DebtNet通信 (vol.1 #27)  
外務省への申し入れの件
2001年5月24日


5月24日(木)午後3―4時半、外務省経済協力局国際機構課に申し入れを行いました。その時の報告です。遅くなったのは、私のパソコンが壊れたためです。やっと臨時のものを入れて、間に合わせています。

外務省とのアポを取ってくださったのは、議員連盟の小宮山洋子事務局長の川村浩一秘書さんでした。ありがとうございました。

国際機構課は、外務省でOECDのDAC(開発援助委員会)、世銀・アジア銀、UNDP(国連開発計画)などを担当する課です。今回は、課長が長期の出張とかで、大村周太郎主席事務官が出席しました。ちなみにパリ・クラブの担当は有償資金協力課で、そのスタッフと、「債務救済無償援助スキーム」の関係で、無償資金協力課のスタッフも同席しました。

申し入れ書と資料は、すでにこのMLでお送りしましたので、ご参照ください。

1) マラウイの2国間公的債務救済についてのパリ・クラブの議論について。

DebtNetに入った情報によると、パリ・クラブにおいて、2国間債務の86%という高いシェアを持っている日本が、債務帳消しのリーダーシップを発揮し、「マラウイの債務のすべてを帳消しにして、今日からマラウイの決定点である2003年まで、債務返済のすべてを受け取らない」と発表した。しかもこれまでのCut-of-Date、つまり、パリ・クラブでは、これまで、1982年以前の債務しか救済の対象にしてこなかったという慣習を破り、1997年までのマラウイの債務のすべてを帳消しにするとしたことが、画期的であると評価されたということでした。

外務省にこのことを質問しましたところ、全く事実と異なり、「マラウイは、日本の債務救済無償援助スキームの対象国である。したがって、すでに帳消しをしている、と発言しただけのことである」との答えでした。つまり、マラウイの債務は、40年にリスケされ、このリスケという言葉が、日本政府の言う帳消しなのです。マラウイはリスケされた債務を毎年返済し、日本はそれと同額の無償援助を供与する、ということです。

私たちは、「債務を返済させるスキームは、帳消しとは言えない」と反論しましたが、そのことについては、外務省はあえて再反論しませんでした。

要するに、ケルン合意、昨年の日本政府の声明などは、一切無視され、旧態依然とした「スキーム」を続けているのです。

外務省との議論の中で、「スキーム」の実態と問題点が明らかになりました。

(1) スキームの本来の目的:1978年に策定されたこの「スキーム」は、第1次石油ショックにより、工業化に着手したばかりのアジアの石油輸入国が、外貨不足に襲われ、日本に泣き付いてきたことから始まりました。ODAの円借款による債務を返済すれば、日本はその同額を無償援助として、ODA予算の中から、返済してやる、というのでした。したがって、対象国のカテゴリーは、「石油輸入国」でした。
したがってこの「スキーム」は、重債務国の債務の救済のためではありませんでした。

(2) その後1982年に債務危機が発生しました。さらに、1990年代に入り、日本の安保理常任理事国入りの票集めのために、大票田のアフリカを援助という餌でつるために、アフリカ援助東京会議TICADを開催しました。この時、石油ショックのときの古いスキームを横滑り的に援用して、対象国のカテゴリーに国連のLDC(低開発国)を付け加えました。LDCとは、一人当たりのGNPが600−700ドル以下の国を指し、今日では、49カ国が挙げられています。しかし、問題はLDCイコール重債務最貧国(HIPCs41カ国)ではないということです。貧しくても借金していなければ、HIPCsではありません。またLDC以上であっても重債務国である場合があります。

(3) 日本政府は、HIPCsに対して、この「スキーム」を無理やりあてはめたのです。
したがって、HIPCsのなかで、「スキーム」の対象になっている国は、
ギニア、マリ、モーリタニア、マラウイ、ニジェール、ルワンダ(現在は除外)、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、ボリビア、ミャンマー、ケニア、イエメン、ラオスの14カ国です。

2000年末にIMF・世銀が債務削減を行った22ヶ国の中でも、カメルーン、マダガスカル、セネガル、ホンデュラス、ニカラグアなどは、「スキーム」の対象になっていません。そして、ODAの基本方針の人権条項に抵触するとして、援助が停止しているはずのミャンマーには、「スキーム」により、無償援助が供与されています。

つまり、日本政府は、Jubilee2000が要求してきた、「支払い不可能な重い債務を帳消しに」という要求を全く理解していないばかりか、ケルン合意も理解していないことになります。

昨年末、連合国際局長との会合で、外務省が「スキーム」の再検討(レビュー)をしている、と語ったのですが、今回も同じく、「スキームを再検討している最中だ」と答えました。こんなにレビューが遅れているのは、スキームを変更するには、法律の制定など多くのプロセスが必要だというのがその理由のようです。

DebtNetが、粘り強く交渉を続けなければならないと、感じました。
私たちは、直ちに、HIPCs22カ国(外務省の情報では、最近チャドが加わり、23カ国になった)の債務を全額一挙に帳消しにすること、それに、紛争当事国については、返済された債務を、「信託基金」を設けて、そこに入れ、「紛争を解決すれば、復興資金として、援助する」、ことを申し入れました。

今回の出席者は、田中連合国際政策局長、カトリック正平協ポール・マッカ―ティン神父、A SEEDジャパンの鈴木亮、事務局の大塚照代、北沢洋子の5人でした。

A) 以後、月一回位のテンポで、協議を続けることを申し入れ、同意を取りました。国際機構課が担当するそうです。
木村周太郎主席事務官、Tel:03-3580-3311(内線2561) Fax:03−3593−8022 E-mail:<shutaro.ohmura@mofa.go.jp>
B) 6月25日から始まる、国連アフリカのエイズ特別総会の担当部署は、国連行政課の専門機関行政室です。総会前に、一度、申し入れをしなければなりません。
C) 貿易保険の帳消しを担当しているのは、外務省ではなく、産業経済省(METI)の貿易保険課です。これに対する申し入れをしなければなりません。
D) ジェノバ・サミットのシェルパは、外務省の野上義二外務審議官です。この人に対して、FTAPの申し入れをしなければなりません。頑張りましょう。