DebtNet通信 (vol.1 #29)  
アフリカのエイズのための国連特別総会宣言
2001年8月30日


1. アフリカのエイズのための国連特別総会の宣言草案

要点:
マニフェスト;破壊的な規模と影響をともなったグローバルな疫病HIV/AIDSは、人間の安全保障にたいする最も恐るべき挑戦である。それは、コミュニティ、家族、個人、あらゆるレベルで、社会的、経済的発展を阻害している。
これまで、国連は、2000年、ミレニアム宣言、
         2000年、社会開発サミット
         2000年、女性会議の政治宣言
         1999年、人口と開発のKey行動において、
HIV/AIDSについて、コミットメントを行ってきた。

その要点;
アフリカが最も影響を受けている地域である。適切かつ緊急な対応を必要としている。
エイズは、とくに女性、子ども、青年に最も影響を及ぼしている。
貧困と紛争がエイズの蔓延を促しており、その解決を必要としている。
予防が最も中心の対策であり、感染者のケアと支援は一体である。
HIV/AIDSと闘うためには、市民社会の役割を認める。

行動計画

国家レベルで;
2003年までに国内戦略を作成する。HIV感染に最も脆弱で、最も危険性のある人びとの健康を促進し、保護する;につづく文章
(註)6月15日のインフォーマルな準備会議において、「例えば、子ども、特に困難な状況に措かれた少女;男とセックスする男;性労働者とその顧客;麻薬常習者とそのパートナー;先住民;売春宿に入れられた人や囚人;難民;流浪民、国内難民、仕事や紛争により家族から引き離された人びと、、、」について、議論は集中し、[ ]が付いた。このほか女性のSexuality、国際協力の項目について[ ]が付き、本会儀で議論される。

予防;2003年までに国内ターゲットを策定する
   2004年までに予防手段を確立する
   2006年までに女性と子どもの感染者を20%減らす
   2011年までに50%に減らす
治療と支援;2003年までに、戦略を作成する
      2003年までに治療薬を配布する戦略を作成する
資金;2010年までに年間100億ドルを支出する
   グローバル・エイズ保健基金をUNAIDSに委託して基金の運用とガバナンスの計画を策定する
毎年、国連総会の会期中に、1日をHIV/AIDSプログラムの評価に充てる。

2.グローバル・エイズ保健基金の運営について国際NGOの提言

G7首脳、国連事務総長、国際金融機関に対するグローバル・エイズ同盟(GAA)の提言

1) 市民社会―とくにHIV/AIDS感染者、なかでも女性に対して、当基金のガバナンス、企画、実施に十分な参加を保証すること。
2) 基金の将来的受益者となる製薬会社は基金のガバナンスに参加すべきではない。
3) 市民、コミュニティ、NGOが、HIV/AIDSの予防、ケア、支援、治療、孤児の養育、インフラ開発、人材育成などを達成するためにグラント供与をすべきである。
4) 基金の、金額、結果、透明性、効果など、運用についてアカウンタビリティを確立する。
5) 資金供与において運営費の支出を最小限に押さえること。
6) 基金がHIV/AIDS治療薬―模造薬を含む―を購入するとき、公正な競争原理にもとづいて、大量買付け制であること。最も安く、最も良質のものであること。
7) 資金供与においては、IMF・世銀の構造調整プログラムと切り離すべきである。
8) グローバル・エイズ保健基金はサハラ以南のアフリカのエイズ危機に向けられる。

3. UNAIDSの無能、

UNAIDSの指導機関である「プログラム調整理事会(PCB)」は5月30日〜6月1日、ジュネーブで会議を開いた。理事会には政府、関係国連機関、製薬会社、それに「HealthGapCoalition」など、いくらかのNGOがメンバーである。

まず、アナン国連事務総長が提案している「グローバル・エイズ保健基金」をめぐる問題点について、諮問会議が開かれた。グローバル・エイズ同盟のPaul Zeitz代表の報告によると、

「冒頭にNGOグループが、上記の2の内容の提言書を読み上げた。しかし、模造薬についての項目に、多国籍製薬会社の利益を擁護する米国とEUが反対した。そして、起草された文書にはすべて政策提言の部分が抜き取られて、意味のないものになってしまった」

