経産省・エネ庁は「今だけ、金だけ、自分だけ」の大嘘つき!
その32  2017年5月5日

原子力損害賠償制度(原賠制度)という虚構
〜加害者の経営が被害者保護に優先するという無法〜
 
  岩波「科学4月号」の特集「検証なき原子力政策」には沢山の興味深い論文がある。本間照光(てるみつ)さん(青山学院大学)の<原賠制度という虚構〜保険が機能しないリスクとコストの現実〜>も興味深い。
 以下に、ほんの一部を紹介する。

◆ 「国策民営」の名のもと巨大な権力と金力によって、技術的経済的に不可能な原子力発電と核燃料サイクルが推進されてきた。それを支えたのが、原賠制度である。…。
◆ 原賠制度で原子力事業者(大手電力会社)と原子炉メーカーなどの原子力関連事業者の責任と負担を限定するとともに、とめどなく資金が注入され、業者の利益が保証された。電源三法をはじめとする税金と、総括原価方式によるコストと利益の保証である。
◆ 福島事故で、原発も核燃料サイクルも、そのリスクからみてもコストからみても手に負えないことが明らかになった。
◆ 日本の地震や津波については、民間の保険業界と背後の海外再保険ネットワークは原則として引き受けない。あまりにリスクが高く、商業ベースに乗らないからだ。
◆ 一般の保険では戦争リスクは免責、その戦争リスクを保障する特別の戦争保険でさえも核戦争リスクは支払対象外だ。原発はその本質上、核戦争と同様のリスクなのである。
◆ 科学技術庁が日本原子力産業会議に委託してまとめた「報告書」(1960年4月)では、原発事故時の損害額を当時の国家予算の2倍超の3兆7千億円と試算している。今日から見て控えめな試算だが、科学技術庁は40年にわたってこの「報告書」を公表せず存在をも否定し続けた。
◆ 原賠法第1条は、「被害者の保護を図り、及び原子力事業者の健全な発達に資することを目的」と同列にならべ、同法制定時(1961年)の衆議院附帯決議では、「…、本法の目的は、すべての原子力損害に対する被害者の保護を図るにあるから」とある。ところが、科学技術庁によって法の目的さえも曲解され、安全性を欠いたまま、実際には被害者・国民の保護に優先して原子力事業を保護することになり、現在もそれが続いている。
 加害者の経営が被害者保護に優先するという無法では、原賠法と原賠制度ひいては原子力政策の全面崩壊となる。

 保険が効かない原発。それを科学技術庁(現文科省内)や経産省(エネ庁)など原子力ムラのムラビトが、法律までねじ曲げて「加害者の経営が被害者保護に優先するという無法」を続けているのだ。

 なお、本間照光さんは週刊エコノミスト(2/7)にも「原発保険 原賠で賄えない福島事故 原発に経済合理性なし」でも「原発事業に経済的合理性がないことは、保険が機能しないことに示されている。」と主張している。
どちらか一読を。