DebtNet通信 (vol.1 #13)  
ベルリンFTAP会議報告その3
2001年4月11日


ドイツFTAP国際会議報告その3

FTAPのワークショップでは、ジェノバ・サミットに向けて、共同の要請書を提出することになった。以下の文章は、ドイツ側が会議での議論をまとめたもので、5月11日までに国際的な賛同の署名を集めることになった。署名を送るあて先は<ftap@blue21.de>
(声明文の英文のテキストは北沢まで請求下さい)

その後、署名入りの正式要請文が、ドイツからG7のJubilee組織に送られる。各国では、これを、それぞれ自国の首脳、蔵相、シェルパ、また自国以外のG6の大使館に送る。またG7以外のJubilee組織は、G7の大使館に送る。出来るだけ交渉をする。

以下は要請文

G7首脳、蔵相、シェルパ
及び大使館

 私は、一歩進めて、将来に向けて次のことを提案したい。つまり債務問題の処理に当って、全く新しいアプローチが必要である。そのようなアプローチの主な内容には、債権者と債務国の利益をバランスさせるために、債務の仲裁プロセスの設置が含まれる。
―アナン国連事務総長ミレニアム報告より

債務国の債務危機を解決し、それを防止するための「公正で、透明性のある仲裁プロセス」(FTAP)

ここに、G7の国家首脳、蔵相、シェルパの皆様が、2001年7月にジェノバで開かれるサミットにおいて、これまでの対外債務の解決方法を実質的に改革するよう要請する。

末尾の署名したJubilee運動と組織は、G7政府が、債務国政府の債務危機を解決し、かつ防止するために、現行の対外債務の解決手段を、「公正で、透明性のある仲裁プロセス」に代えることを提案する。

歴史的な経験とその教訓

1956年以来、たび重なるパリクラブの交渉、また20年に及ぶいわゆる構造調整の結果は、対外債務の解決のメカニズムが、なんら実効性のある解決をもたらさなかったのみならず、債務国政府は、救済を受けた直後に、再び交渉のテーブルにつかねばならないという事態さえ生み出した.債務の重圧はさらに強まり、社会的弱者の状況は悪化した。貧困は今日なお増大している。パリクラブと国際金融機関による債務救済は、あまりにも少なく、あまりにも遅いため、意味のある債務救済になっていない。
 したがって、私たちは、人権擁護と法の支配の原則にもとづいて、債務問題を解決するために、新国際金融秩序の一環として、国際的仲裁機関の設置を主張する。
 私たちは、債務処理の新しい国際的な枠組を、「公正で、透明性のある、仲裁プロセス
(FTAP)」と呼ぶ。

法の支配の手続き

 OECD政府は、債務者に説いている法の支配を、自身にも適応すべきである。なぜなら、何人であっても、自分自身の事件では、判事であってはならないことは、法の支配の最も基本的な原則である。しかし債権国政府はこの原則を公然と破っている。彼らは、自分自身がクレームしているのに、判事、陪審、参考人、執行官になっている。
 FTAPにおいては、公平な機関が債権者と債務国間の交渉を行う。債権者、債務者ともに1名または2名を任命し、次に、単純多数決で決定できるように奇数になるように、彼らが3人目、または5人目を任命する。

底辺層を保護するという前例
 世界中のすべての法制度は、債務者保護という基本的原則を広く認めている。したがって、個人の債務者は、生命が脅かされ、人間の尊厳が犯されるような場合、債務契約を尊種することを強制されない。債務者の基本的権利は、世界の貧困者に対しても認められるべきである。

声なき人々の声
 債務の重荷を背負っているのは貧困層である。彼らこそ、その将来を左右する交渉に声を挙げる権利がある。FTAPは、貧困者がその意見を述べるフォーラム、そしてもし仲裁のプロセスで出された提案が、債務国の人びとの経済的、社会的、エコロジカルな将来を危険に陥らせるものであれば、反対出来るフォーラムでもある。このこの手続きは、公正で、公開で、透明性のあるものでなければならない。

平等な扱い
 FTAPにおいては、すべての債権者は平等に扱われる。債権者にはいかなる優遇措置も与えられない。IMFや世銀もまた、債務国政府に対するアドバイザーであることから、そのアドバイスによって引き起こされる危険を負担するわけで、最終的には、これは、IMF・世銀にアカウンタビリティと金銭的責任を追わせることになる。
 債権者のクレームについても、その融資政策やアドバイスの質を含めて、検討されるだろう。債務者の借り入れ実態についても同じ様に、検討される。
 国際的な融資にまつわる腐敗のケースについては、債務交渉から除外される。債権者、債務者双方の腐敗とモラル・ハザードについては、FTAPは債務危機の解決の中で取り上げられるべきものでなく、政治的、経済的な責任主体を明らかにすべきである。無責任な貸し手のクレームは無効であり、腐敗政権が外国の銀行に預金したものは、債務支払いのために差し押さえられなければならない。このようなアカウンタビリティと透明性があってこそ、FTAPは金融安定化の問題に取り組み、将来の債務危機と金融危機を防止することが出来る。

包括的な債務救済の枠組
 私たちが提案するFTAPは、今日、議論になっている2つの重要なテーマを解決する。
 まず第1に、FTAPはHIPCsイニシアティブによる債務救済の不充分なアプローチを解決する包括的な枠組を提起する。第2には、FTAPは民間セクターについても、金融危機のコストの一部を保証してやるといった誤ったアプローチに対して、系統的な答えを出している。また、民間債権者のモラルハザードを減らすことによって、将来の危機を防止することが出来る。
 G7サミットは、対外債務を解決する政策を決定するフォーラムである。したがって、私たちは、G7首脳が、現行の債務政策には欠陥があることに留意し、対外債務を解決する包括的な、オルタナティブな枠組であるFTAPを、実施されることを期待します。
(署名)