4. 第8回国際エイズ会議、南アフリカのダーバン、昨年2000年7月11日開催
 
5.フランス政府のエイズ基金への拠出金

フランスのジョスパン首相は、6月1日、グローバル・エイズ保健基金に、1億2,700万ドルを拠出すると、訪問先のケープタウンで発表した。これで、公式に国連特別総会に向けて、醵金を公約したのは、米国とフランスの2カ国となった。

5. ケニア政府と製薬会社

南アフリカ政府に対する39の多国籍製薬会社の訴訟事件は、国内、国際的なキャンペーンの圧力によって、訴訟取り下げとなった。その後、製薬会社との模造薬をめぐる闘いはケニヤに移動した。

ケニア議会は、6月12日、ケニア政府がエイズの模造薬を輸入または国内で自主製造することができる「ケニア産業所有法案」を採択した。これはエイズなど緊急の事態が発生した場合、WTOのTRIPsを停止させ、安い模造品を製造、または輸入することが出来る。

この法案の成立には、「必須の医薬品へのアクセスびためのケニア連合」というNGO連合のロビイ活動が大きく貢献した。

ケニアの2,800万人の人口のうち、HIV感染者は220万人にのぼる。このなかで、治療をうけているのは、2,000人である。Sam Ongeri保健相は、「政府は外国の製薬会社に反抗して、安い治療薬を手にいれなければならない。製薬会社の特許権が切れる20年後まで待つことはできない」と語った。ケニアではエイズのために1日700人が死んでいる。

しかし、製薬会社は、この法案が、HIV/AIDS感染者2,500万人にのぼるアフリカのマーケットを脅かすとして、法案審議前に、ケニア議会の議員を、モンバサ海岸の贅沢なリゾートホテルに招待し、法案の修正を迫ったが、交渉は失敗に終わった。

6. ブラジルは、米国に対してWTOへの提訴取り下げを要求

ブラジルはすでに、安いエイズ治療の模造薬(Generic Drug)を製造しており、その結果、すでにエイズによる死亡を3分の2に減らした。これは、1997年に制定された、ブラジル政府の無料でエイズ治療薬を配布する「反エイズ・プログラム」によるもので、米国はWTO違反だとして、WTOに訴えていた。ブラジル政府は、米政府が薬品会社の利益を代弁していると抗議している。

ブラジルOXFAM、ブラジルActionAidなどのNGOが6月13日、サンパウロの米国大使館に抗議のデモを行った。 
 
7. ウガンダ

5月末、米国のパウエル国務長官は、マリ、ケニア、南アフリカ、ウガンダの4カ国を訪問した。最後の訪問国ウガンダでは、6月1日、ウガンダがエイズ撲滅計画を成功させ、
すでにHIV感染率を30%から20%に引き下げることに成功していることを評価して、米国が今後5年間で、HIV/AIDS予防計画の拡大費として、5,000万ドルを供与することを公約した。

この資金は2つに分けられ、第1の2,000万ドルは、予防計画の対象地域の拡大に充てられ、残りの3,000万ドルは170万人のエイズ孤児プログラムに充てられる。

パウエルは黒人であり、「アフリカのエイズ撲滅のためにブッシュ大統領と議会に働きかける」ことを約束した。

8.ファイザー医薬品会社無料でエイズ治療薬をアフリカに

6月8日、ファイザー医薬品多国籍会社は、ニューヨークの国連において、「世界の最貧国50カ国に無料でエイズ治療薬を提供する」と記者会見した。

すでにファイザーは、今年はじめから、南アフリカにおいて「Diflucan」のブランド名のエイズ治療薬を提供しており、今後2年間で5,000万ドルを支出する。これを50カ国に広げ、60億ドルを支出する。まず手始めに、南アフリカからボツワナ、レソト、マラウイ、ナミビア、スワジランドに対象を拡大する。またウガンダには

AIDS研修センターの設立に協力する。ファイザーという外国の会社がこのような快挙に出たことで、米国の医薬品会社は、厳しい批判に晒されている。