DebtNet通信 (vol.1 #20)  
マラウイの債務帳消し
2001年5月


Jubileeplusより

パリ・クラブ会議、マラウイの債務削減―日本が100%帳消し

先日、マラウイの債務削減について、パリ・クラブの会議が開かれた。パリ・クラブは債権国会議であって、2国間債務の削減を議論する場である。これには、IMF・世銀などの多国間債務は含まれない。

ここでは、それまで債務帳消しに反対してきた日本が、債務帳消しの指導的役割を演じた。また、1997年以前の債務のすべてを削減の対象にした。

パリ・クラブでは、これまでマラウイの削減される債務の対象を1982年以前に発生した債務、つまりCut‐off−Dateに限定してきた。このルールを破り、過去15年の債務も削減の対象に加えたのであった。これは、世銀の調査で、Cut‐off‐Date以前の債務に限定すると、マラウイの債務は、「非持続可能となる」という結果が出たからであった。

しかし、このようなパリ・クラブの特例にも拘わらず、さらに世銀の調査によると、削減以後のマラウイの債務は依然として、「非持続可能」である。

マラウイの債務総額は、26億800万ドルである。うち世銀は、16億300万ドルである。
アフリカ開発銀行は3億2,200万ドル、そして2国間では、日本の2億9,400万ドルが最大である。続いて、EUは9,500万ドル、IMFは8,800万ドル、中国は3,600万ドル、英国の貿易保険は2,700万ドルである。

マラウイは、特に世銀への債務が多いのが特徴である。また、今回、パリ・クラブ諸国は、1982年6月以後に発生した2国間債務のすべてを帳消しにした。

これは、2国間では86%を占める日本がODA債務を帳消しにすると発表したことが重要な決め手となった。
「日本は、マラウイの債務のすべてを帳消しにし、今日からマラウイの決定点である2003年まで、債務返済をすべて受取らない」と宣言した。これで、日本は、2国間債務の帳消しについて、他のG7政府とやっと肩を並べることになった。

マラウイは、今回の削減措置によって、毎年6,000万ドルの資金が浮くことになる。これまでの5年間、マラウイは債務返済に毎年、9,300万ドルを支出してきた。これは、2003年には、3,600万ドルになり、2007年には4,500万ドルに増えるだろう。そして、完成点から4年後の2007年の債務総額は、年間輸出額の150%を占めるだろう。これは、明らかに、世銀の言う「非持続可能な債務」である。

マラウイは、2000年12月に、決定点に達した。しかし、この段階では貧困削減戦略ペーパー(HRSP)は市民社会の参加がなかった。従って、HRSPは「暫定HRSP」と呼ばれるものであった。マラウイ政府は、市民社会の参加を2ヶ月間で行うと言っている。2月1〜2日の政府との協議においてNGOは、「不充分である」と述べた。

マラウイは最も貧しい国の1つである。冷戦時代、西側政府は、悪名高いHasting Banda政権を支援してきた。Bandaは、反対派を鰐に食べさせたほどひどい独裁者であった。冷戦が終わり、Bandaは追放され、1994年には複数政党制が敷かれた。新政権は、はじめてマラウイに義務教育とプライマリー・ヘルスケア制度を導入した。教育と保健予算を50%増やし、年間1億4,800万ドルの予算を支出してきた。しかし、IMF・世銀の圧力により、1999〜2000年予算では、Banda時代と同じ、1億ドル以下に削減された。HIPCイニシアティブによる完成点においても、教育・保健予算は、その最高を記録した1997〜98年度予算より15%減とされている。

マラウイは、HIVに感染率では世界最高の国の1つである。妊娠女性の感染率は31%、平均寿命は、1990年の52歳から、今日では42歳に落ちている。