DebtNet通信 (vol.1 #23)  
IMF・世銀春季会議の報告
2001年5月3日


4月29日より、ワシントンで開かれていたIMF・世銀の蔵相・中央銀行総裁による2001年春季会議は終わった。重債務最貧国(HIPCs)の債務救済については、2000年末の22カ国に対する削減措置以来、一歩の前進も見られなかった。以下はIMF・世銀をめぐるいくつかの情報をまとめたもの。

1)IMF・世銀のHIPCs報告書
4月23日、IMF・世銀は「長期の対外債務の持続可能性についての挑戦」というタイトルの報告書を発表した。この報告書は、何度も書き直された結果、ワシントンの春季会議が始まる直前になって、やっと発表に漕ぎつけたのであった。

その内容を一口で言うと、HIPCsイニシアティブは、とくにHIV/AIDSが深刻なサハラ以南のアフリカにとって「債務が十分に削減しされいない」ということであった。 

これは、HIPCsイニシアティブに対して、Jubilee2000が批判してきたことが正しかったことを物語るものであり、IMF・世銀にとって、厄介な報告書でもある。

Jubilee2000はHIPCsイニシアティブの債務対輸出比(150%)は、甘い予測に基いていると主張してきた。IMF・世銀は、輸出増を年率6%と予測していた。今回のIMF・世銀の報告書は、はじめてこれが「楽観的な予測であった」ことを認めた。報告書は、1990−1999年平均して、HIPCsの輸出は年平均4.2%増を記録してきたが、この数字のほうが「現実的であった」、そして、2005年には、債務/輸出比は、「持続可能」ぎりぎりの160%になり、2015年には、180%に跳ね上ると述べている。また、ブルキナファッソ、ルアンダ、タンザニアの3カ国は、削減期日のデッドラインであるCut of Date以後に新たに世銀から融資を受けたため、「持続可能な債務」の150%以下という目標を達成できない、とも述べている。  

また150%以下の国で、とくにHIV/AIDS危機下のアフリカHIPCs国においては、適切なグラント援助が供与されない限り、債務対輸出レベルはすぐに上がるだろうと、予測している。

このように、HIPCsイニシアティブの不備を指摘していながら、報告書は、更なる債務帳消しが必要であるとは、書いていない。その代わりに、IMF・世銀は、経済成長と構造改革が唯一の解決の道であると説いている。 

2)国際通貨金融委員会・開発委員会の共同コミュニケ
IMF・世銀春季蔵相・中央銀行総裁によるIMF・世銀春季会議に先立つ4月29日、24カ国からなる国際通貨金融委員会(IMF)・開発委員会(世銀)の合同会議は、議長であるブラウン英蔵相の名において、共同コミュニケを発表した。

コミュニケは、ほとんど2000年末に泥縄式に行った拡大HIPCsイニシアティブの自画自賛に終始している。HIPCsイニシアティブとともに、債権国が2国間のODA債務を100%帳消しにしていることも評価している。さらにグラントの援助を供与することを公約している。

わずかに、パラ7において「22カ国が完成点に到達した時、持続可能な債務のレベルについての徹底的な分析と討議が行われ」、「追加の債務救済が考慮される」と述べている点が注目される。このことは、輸出産品の急激な値下がりなど外的な経済ショック、あるいは、HIV/AIDSなどの急激な漫延などによって、重債務最貧国が危機に瀕した場合、より一層の債務削減措置が採られる可能性があることを示している。

3)世銀が貿易問題に介入
ワシントンのIMF・世銀春季会議の中で、4月30日に開かれた世銀の開発委員会(向かう半年間の政策決定機関)に提出された「開発のために貿易を梃子に使う」と題した26ページの非公式文書をStopWTORoundが手に入れた。この委員会には、24カ国の開発と経済計画大臣が出席したが、この文書をほとんど丸ごと承認した。ただ、先進国の保護主義によって途上国が蒙る損失が途上国への援助総額を上回っている、ことを嘆く声が出ただけだった。

実際には、世銀は出資国(先進国)の貿易政策に口を挟むことはできない。そこで、世銀は、借り手の途上国に対して、現在押し付けている部門別構造改革に、貿易の自由化を加えようと言うのである。具体的には、世銀の「国別援助戦略」の項目に「貿易」を加える。世銀の非公式文書は、「貿易政策は、貧困削減戦略の中心項目」であると書いている。貿易は、経済成長のエンジンであると謳い、貿易の自由化が最貧国にもたらす被害については、ほとんど触れていない。

NGOは、世銀の文書を分析して、以下のように批判している。(1)世銀の構造調整融資が、借り手国の貿易の増大につながると主張している。これは、世銀が構造調整融資を無制限に増やすことに連動している。なぜなら、鉱山やダム開発プロジェクトなど容易に住民に害をもたらす融資は必然的に減ってきているからである。(Njoki Njoroge;50年はのう沢山だ!)
 (2)世銀は、最貧国の政策決定に大きく関与しようとしている。貿易自由化促進は、その一環である。それに構造調整融資はプロジェクト融資よりも安上がりだ。(Nancy Alexander; Globalization Challenge Initiative)
 (3)世銀は、途上国の反乱に遭っているWTOを支援しようとしている。途上国の多くは、新しいラウンドの開始に反対している。しかし、世銀文書は、11月のカタールでのWTO閣僚会議では、新ラウンドが決議されると、書いている。世銀の開発委員会には、途上国も入っている。世銀はこれらの国をWTO派に抱き込もうとしている。すでに、エジプトと南アフリカが新ラウンド開始に同調して、途上国のなかで工作を開始している。

4)世銀のバルセロナ経済開発年次総会
世銀は、6月25〜27日、スペインのバルセロナにおいて、経済開発のついて年次会議を開く。これに対して、「Campaign against the World Bank- Barcelona2001」というグループが、シアトル、ワシントン、プラハのような大規模な反対デモを呼びかけている。

スローガンは、「もう1つの世界は可能だ―抵抗と連帯をグローバル化しよう」である。
6月16〜21日:地域での活動始まる。EUは16日にGothenburgで集会を開く
6月22〜23日:対抗会議を開く。エコロジイ・食糧と農業、社会的・労働者の権利、軍事化と平和、移民、グローバリゼーションと女性、グロバリゼーションと開発の6テーマでワークショップ
6月23日夜、コンサート、St.Joanのフェスタ、
6月24日:抗議デモの日
6月25日:街頭行動―非暴力の不服従行動
6月26〜27日:小規模なグループによる行動
6月27日:世銀を裁く民衆法廷
バルセロナの抗議デモの主催者は、7月のジェノバのG7に対する抗議デモの前哨戦であると捉えている。同時にプラハの経験に照らして、世銀にたいする抗議デモの重要性と効果について強調している。世銀のような国際機関の「Crisis of legitimacy」を作り出す必要があると言っている。5月12〜13日、バルセロナでヨーロッパ・レベルの準備会議を開く。
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