DebtNet通信 (vol.1 #50)  
モザンビークの債務救済の実態
2001年9月6日


第3章 モザンビーク

最近の政治的、経済的、社会的状況


モザンビークは途上国の中で最も貧しい国である。1999年の1人当たりのGNPは230ドルであり、その社会指数は、サハラ以南のアフリカ平均以下である。平均寿命は47歳であり、幼児死亡率は1,000人に134人である。安全な水をてにいれることができるのは、24%に過ぎず、初冬教育の就学率は71%と途上国中最低である。エイズの感染率は、14.5%と高い。政治的には、モザンビークは1992年以来、平和が続いている。しかしその前の30年間、内戦が続いていた。2000年1月、モザンビークは、最悪の台風に見舞われ、多数の死者、農業被害、インフラの破壊を経験した。

このようなことを考慮に入れると、モザンビークの強い経済パーフォーマンスは驚異的である。モザンビークは債務救済を受ける最初の国のグループに入っており、43億ドルの債務救済を受けた。この額は、他の救済を受けた国の救済額の総額に等しい。これによって、2002年以後、モザンビークの債務返済額は、輸出総額の5%以下と予測される。

より重要なことは、このような債務救済の枠組みが、巨大な貧困と闘う基盤となるだろう。
貧困については、最近の世帯別の調査によると、10人に7人のモザンビーク人は、1日当たり0.40ドルという政府の貧困ライン以下の状態にあるという恐るべき結果が出ている。

債務救済によって浮いた資金が、生産的に、透明性をもって、政府の目標とする貧困削減に使われるという展望があるだろうか?

モザンビークの最貧層に社会サービスが届くためにはどのような障害があるだろうか?
またどのようにして、「Transparency International」がアフリカの最も腐敗した5ヶ国の1つといった腐敗を一掃するのか?1世代も家父長的な社会主義下にあった国で、どのようにして市民参加を獲得していくのだろうか?

債務救済の額とどのようにして行われるのか?

モザンビークはHIPCsイニシアティブによる債務救済から恩恵を受ける国である。政府は、1999年6月に第1段階の債務救済を受ける。第2段階は、2001年半ばに拡大HIPCsイニシアティブを受ける。これによって、43億ドルの債務救済を受ける。これは債務総額の70%に達する。
 年間の債務返済はかなり軽くなる。1998年には、1億400万ドルであったのが、1999年には8,600万ドルになり、2000年、2001年は、洪水救済を受けたため、年間1,500万ドルの債務返済額になる。債務救済以前には、モザンビークは債務返済額の3分の2しか支払っていなかったとはいえ、債務救済が、社会部門への支出を増加させることは間違いのないところである。これは、1995年には、7,000万ドルであったが、2000年には、1億8,000万ドルに増加した。教育予算は、全予算中18%であったのが、2000年には、23%に増えた。

モザンビークの貧困削減戦略

1999年、貧困削減のために、政府は絶対的貧困を削減する行動計画(PARPAS)を打ち出した。これは部門別、レベル別に優先順位をつけたものであった。PARPAは、暫定PRSP策定の基礎となるものであった。

政府の主要な目標は何か?それは、今日、70%に上る絶対的貧困を今後10年間で50%に減らす。2004年には、60%に減らすという中間目標である。政府は、教育、農業、インフラ、保健、雇用創出、社会福祉などへの資金を増やす。また社会サービスの機能を高める。PARPAは政府機関の間の協力を強め、政府内、外とのコンサルテーションを強める。PARPAの目指すものは、1999年10月、公務員と市民社会の代表と共に、Eduardo Mondlane大学で議論された。2000年2月には、修正されたPARPAが世銀・IMFに暫定PRSPとして提出された。しかし、コンサルテーションは、要件でもなく、最低のレベルにとどまった。

その後の12ヶ月間、完全なPRSPが策定された。これには、国際金融機関が市民社会の参加を義務つけていた。モザンビークの貧困削減には、広い市民社会の参加が必須である。政府と市民社会の間のコンサルテーションのプロセスは、広く実施された。

市民社会とのコンサルテーション

モザンビークの地政学上の重要性を理解しなければならない。モザンビークの国土は大きいが、人口密度は低く、北部に集中している。北部国境は南にある首都マプトから1800キロも離れている。国内のコミュニケーションは困難であり、インフラは弱い。ポルトガル語は国語だが、北部の人口にはほとんど通じない。同時に、政府の行政は、マプトに集中しており、省知事は選出ではなく、任命制である。地方行政は存在しないも同然である。この国の政治文化には市民参加の伝統はなく、中央政府に強く依存している。

したがって、市民社会の参加ははじまったばかりである。政府はコンサルテーションを債務削減を受けるための道具とみており、目的とは考えていない。コンサルテーションでの障害が明かである。諮問会議は、中央政府によって組織される。地方レベルのコンサルテーションは限られている。さらに、資料はポルトガル語である。2000年1月の接戦であった選挙の後で、FRELIMO政府の中で、とくに、地方で反対党のRENAMOが支配的な北部農村部で、コンサルテーション・プロセスが重要であるというものが出てきた。
またPRSPのデッドラインという制約もあり、包括的な市民社会の参加を十分に出来なかった。

しかし、「Mozambique Debt Group(MDG)」によって、いくらかの前進がもたらされた。MDGとは、OXFAMのようなNGO、モザンビーク・キリスト教協議会などの宗教界、労組、大学、個人によるゆるやかなネットワークである。その目標は、債務の100%帳消し、あたらな借り入れについては、透明性、幅広い参加、短期間に持続可能な開発をもたらす社会、経済政策の採用などである。ワークショップや研修を組織するのであって、アンブレラ組織ではない。

結論

今後数年間、債務救済によって生まれた資金の多くは、貧困関連に支出されることになるだろう。今日のモザンビークの状況から、完成PRSP、実施された債務救済、市民社会の参加などの点については不充分である。今最も必要なことは、このように腐敗が広がっている社会においては、PRSPに実施には、市民社会が参加することである。

(1) 貧困計画についての詳細な情報を新聞やラジオを通じて、地方にも知らせるよう公開すべきである。ポルトガル語のみならず、地方語でも書かれるべきである。
(2) 教育、保健、インフラ、農業、地域開発などの作業部会をマプトと各省に組織すべきである。これは、2001年2月のMDGの勧告にもとづいて、市民社会の代表とビジネス界が参加すべきである。国際金融機関は、この作業部会の設置を援助すべきである。
(3) ウガンダ、タンザニア、ケニア、ザンビア、南アフリカなどのNGO代表と債務ネットワークを集め、地域レベルのワークショップを組織すべきである。ここで、市民社会の参加、腐敗一掃などの経験をシェアする。OXFAM、World Vision、Catholic Relief Serviceなどの国際NGOは、これを援助すべきである。