経産省・エネ庁は「今だけ、金だけ、自分だけ」の大嘘つき!
その181 2021年9月8日
放射能汚染水を海に流すな―追2
〜「海底トンネル1キロ建設」による海洋投棄は「国連海洋法条約」違反ではないか!〜
トリチウムや他の多核種放射能汚染水を海に流してはいけないことは、本シリーズで何度も書いた。にも拘らず経産省と東電は「海底トンネル1キロ建設」計画を発表し、本当に「海洋放出」と称して海洋投棄するつもりだ。新たな視点も加えて「海洋放出」に反対する。

追2では、院内ヒアリング集会で外務省が曖昧な答弁に終始していたので、ここで国際法の観点から汚染水「海洋放出」の問題を論じる。
西本健太郎(東京大学公共政策大学院 海洋政策教育・研究ユニット 特任講師)による
福島第一原子力発電所における汚染水の放出措置をめぐる国際法(2011/4/12)
https://pari.ifi.u-tokyo.ac.jp/publications/PI11_01_nishimoto.html
は、2011年4月に事故後の汚染水の放出措置について論じている。


<4.国際法における「海洋投棄」と「陸からの排出」>では、
<現行国際法の下では、汚染水を船舶や航空機に積載して海上で投棄するとロンドン条約の適用対象となり、…詳細な規制の対象となるのに対して、陸上から排出することについては、明確な形で禁止する条約規定は存在していない。…
陸起因海洋汚染に関する国際法の規制は他の態様の海洋汚染に比べて極めて未発達であるのが現実である。…
現行の海洋汚染に関する国際法は、船舶起因海洋汚染や海洋投棄起因海洋汚染については詳細な規制をもつ一方で、海洋汚染の原因の約8割を占めると言われる陸起因海洋汚染の規制については規制が未発達なままに残されているという、海洋環境の保護・保全の観点からはいびつな構造にある。「海洋投棄」と「陸からの排出」との間の国際法の規制の差異は、海洋汚染に関する国際法の構造を反映したものである。>とある。

すなわち、海洋投棄は規制されているが、陸起因海洋汚染の規制は未発達なのだ。それでも、<5.汚染水放出の国連海洋法条約上の評価>には
<日本は国連海洋法条約の締約国として、海洋環境を保護し保全する一般的な義務があり(第192条)、海洋環境の汚染を防止するために「利用することができる実行可能な最善の手段を用い、かつ自国の能力に応じ」て、必要な措置をとることが求められている(第194条1項)。…第194条2項では、「いずれの国も、自国の管轄又は管理の下における活動が他の国及びその環境に対し汚染による損害を生じさせないように行われること並びに自国の管轄又は管理の下における事件又は活動から生ずる汚染がこの条約に従って自国が主権的権利を行使する区域を越えて拡大しないことを確保するためにすべての必要な措置をとる。」と規定されている。

私たちは、2020年2月に経産省の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」で、タンク保管継続が可能であるにも拘らず、「海洋放出」と呼んで海洋投棄を決めたことをはっきりと記憶している。
この決定は、明らかに「利用することができる実行可能な最善の手段を用い」ていない。
今、政府が東電とともにやろうとしている30年以上をかけての大量の放射性物質投棄は、国連海洋法条約違反だ。
直ちに中止するべきだ。
(参考)1982年12月10日の国連海洋法条約
https://www.un.org/depts/los/convention_agreements/texts/unclos/UNCLOS-TOC.htm以上