DebtNet通信 (vol.1 #11)  
ベルリンFTAP会議報告その2
2001年4月10日


ドイツFTAP国際会議報告その2

3 月14日午後6時〜10時のセッション

出席者;
主催者のドイツ側はJubilee2000のJurgen Kaiserとカトリック援助団体のMisereorのChristiane Overkamp、それにBlue21のPhilipp Herselほか多数Alberto Acosta(エクアドル、 「ラテンアメリカのドル化について」長い英文の論文をもらいました。私あてに請求して下さい。Wordで送ります。)

Lidy Nacpil(フィリピンFDC、Jubilee South代表 15日のみ参加)
Aftab Alexander Mughal(パキスタン)
Markus Glatz(スイス、 Bread For All)
Kunibert Raffer(オーストリア、 ウイーン大学経済学部教授)
Liana Cisneros(Jubilee Plus英国)
Ann Pettifor(Jubilee Plus英国、 公聴会、15日ともになぜか欠席)
Mario Cafirero(アルゼンチン、ラテンアメリカJubilee議員連盟会長<mcafiero@ba.net>)
Klus Schreiner(ベルギー)
Sugeng Bahagijo(インドネシア、 INFID)
Martin Koehler(イタリア、 「世銀改革キャンペーン」 <MKoehler@crbm.org>)
Yilmaz Akyuz(ジュネーブUNCTAD事務局)
北沢洋子(日本)

1)FTAPの考え方について:
ドイツ側が、事前にDiscussion Paper(英文、入用の方は私あて請求下さい。Wordで送ります)を準備していた。司会はMisereorのChristinne。

ドイツ側の主な論者はベルリンの環境NGOであるBlue21のPhilipp Herselであった。
FTAPの主な原則として;
●中立的な決定機関
●全ての関係者が参加する権利を持つ
●全ての対外債務を対象とする
●債務者の基本的なニーズを保護する
●自動的停止(Standstill)
●プロセスの完全な透明性ー交渉を公開で行う
を提起した。

これに対して、私は、Jubilee2000からの提案である以上、市民社会の参加を強く謳うべきであると提案した。これには、ドイツをふくめて全員賛成で、ただし、NGOが市民社会を代表するのではなく、教会、労組、議会などすべての市民社会を指すべき。

市民社会の任務は単に債務の解決にとどまらず、新しい国際金融秩序の形成に取り組むべきであるという意見がラテンアメリカから出た。

アルゼンチンの議員が、「中立性」の意味は債権者と債務国のそれぞれが仲裁者をノミネートすべきであって、これは、それぞれの利益代表であってはならないと言った。

エクアドルの代表は、今日金融市場で行われている議論との関係をどうするのか?
また基本的なニーズの規定は?これは人権や女性など国連の諸決議に従う。
誰がFTAPを提起するのか?これはどの債務国政府であろうと債権国政府であろうと提起できる。
FTAPに関連して国内法の制定が必要か?FTAPはアドホックなもので、これまでパリクラブにおいても、条約も協定もなく、債権国の合意によるアドホックなプロセスであった。したがってFTAPもアドホックなもので良い。

仲裁プロセスにおいて、有効な融資(Valid Loan)を規定する法的な根拠は何か?
FTAPについての国際的取り決め、協定は必要か?
これらの疑問についての結論は出なかった。
 
2)Insolvencyについて
ここで私はFTAPにともなうInsolvencyについてのこれまで理解が間違っていたことが判った。
米国の「破産法」には、個人が借金を返せなくなった時、破産法8条によると、すべて帳消しになり、そのまま市民生活を送ることが出来る、また13条によると、借金の多くは帳消しになるが、返済能力に応じて、3〜5年の返済計画をたてて、残りを返して行くという「更正法」の2種類があり、これまではどちらを選んでも構わなかった。ほとんどが8条を選んできた。ブッシュ大統領は、クレジットカード会社の圧力で13条を採るように厳しくチェックする法改正を目論んでいる。

