DebtNet通信 (vol.1 #17)  
エイズ治療薬会議に関するNGOの声明
2001年4月19日


エイズ治療薬会議に関するNGO声明

4月9〜11日、ノルウエーのオスロで、WTOとWHOが合同で、「エイズなど主要な治療薬の価格差と資金供与についてのワークショップ」を開いた。これに参加したNGOの中の5団体が、4月11日、何の進展も見られなかったことに失望と苛立ちの共同声明を出した。以下は声明の要約:

本来、WTOとWHO共催のワークショップの目的は、治療薬を安価に手に入れることが出来るよう、貿易の障害を取り除くために、保健と貿易の専門家の新しいフォーラムを設立することが、その目的であった。しかし、途上国において治療薬の価格を引き下げることについて、何らの進展もなかったことに失望を表明する。

NGOは、治療薬を値下げする最良の方法は、「模造(Generic)*薬」の製造を促進することである、と主張する。(註: WTOのTRIPs協定では、製造過程にパテントが付いているのであって、製品にではない。したがって、異なった製造方法で同じ薬を製造することができる。この方法でインド、ブラジル、タイでエイズ治療薬を安く製造している。日本のマスコミはこのGenericを「模造」と訳しているが、正確には「属性」である。)

6月には、ジュネーブで、アフリカ政府の要請により、WTOのTRIPsの特別理事会が開催される。ここでは、はじめてTRIPsの条項を、途上国の人々の生命を救うことに、どう対応させるのかを議論することになっている。NGOsはこの特別理事会に向けて、今回のワークショップにおいて有効な提案がなされるものと信じていた。その提案の中には、低開発国(LDCs)に対して、TRIPs協定の実施のデッドラインを延期することもあった。また、途上国のエイズなどの疫病に対する治療薬の研究開発(R&D)を保証するメカニズムを設けることも含まれていた。

ワークショップに参加したのは、北と南の政府、関連の国連機関、多国籍製薬会社、模造治療薬製造会社、NGOsなどの代表であった。ここでの中心議題は、途上国の患者が手に入れられるために、治療薬の価格差をつけることであった。現状では、最貧国がTRIPs協定で保証されている権利を実施することが阻まれている。価格差とともに、並行輸入などの措置も必要である。

しかし、3日間の討議の間、価格差に言及した製薬会社は、1社もなかった。現在、製薬会社が出している「低価格」なるものは、アドホックなものであり、不充分であり、模造薬の価格に到底及ばないほど高い。しかし、一方では、製薬会社は貧困支援を口にしている。

NGOsの提案は、価格差という1つの対処ではなく、複数の対処方法を組合わせることである。その方法は;
―持続可能であること。慈善や寄付に依存しないこと。
―途上国の自立を促すべきである。援助は、エイズ治療薬に限定すべきでないこと。

治療薬の価格を引き下げる最良の方法は、競争を促進することである:
―ブラジルでは、5年間でエイズ治療薬の価格が82%下がった。そして、必要な患者に無料で配布することが出来た。
―模造薬製造会社により、1年間で、年間の治療薬代を10,000ドルから350ドルに値下げした。
 この事実から、援助計画の中に、南の模造薬製造能力を促進することが含まれるべきである.

NGOsは、新しい「R&Dについてのグローバル条約」を提案する。これは、グローバルなR&Dの基金の創設を目指したものである.とくに製薬会社が将来のR&Dの意欲を損なうとして、値下げに反対していることから、これは重要である。

NGOsは5月に開かれるの世界保健総会に向けて、WHOに対して、今年中にこの条約についての交渉を開始するよう要請する。ビデオを通じて参加したハーバード大のJeffrey Sachs教授が、予防と治療のための基金の創設を提案した。しかし、製薬会社は、この基金が、途上国に「屈服」するような条件をつけることに反対した。

(署名)
CPT(Consumer Project on Technology)
HAI(Health Action International)
MSF(国境なき医師団)
OXFAM
TAG(Treatment Action Group―HIV/エイズ患者の団体)