DebtNet通信 (vol.1 #46)  
国連の人種主義・人種差別・外国人嫌い・関連した不寛容に反対する世界会議
2001年9月


ダーバン、南アフリカ、2001年8月31日〜9月7

マスコミは、国連のダーバン反人種差別会議が、イスラエルのシオニズム問題で大きく対立していて、会議の結末が不確定である、と報じている。アラブを始め途上国側が「シオニズムを人種差別主義である」と非難することを決議に盛り込むことを要求し、これに対して、米国のパウエル国務長官が会議をボイコットした。またダーバン市内では、南アフリカの黒人、パレスチナ人などが、イスラエルに抗議するデモをした。 しかし、ダーバン会議のもう1つの対立点については、あまり報道されていない。

それは、「奴隷貿易と奴隷制度についての謝罪と賠償」問題である。これは、アフリカ諸国とNGO強く要求している。ヨーロッパは、16世紀半ばから19世紀半ばにいたるまでの300年にわたって、推定2〜5,000万人にのぼるアフリカ人を奴隷として全アメリカ大陸に連行した。この奴隷貿易と奴隷制度によって、富を得た米国、ヨーロッパは、奴隷の子孫に対して、謝罪し、賠償を払えと要求している。

当然、米国とヨーロッパ植民地宗主国は、この決議が、巨額の賠償金支払いを強制されるとして、反対しており、大きな南北対立になっている。

アフリカとNGOは、賠償金問題の細目については、まだ交渉の余地があるとしているが、最低の賠償支払いは「アフリカの対外債務の帳消しにして、社会、教育、医療プログラムに支出すること」であると言っている。

奴隷貿易・制度の謝罪問題について、北の代表の中では、バチカンが最も積極的である。バチカンは、8月29日、ダーバン反人種差別会議に対するポジション・ペーパー(政策声明)を発表した。とくに奴隷貿易・制度の賠償については、セネガル、南アフリカを始めとするアフリカ諸国に同調した。

バチカンは、「賠償金額の計算は困難であるので、オルタナティブとして、責任ある国が被害国に対して謝罪の意を表明すべきであり、その賠償として、途上国に対する財政的援助を義務とするべき」だといっている。とくに、ローマ法王は、1992年にセネガル訪問の際に、奴隷貿易の拠点であったゴレ島に立ち寄り、「キリスト教徒が人間を売買した罪についての許し」を願ったのであった。