日本の会社については、破産宣告をすると、山一證券のように、会社がつぶれ、従業員は全員解雇になるという、破産法がある。

一方、そごうなどのように会社更生法が適用されると、経営陣は退任し、会社は裁判所の管理下に置かれる。裁判所が任命した弁護士、公認会計士、あるいは、大会社になると「経営の神様」が任命され、再建計画をたてる。ここでは会社の借金の大部分は帳消しになるが、10年の再建計画をたて、残りの借金を返済していく。この場合、一部の従業員の解雇はあるが、会社は残る。バブル崩壊後、会社更生法では裁判所の手続きに時間がかかるという理由で、簡略化した「民事更正法」が制定された。

国家のInsolvencyとは、後者のことで、「国家更正法」とでも訳すべきである。私はこれまでInsolvencyを「破産法」と訳してきたが、間違いであった。

3月15日午前9時〜午後5時のセッション
Annは帰り、代わりにJubilee SouthのLidyが遅れて参加した。

3)FTAPの実現に向けての戦略
そもそも4〜5年前から、ドイツ、オーストリア、スイスの債務キャンペーンが合同で債務解決のプロセスとして提起してきた。

これまでに賛成しているのは、まず、ドイツ連銀、連邦議会、(大蔵省は反対)。
カナダはマーチン蔵相がFTAPを声明しているが、これにオーストラリア、スエーデンが2国間債務救済に限定付きで、賛成している。
米国を説得するのは困難だが、議会はロビイ可能であり、議員決議が可能だ。
最も聞き入れられる望みがないのは、日本である。

債務国側では、アフリカは受け入れ難いだろう。ラテンアメリカとアジアはロビイ可能である。ドイツJubilee2000は、ラテンアメリカではアルゼンチン、ブラジル、アジアについてはインドネシアをロビイの対象にしている。インドネシアの場合、スハルトの「犯罪的な債務」と「Valid Loan(有効な融資)」との境界がつけやすいし、国内の市民社会のキャンペーンも期待できる。カリブ海諸国も興味を示している。

実はここで明らかになったことだが、今年、2月はじめにインドネシアでINFIDによる債務の国際会議が開かれた。この会議に、日本からJANNIもNINJYAもともに参加しなかった。インドネシアでは、INFIDのパートナーが日本に2組織あることにとまどいをもっているようだ。そこで、DebtNetに取り組んで欲しいといわれた。

UNCTADのAkyuz「アジア危機の教訓」について;IMFの救済融資パケージによって、民間の債権者は保護された。しかし、民間資本を含めて、いかなる債権者も危機の負担をシェアすべきである。IMFの第2条B項によって、債務国は返済不可能となった時、一方的にStandstill(停止)できる。
Standstillとは; 公的債務の場合は、返済の中止であり、国債による債務の場合は、国債の価格を下げる。これは実際には支払い不能(Default)である。民間債務の場合は、債務国政府は為替取引きを管理、制限できる。
 しかし米国は、このStandstillに反対している。
 そして途上国政府もやりたがらない。

4)国際的なロビイのスケジュール;

対象は;
7月20〜23日、ジェノバのG7サミット

イタリアの「世銀改革キャンペーン」代表によれば、ジェノバは、町が海岸と後ろの山に挟まれていて、ホテルも少なく、大きな集会や人間の鎖をつくれるロケーションではない。またジェノバにJubilee2000の足がかりとなる組織はないと言う。またローマのJubilee2000は、Luce Faria<asd@gn.apc.org>が1人でになっており、全国動員できる体制にない。英国のDroptheDebtが今、旅行会社と交渉して、ジェノバへの英国人のパック旅行を企画している状態であって、デモや人間の鎖のために警察との交渉などをやれる段階ではない。

一方ジェノバの債務帳消しの行動については、Jubileeとは別に、7月20日にグローバリゼーションに反対するデモが企画されている。これには、ローマとジェノバにそれぞれ、NGOや社会運動からなる連合体が設立されている。これはG7サミット反対を掲げている。これに対応して、G7側が1日、サミットの開催をずらせているようだ。

2001年4月20〜21日、フローレンスでシェルパ代理の会合
2001年5月18〜19日、フローレンスでシェルパ会議
2002年3月、メキシコで開かれる国連金融と開発会議に向けて

4月15日から2週間、ニューヨークの国連本部で、第3回準備会議が開かれる。これに対して、FTAPの提案を行い、また、NGOのワークショップを開く。