世界中で放出している総量に等しい。

3) 世銀は世界最大のダム建設資金の供給機関である。世銀のダム建設融資が最も多かった時期は、1970年代の終わりから、1980年代はじめにかけてであって、それは年間平均20億ドルに達した。1990年代半ば以降、世銀のダム融資はかなり減った。世銀は融資業務を改善したと誇っているが、未だに、ウガンダのBujagaliダム、ラオスのNam Then2ダムへの融資など、多くの問題がある。この2プロジェクトは、世銀自身がイニシアティブをとり、推進してきた「世界ダム委員会」の新ガイドラインに違反している。ガイドラインには、ダムは地域住民の合意なく企画されてはならない、過去のダムの被害者にも賠償金を支払う、と決めている。

4) 世銀という公的資金が巨大石油、石炭会社の開発の保険として使われている。しかし、ハリケーン、洪水、旱魃などの気候変動による災害について、貧困層には、公的資金は供与されない。また世銀が融資した石油採掘、パイプライン建設、石炭鉱山、火力発電所建設、石油流出などによって環境、住宅、コミュニティが破壊された貧困層には公的資金は供与されない。

5) 1994年、2000以上の団体が、世銀の大規模ダムに対する融資のモラトリアムを求めた。京都議定書会議において、NGOは化石燃料や大規模ダムに対する公的融資の中止を要求した。

6) リークされた世銀の内部資料によると、世銀は「鉱山業に対するグローバルな関心が高まっているので、化石燃料、鉱山業については、明かな、かつ現実の危険がある」ことを認めている。また、化石燃料や鉱山業の開発に依存度が高い国は、ガバナンス、保健、教育、環境、人権などの指標が低い。にもかかわらず、世銀が、この部門に融資を続けるのは、収益率が高いというのがその理由である。

7) 世銀は年平均20億ドルを融資してきた。しかし、1998年には30億ドル、1999年には13億ドルと、年によって変動している。しかし、今年は、7月までに、すでに、中国の石炭、カスピ海の製油パイプライン、ナイジェリアのシェル石油の油田開発などに、11億5,000万ドルの融資が決定している。1998年までは、世銀のこれらプロジェクトへの融資はIDAとIBRDによるものだったが、過去1年半はIDA/IBRDとIFC/MIGAの比率が50/50になっている。民間企業に融資するIFCとMIGAが石油、ガス、石炭開発プロジェクトに直接融資しはじめているのである。これは、途上国の国営企業の民営化を促進し、多国籍企業が鉱山業、火力発電所を乗っ取ることを助けることになる。

英国がタンザニアの航空管制システムに融資

英国の貿易産業省は、このほど、タンザニアの航空管制システムに輸出する英企業に4,000万ドルの貿易保険を供与することを決定した。このプロジェクトは、世銀とIMFが、「建設コストは、タンザニアが債務救済によって得る金額の半分に等しい」として、反対していた。

タンザニアはGNPが90億ドルで、最貧国である。救済以前の債務総額は70億ドルであった。世銀・IMFは、「このプロジェクトは、非常にコストがかかり、軍事的に不必要であり、債務増大につながる」と批判した。これは、米国にあるAerotec Infrastructure Groupという独立の審査機関による結論であった。

タンザニアは年間10億ドルの開発援助を世銀、IMF、EU、英国、スカンジナビア諸国から受けている。IMF・世銀は、開発融資をとめると脅かした。しかし、タンザニア政府は英国貿易産業省の決定に勇気ずけられ、ゴー・サインを出して、資材購入を決めたようだ。これは、債務救済に熱心な、ブラウン蔵相を困惑させるに違いない。

南アフリカ民主政府に対して賠償支払いを免除

1980年代、国連は、アパルトヘイト下の南アフリカ政府は、アンゴラ政府に対して、100億ドルの賠償金を支払え」という決議をした。またナミビアを不法に占領していた。
したがって、南アフリカはアンゴラとナミビアに対して、賠償支払いの義務を負っていた。

ダーバンで開かれていた国連反差別世界会議において、アフリカ・グループが提出した非公式文書(Non-Paper)によると、「アフリカ諸国は、奴隷制度を行った旧宗主国に対する賠償請求から、民主南アフリカを除く」とあった。「南アフリカの国民は、アパルトヘイトの犠牲者であった。したがって民主南アフリカは賠償支払い請求の対象にならない」