DebtNet通信 (vol.1 #41)  
世銀債ボイコット運動
2001年8月22日


世銀についてのニュース

1)秋季総会
ワシントンで今秋開かれる予定のIMF・世銀合同総会は、9月29日〜10月4日のスケジュールであったが、ジェノバ・デモに懲りて、日程を早め、9月29、30日の2日間に短縮された。またセミナーの場所も、治安上の理由で、ホテルからIMF・世銀のビルに変更になった。

抗議デモ側は、9月29日は、主として、米国のラテン・アメリカへの介入に抗議して、ホワイトハウスを人間の鎖で包囲する。これを呼びかけているのは、ラテン・アメリカ連帯会議(LASC)とInternational Action Center(IAC)である。

9月30日は、Global Action Week(9月29〜10月4日)の一環として、IMF・世銀に対する大デモを行う。これを呼びかけているのは、Mobilization for Global JusticeとAnti-Capitalism Convergenceの2つのネットワークである。デモの規模は10万人が予想されている。全米最大の労組連合AFL-CIOもデモの参加を決定している。

2)「世銀債」ボイコット運動
米国Jubileeの「50年はもう沢山だ!」が、8月12日、世銀債のボイコットを呼びかけて丁度1周年に当たる。米国では、労組、自治体などの年金基金、大学、教会などの資産運用部などに対して、世銀債を買わないように呼びかけてきた。これは世銀が「米国では禁止されている環境破壊や人権侵害を、世銀は開発融資を梃子にして、途上国で行っている。これがあらためられない限り、融資の資金源となっている世銀債を買うな」というキャンペーンである。

すでに30の機関が「不買」を決定した。それは、サンフランシスコの労組評議会など12の労組、メリーランド州のTakoma Park市、サンフランシスコ市、オークランド市、バークレイ市、それにBoulder市の5市、United University Professoins(24,000団体が加盟)、Pax Christi USAなどの宗教団体、Harrington Investmentなどの投資会社が含まれる。

世銀債のボイコット運動は、世銀に2つのアキレス腱―世銀の3AAAのイメージと資金の調達―を攻撃することになる。世銀は、カルフォルニアの都市の議会が決議を準備していると聞けば、スタッフを派遣して、消化に勤めている。しかし、これは1080年代の反アパルトヘイトのDivestment運動(アパルトヘイトの南アフリカに投資している企業の株を手放すように、教会、大学、労組、自治体などの機関投資団体に圧力をかけた運動)と同様、全米に広がる兆しを見せている。


3)世銀が債務を買い戻すスキーム
オーストラリアのShann Turnbull博士 sturnbull@mba1963.hbs.edu から寄せられた論文。

このスキームは、中所得国の重債務問題解決の提案である。

「まず債務国政府が、「経済開発ファシリティ」を設立し、債務総額に見合う現地通貨表示の20年ものの国債を発行し、それを世銀が購入するというスキーム」

つまり、債務国は、20年間の国債に利子を払い、20年間かけて、経済と財政を立て直し、20年後に国債を償還する。その間、利子の支払い分を除いて、債務国は債務返済のための財政支出や外貨支出を免れる。しかし、20年後、計画されたように経済が復興しない場合、国債の償還はなく、世銀は債務帳消しをしなければならない。

世銀は、このスキームの場合、世銀保有の債権が20年ものの国債に転換するだけで、ただちに帳消しの資金を調達する必要はなく、また世銀の融資能力がそこなわれることがない。

Turnbull博士によれば、このスキームは、現在、世銀のチーフ・エコノミストへのアドバイザーのDavid EllermanとJubilee PlusのAnn Pettiforの3人で研究中であるという。

また最近、オーストラリアで夏休みをとっているWolfensonn総裁が、このスキームを取り入れて、「世銀のIFCの債権を債務国の国債と引き換えに売る」と語った、と言う。
また総裁は、債務国の民間債務をその債権保有の銀行に、同じスキームで引き取らせると
も言っている。

このスキームを、「債務国による債務の自主管理であり、自主資金調達」と呼んでいる。
私は、これが、日本政府の「債務救済無償援助スキーム」に共通するところがあり、一概に賛成できない。

しかし、世銀が、頑なにHIPCsイニシアティブに固執し、債務救済をこれ以上前進させる気配を見せていないところから出てきた、妥協案であろう。