原子力ロビーによる放射線被曝の押付けを拒否しよう!
その38   2022年5月4日
放射線被曝による小児甲状腺がん多発を、非科学的に葬らせてはならない
〜岩波科学4月号特集<原発事故と小児甲状腺がん>が指弾する原子力ロビーの嘘〜
 首相経験者5人が、東京電力福島第一原発事故で「多くの子どもたちが甲状腺がんに苦しんでいる」とする書簡を欧州連合(EU)に送ったところ、政府・自民党が強く反撥し高市政調会長は「誤った情報」と強く批判した。本シリーズ「その37復興庁がUNSCEARを悪用して被曝健康影響過少キャンペーン」でも示した様に、各省庁が必至で被爆影響隠しを画策している。 そんな中で岩波科学4月号特集<原発事故と小児甲状腺がん>が非常に重要でタイムリーな科学的知見を提供した。
        
以下に簡単にその概要を紹介する。
【特集】原発事故と小児甲状腺がん〇福島原発事故と小児甲状腺がんとの因果関係について……津田敏秀
病気の発生という現実に対して、疫学の基本に立ち返り、因果関係を捉えなおし、UNSCEAR報告も福島県県民健康調査検討委員会報告も因果関係がないという根拠をまったく示していない。〇3.11以後の科学リテラシー……牧野淳一郎
福島県でなされてきた分析は、地域差が出た分析を捨て、「影響はない」という結論ありきのもの。〇福島県における甲状腺検査の諸問題III……濱岡豊
分析方法と過剰診断論の問題を具体的に指摘し、県民健康検査検討委員会・甲状腺検査評価部会およびUNSCEARの評価の問題点を指摘し、「専門家」にしっかりするか交代を要求。〇症例把握なき過剰診断論――現実から乖離した甲状腺検査の評価……白石 草
甲状腺検査評価部会は、研究デザイン変更や「宮崎・早野論文」の扱いなど、常に都合の悪いデータを排除することで、被曝との因果関係を否定する評価を生み出してきた。実際の甲状腺がんの病状や経過は公式の場できちんと議論されていない。〇安定ヨウ素剤投与指標策定の欺瞞……井戸謙一
事故後限られた自治体の住民以外は安定ヨウ素剤を服用できなかった。〇これは「復興」ですか?61 小児甲状腺がん多発の責任……豊田直巳 2011年3月に甲状腺からの放射線を測定できた子どもはわずかに1080人だった。〇福島県における甲状腺がん多発に関するいくつかの指摘――「三県調査」は福島県の甲状腺がんについていかなる主張もできない……黒川眞一
統計学の基本(ポアソン分布の信頼区間など)から説き起こして、菊池誠氏の書籍「福島の甲状腺検査と過剰診断」(あけび書房)の間違いを指摘し、「母数が100倍もちがう調査を比べることはできない」こと、すなわちいまだに言及される「三県調査」(青森、山梨、長崎)や他県での少数の甲状腺がんスクリーニング検査結果(岡山大、千葉大、慶應義塾女子高校)は、福島県の甲状腺がんに対していかなる主張もできないことを示す。

これらを読むと、「原子力ムラ」の「専門家」たちが露骨に、時には巧妙に、時には特権を悪用して、世界中の原子力ロビーと結託して、被曝影響隠しを画策していることが良く分かる。
一方で、科学を理解できない政治家や官僚たちがこれらの大嘘を拡大・悪用して、被曝影響を過小に見せて原発推進と核兵器利用を画策しているのだ。 騙されてはいけない。

(参考)
岩波科学4月号https://www.iwanami.co.jp/book/b604590.html
OurPlanet-TVhttps://www.ourplanet-tv.org/topics/44751/
以上