DebtNet通信 (vol.1 #48)  
ウガンダの債務救済の実態
2001年9月6日


債務救済の実態―ウガンダ、タンザニア、モザンビークの例


ワシントンにある米議会に対するロビイ団体Bread for the World Instituteが2001年6月に発表して「IMF・世銀のHIPCsイニシアティブによる債務救済に関する市民社会から見た事例研究の報告書」の抄訳を3回に分けて送る。

3カ国の債務状況

 
ウガンダ
タンザニア
モザンビーク
債務救済額(100万ドル)
1,950
3,000
4,300
債務救済率(対債務総額)
57%
54%
72%
98年債務返済額(100万ドル)
110
224
104
00年
48
154
50
02年
56
144
51
98年社会部門支出/宰務返済
2
1
1
00年
7
2
4
市民社会
強い
穏健
穏健

第1章 ウガンダ

ウガンダの貧困状況

ウガンダは、1970年代から1980年代はじめにかけて、軍事独裁下にあり、その結果、経済が崩壊した。これは、Yoweri Museveniが大統領に就任する1986年1月まで続いた。しかし、北部では紛争は続いていた。

そのごの15年間、経済成長、社会進歩の面でかなりの進展を遂げた。ウガンダは、アフリカでは、絶対的貧困層のかなりの削減に成功した数少ない国であり、他の国のモデルとなっている。

これまでウガンダには、地域、区、村レベルでコミュニティ全体が積極的に参加するという伝統があった。1980年代半ば以降、新聞とラジオの自由、さらにアフリカ大陸では最も活動的なNGOコミュニティが存在した。また、複数政党の活動も盛んであった。しかし、現政府を始めとして、政府はつねに政党に敵対的であった。

1992年の国勢調査によれば、人口の56%が絶対的貧困であった。これは1997〜8年では、44%、1999〜2000年では、35%になっている。勿論かなりの絶対的貧困が存在はするが、その7年間の減少スピードは目覚しい。政府は2017年には、10%になることを目指している。減少の度合いは農村部よりも都市部で著しい。しかし、北部では、過去2年間で、60%から65%に増大している。1992〜1997/98年の期間、世帯当たりの消費は17%増大し、最貧困層では20%も支出が増えている。

ウガンダにとっては、債務削減は有効であった。それによって浮いた資金は、「貧困行動基金(PAF)」を通じて貧困削減のために支出されており、予算総額の30%に達している。

ウガンダの貧困削減計画

アフリカの最貧国の中で、ウガンダは、包括的、参加型の貧困削減戦略を作成した数少ない国の1つである。その計画は、1990年代半ばに内発し、世銀のHIPCsイニシアティブ構想のヒントになった。

1995年、ウガンダ政府がセミナーを開催したのがきっかけとなって、1997年、「貧困根絶行動計画(PEAP)」が策定された。これは政府の開発計画、予算編成の基礎になった。1998年には政府は、PAFを設立した。

(1) 多くの現存のデータを使い、政府の政策が貧困層に恩恵を及ぼすように変えた。
(2) 2年間の準備期間、地域コミュニティ、ドナーたち、NGO、市民社会、大学などが参加した、公開、参加型のアプローチをとった。
(3) 貧困計画に確実な予算措置をつけるようにした。

第1のテーマは、マクロ経済政策の影響、とくにインフレが貧困層に及ぼす影響について、議論された。第2は、保健、教育、水、トイレなどの公共サービスの予算について議論した。問題は、学校の予算の20%が実際に使われていないことだった。公共サービスを受けている人の40%は賄賂を支払わされたいた。この2つのテーマの議論に24ヶ月が費やされた。参加型プロセスとは、まず、会議やワークショップを開く。次に、貧困削減戦戦略作業部会が開かれる。金融・計画省が、NGO,市民社会、大学と共に、貧困行動計画を作成した。NGOは公共サービスを有料にすることに反対した。1999年の参加型プロセスの目に見えた成果は、水供給予算が優先項目となったことであった。

