DebtNet通信 (vol.1 #36)  
ジェノバ・サミットの総括
2001年8月13日


債務関連のニュース

1) 英国のDrop the Debt(DD)から、ジェノバの総括文書が送られてきた。
原文書が必要な方は北沢kitazawa@jca.apc.orgまで請求ください。

DDは、英国Jubilee2000解散後、ジェノバに向けた期限付きのキャンペーンを担う組織であった。私が得た情報では、イタリアのJubilee2000がほとんど実体がなく、さらにジェノバには全くメンバーがいないので、必然的に英国のDDが国際的な準備しなければならなかった。今年1月からDDがジェノバ市長と交渉し、Jubileeのデモを7月21日に行うという許可を得た。DDは英国からバスと飛行機で7月21日のデモに参加するツアーを計画した。ジェノバ一方、昨年秋以来、ローマとジェノバに実行委員会を立ち上げていた反グローバリゼーション派が、すでに7月20日に大デモを企画していた。このデモには、ついに市当局から許可が下りなかった。

以下はDDの総括の抄訳

(1)債務キャンペーンにとっては、ジェノバ・サミットは、失望と憂鬱に終わった。メディアは、過激なデモ隊と警官の衝突事件のみ報道し、DDが要求していた「債務のニューディール」については全くふれていない。 DDにっとては、第1には、いかにツアー・メンバーの身の安全を確保するか、第2には、DDの要請をG8首脳に届けるとい2つの課題があった。

第1については、21日のデモに参加することをキャンセルし、ツアー・メンバーの多くはミラノとトリノで債務帳消しのデモをしたので、犠牲者は出なかった。

第2については、Bono、Bob Geldof、イタリアのLorenzo Jovanottiなどのポップスターが参加して、ブレア首相、シュレダ―首相、プーチン大統領、カナダのクレチェン首相に面会し、「債務のニューディール」を要請した。またプロディEU委員長やブッシュ大統領の安全保障問題担当官Condoleeza Riceにも会った。


(2)
「ニューディール」は野心的ではあったが、実現可能な目標であった。のもかかわらず、獲得できなかった。その理由は、第1に、米国とイタリアの政権交代が、DDのロビイ活動を困難にしたこと、第2に、IMFと世銀の抵抗が激しかったことである。HIPCsイニシアティブは当分の間、存続する。これは、100%帳消しの阻害要因となっている。

DDは、任務を終えた。英国では、今後は、旧Jubilee2000のドナー団体であったChristian Aid、OXFAM、CAFODなどによる「Jubilee Debt Campaign(JDC)」が担う。

(英国には、Ann PettiforのJubilee PlusとJubilee Debt Campaignの2つの債務帳消し組織が存在することになった)

2)英国Jubilee Plusのジェノバ総括

Ann PettiforのJubilee Plusは、バマコ会議で発足した27団体によるJubilee Movement International(JMI)の名で、ジェノバ・サミットについて声明をだした。(原文を入用の方は北沢まで)

抄訳

G7は、グローバルな債務危機に取り組むことに失敗した。G7は、沖縄の失敗を回復するのに、ジェノバはユニークな機会であった。しかしG7は、すでに不信任されているHIPCsイニシアティブを再考しようとしなかった。たしかに、債務救済対象国は、沖縄での9カ国から23カ国に増えた。しかし、一方では、これらの国が、再び「持続不可能な債務」に陥っていることもたしかである。G7が「イニシアティブの実施について重要な前進があった」というのは間違っている。またG7は、債務総額740億ドル中、救済総額が530億ドルに達したという。しかし、2001年6月、世銀が発表した340億ドルに矛盾する。またG7は、「決定点に達していない国が必要な経済、社会改革を遂行できるように支援する」というが、まさにこの改革こそが債務危機を深化させている。同様に「貧困削減戦略ペーパー」も構造調整プログラムと同じく、ネオリベラルなマクロ経済政策の道具となっている。

3) ロシアが2国間債務を帳消し

7月25日、ロシアのAndrei Illarionov大統領補佐官は、ロシアに対するHIPCsの2国間債務5億7,200万ドルを帳消しにすると発表した。

先にプーチン大統領が、ジェノバ・サミットに参加し、IMF・世銀によるHIPCsイニシアティブによって23カ国が債務救済を受けたことを知った。ロシアは、寛大性を発揮して、23カ国の対ロ債務がGDPの0.3%になるまで帳消しすることにした。

ソ連時代、これらの国は、多額の援助を受け、返済不可能となっている。すでに5月には、ロシアはエチオピアのメンギツ・マルクス主義独裁時代に供与した48億ドルの債務を帳消しにしている。

