DebtNet通信 (vol.1 #14)  
Reality Check
2001年4月12日


英国のDrop the Debtグループから、債務の現況について、「Reality Check」という文章が送られてきました。以下はその抄訳です。

1)HIPCsイニシアティブは債務帳消しという重大なチャレンジに対応出来なかった
●22カ国の債務の削減率はわずか27%、削減額は、年間の返済総額の7億3,500万ドルに過ぎない。
●その結果、22カ国は、年間の医療費よりも多くを予算から債務返済に充てねばならない
●G7政府は、HIPCsの2国間債務の100%帳消しを公約したが、IMF・世銀の削減は50%以下にとどまっている。
●ザンビアとニジェールは、HIPCsイニシアティブによる救済を受けた後、債務返済額は逆に増加した。

2)IMFと世銀はHIPCsの最大の債権者であり、独立の会計士の計算によれば、その機能を損なうことなく、HIPCsの債務を100%帳消しすることが出来る
●HIPCsイニシアティブによる削減後、22カ国に対するIMF・世銀の債務は、それ以外の上位17の債権者が保有する債務を合計したものより大きい。
●22カ国に対して、100%帳消しした場合、世銀は、さらに2億1,500万ドル、IMFは2億8,700万ドルを毎年支出することになる。これをHIPCsすべてに行うと、さらに、世銀は1億3,800万ドル、IMFは8,100万ドルのより以上の支出を必要とする。
●Chantrey Vellacott DFKという独立の会計監査会社の調査によれば、IMF・世銀の100%帳消しには、300億ドルを必要とする。しかし、その機能に影響はないと言う。
●同会計監査会社によれば、IMFは、通常の利益と保有する金の売却益でもって帳消しできる。
●同じく、世銀は、IBRDの準備金と将来の利益金を慎重に使えば、IBRDとIDAの保有するHIPCsの債務を100%帳消しできる。これは世銀のAAA資格を損なうものではないという。
●同じく、IMF・世銀はそれ以上の債務帳消しをすることが出来る。これは、G7政府の政治的意思の問題であるという。
●また他の会計監査会社によれば、世銀は、将来IDAに返済される資金をもって、帳消しできると言う。2016〜20年には、それは、現在の年間の返済額を20億ドルも上回る。
●もしHIPCsのIMF・世銀への債務をG7政府がすべて負担すると、G7の市民1人当り年間1ドルの負担になる。

3)これまでの債務救済は、貧しい人々の生活を変えたが、まだ十分でない
●ウガンダの例では、初等教育への就学率が2倍になった。モザンビークでは、50万人の子どもの予防注射を実施した。ホンデュラスでは義務教育期間を3年増やした。ガイアナでは国家開発計画の予算を50%増やした。
●債務救済で浮いた資金の3分の2は、保健と教育に充てられた。残りは、HIV/AIDS、水の供給、道路とガバナンスの改革に使われた。

4)HIV/AIDS対策と2015年貧困削減ターゲットを達成するには、より深い債務救済が必要である
●債務救済を受けたアフリカ17カ国は、未だに13億ドルを債務返済に充てている。UNAIDSによれば、この額はHIV/AIDS対策を強化するのに必要な資金と同額である。
●サハラ以南のアフリカは、毎年、135億ドルを債務返済に充てている。「グローバル・エイズ同盟(GAA)」は、この地域では、HIV/AIDSと闘うためには毎年同額の資金を必要としていると言う。
●最も債務の重圧が大きいこの地域では、2015年ターゲットを達成できない恐れがある。1990〜1998年、絶対的貧困者の数は減っていないで、逆に増えている。

5)HIV/AIDSと闘い、2015年ターゲットを達成し、債務を持続可能なレベルにするためには、債務のニューディールが必要である
●HIPCsの債務の100%帳消しを、IMF・世銀、パリクラブ諸国が公約すること。
●紛争下、あるいは受け入れ難い人権侵害がある国のために、信託基金を設けること。その結果、将来、これらの国の債務返済分が返還され、開発に使われる
●ナイジェリアのように、HIPCsのカテゴリーに入っていない貧しい国で、重債務国のかなりの債務帳消しを行う。帳消しの対象国の認定は、貧困根絶のために必要な資金から割り出されるべきである。
●債務国は債務帳消しで浮いた資金を貧困と疫病と闘うために使うべきである。貧しい人々を苦しめている構造調整政策をやめる。
●新たな債務危機の発生を防止するために、資金供与はローンでなく、グラントにする、非持続可能な融資と借り入れをコントロールする新しいプロセスを導入する。