1999年12月、』政府は修正PEAPを市民社会組織に提起した。Uganda Debt Network(UDN)とOXFAMが市民社会ワークショップを共催し、45のNGOが議論に参加した。ここで、幅広い市民社会組織(CSO)タスク・フォースの設立が決まった。これが、市民社会組織のPEAP修正や政府にたいする政策提言を調整する。UDNがその責任団体となり、また地域のコンサルテーションなどを組織する技術チームも設けられた。

政府はCSOが、地域、コミュニティに、PEAPプロセスを伝え、またフィードバックするのに有効であることを認めた。これを制度化し、今後政策についての対話を保証する常設機関となる。

残された問題は、支出の約束を取り付けた後に、どのように実施されるかである。

REAPの実施問題

ウガンダのPEAPは2000年5月に出来あがった。作成プロセスは3年を要したことになる。PEAPには、貧困削減サービスのリストが記載されている。これには、財政支出の優先順位がつけられる。予算の30%を占めるRAFが、その支出の実施を保証する。

(1) 貧困削減を目指した明確、かつ柔軟な財政支出が年次予算に反映されること
(2) 貧困削減の原則が、部門別予算の中に反映されること
(3) 政策策定、公共支出に市民社会の参加を増やすこと
(4) 政府の内外で議論を促進すること
1998年以来、ウガンダでは、社会部門への支出が増えた。2000年には、社会部門への支出は、債務返済額の7倍になった。
(5) 中央政府が地方分権化に賛成し、その結果、地方公務員の給与支払いの遅滞がなくなった。

(6) 公務員の能力向上が見られた。

腐敗との闘い―市民社会の役割

1996年には、充当された予算の内、実際に使われるのは20%にずぎなかったが、2000年には、90%になった。

これはどのようにしてかくとくされたのであろうか。それは、広報の力である。たとえば、教育部門においては、199お年代半ばまでは、ウガンダでは、人件費を除いた教育予算の20%しか現場の学校には届かなかった。そこで、1996年以来、毎月政府予算が地域に配分されるのを、額を含めて全国紙とラジオで発表した。その上、学校毎に毎月の予算の配分を告知版に発表した。これらの方法によって、予算の流れが劇的に改善された。いまでは、20%だったのが、予算の90%が実際に使われるようになった。賄賂という使徒不明部分は10%になった。

しかし、まだ終わったわけではない。財政支出の透明性、効率性の追求はまだ必要である。これは、アミンとオボテが残した負の遺産であり、公共サービスは崩壊し、腐敗が日常化したのであった。最近のUDNmの調査では、ウガンダは最も腐敗した国の1つであり、ビジネスの80%は賄賂を払わねば始まられない。検事総長室の調査では、警察、司法、保健省が最も腐敗している。UDNの推計では、1984〜1999年間で、1兆ウガンダシリング(7億ドル)が腐敗のために消えた。最近、政府は「反腐敗行動計画」を開始させたが、市民社会が遠くの村レベルで起こっている腐敗をなくすまでにはいたっていない。腐敗追放の運動でUDNが果たしている役割は大きく、他のアフリカのモデルになるだろう。UDNが中心となって、「ウガンダ反腐敗連合」が設立された。

(1) 草の根レベルで腐敗を意識するキャンペーン
(2) 情報へのアクセスを改善する
(3) 「貧困行動基金(PAF)」をモニターする

UDNは13の地域でPAFのモニター委員会を設けた。これを20地域に拡大する予定である。委員会の任務は地域レベルで債務救済によって浮いた資金が貧困削減に使われているかを監視する。

結論

ウガンダの貧困削減は、過去5年間でかなり進んだ。今後15〜20年にはより進みだろう。市民社会がPEAPにはたす役割は大きい。しかし、問題は残っている。それは経済不況、政治不安などが暴力と腐敗を助長させる、危険性がある。ウガンダが2017年までに貧困を10%にまで減らすという、国家的指標を達成するのは、市民社会の肩にかかっている。