ロシア自身、パリ・クラブ諸国に480億ドルの公的債務がある。これは、ロシアの対外債務総額1,510億ドル(民間債務を含む)の3分の1にのぼる。

4) 英国、旧ソ連邦5カ国をHIPCsに

7月16日付けの英紙『ガーディアン』は、「クレア・ショート国際協力相が、旧ソ連邦のアルメニア、ジョルジア、キルギスタン、モルドバ、タジキスタンの5カ国を重債務貧困国(HIPCs)に加えるよう、今秋のIMF・世銀の年次総会で要求する」と報じた。

彼女は、これらの国の貧困急増と平均寿命の著しい低下をもたらしている経済の急速な後退をとどめるには、劇的な措置をとる以外にない、これらの国は、「移行国ではなく、お嬢国である、と確信しており、すでに世銀と交渉を始めている。また、ブラウン蔵相に対して、EUの蔵相とワシントンのIMF・世銀当局を説得するよう迫っている。

5) 債務帳消しについての電子討論の開設

ブルッセルのEURODADは、OneWorld Netと協力して、ジェノバ以後、国際的に債務帳消し問題を討論する電子討論を立ち上げた。Web Siteは<www.DebtChannel.Org>、

討論の司会はJonathan Molsey、Ted van Hees、Francis Lemoine、Rob Mills


第1テーマ;7月18日〜8月10日;もはや債権国は債務問題についての興味を失ったようだが、2国間の債務帳消しは実施されたのか。もしそうでなければ、2国間債務帳消しを緊急課題にするためには?
第2テーマ;8月13日〜8月31日;債務を減らし、援助を増やすことが必要である。
第3テーマ;9月3日〜9月21日;HIPCsの債務をより深く削減することと、HIPCs41カ国の国の数を増やすこと。
第4のテーマ;9月24日〜10月12日;債務帳消しと貧困削減との関係。IMF/世銀のHIPCsイニシアティブは、貧困削減戦略にリンクしているだろうか?

6) OECDがHIPCsに対する貿易保険の「原則の声明」

7月25日、パリのOECDの中にある輸出保険グループは、HIPCsに対する輸出保険の「原則の声明」を発表した。その表現は、「重債務貧困国HIPCsの非生産的支出」に対して輸出保険を出さない」となっている。この「非生産的支出」とは、貧困削減や債務を持続可能性にする戦略にそっていないもの、あるいは社会的、経済的開発に貢献しない輸入品目をさす。 
 
7) 第3回国連LDC会議

5月14〜20日、ブルッセルで、第3回国連低開発国(LDCs)会議が開かれた。49カ国中、IMF・世銀が規定した重債務貧困国HIPCsは31カ国にのぼる。しかし、HIPCsはIMF・世銀がマクロ経済だけの指標で債務が非持続可能であると規定したのであって、国連UNDPの人間・社会開発指標に基づいて規定されれば、ほとんどすべてのLDCsがHIPCsに入る。

第3回国連LDCs会議は、LDC政府代表がフルに参加したにもかかわらず、先進国の圧力によって、これまでのG7やIMF・世銀による債務救済措置を変更させることが出来なかった。

8) Jubilee SouthのPRSPについてのパン・アフリカ宣言

ジュネーブのWCCとKAIROSヨーロッパがスポンサーとなって、5月10〜12日、ウガンダのカンパラ市において、IMF・世銀の「貧困削減戦略ペーパー(PRSP)」について会議を開いた。これに出席したのは、AFRODADや女性のAWEPONなどアフリカ地域組織を始めとして、アンゴラ、象牙海岸、ケニア、ボツアナ、マラウイ、ガーナ、セネガル、モザンビーク、カメルーン、ナイジェリア、ザンビア、モーリシャス、タンザニア、ジンバブエ、ウガンダ、南アフリカなどから39組織にのぼった。コーディネーターの役を務めたのは、南アフリカのAIDCであった。

宣言は、「PRSPは構造調整プログラムの変装であり、多国籍企業と国際金融機間によるグローバリゼーションを推進する目的を持つ」と規定した。

これまでのアフリカでの経験では、PRSPは、とくに市民社会の参加という点について、以下のような問題点が指摘される。

―PRSPは真に人びとの参加とオーナーシップ、政策決定を行っていない。反対に、市民社会の視点を無視し、単に正統化のPRに使っている。
―市民社会に必要な情報をタイムリーに、かつ完全に提供しないので、十分な関与を不可能にしている。
―PRSPは、外的に設定されたスケジュールにしばられているので、十分な参加の時間が与えられない。
―IMFと世銀は、作成された最終プログラムを拒否できる。これこそ、PRSPの「オーナーシップ」なるもののいんちき性を暴露している。
―IMF・世銀は買収したNGOを、政府をモニターする際の代理人に仕立てあげている。

原文が必要な方は、北沢まで請求ください。