原子力ロビーによる放射線被曝の押付けを拒否しよう!
その20   2019年7月22日
小児甲状腺がんの被曝影響隠しを画策する日本の世界の医療者たち
〜真実に基づかない県民健康調査報告により放射線影響を無きものにするな!〜
 福島県立医大の調査委員会が7月19日に、同大の宮崎真講師と早野龍五東京大名誉教授の共著論文について、「故意ではない誤りはあるが、捏造などの研究不正は認定できない」とした報告書を公表した。
「福島県立医大論文に「不正なし」被ばく線量を同意ないまま使用(7/19(金) 共同通信)」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190719-00000087-kyodonews-soci
 宮崎・早野論文のひどさは「岩波科学」に黒川眞一さん・谷本溶さんが問題を明らかにしている(原子力規制委員会批判その192−193)。
 一方、7月8日の県民健康調査の検討委員会が紛糾して結論は出ず、引き続き座長と委員の間で議論されることになった。
「甲状腺がん報告を一部修正 福島県の検討委「結論が早急」(2019年7月8日共同」 https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019070801002074.html
「福島県県民健康調査委員会 甲状腺がん多発と被ばくとの因果関係で紛糾」(7月9日FOE Japan)
https://foejapan.wordpress.com/2019/07/09/190708/

 安倍政権も福島県庁も福島県立医大もイチエフ事故による被曝影響を過少に見せて、福島復興をアピールしようとしている。福島県民には酷だと思うが、これらの動きは真実に反している。
 
 例えば、朝日新聞『論座』に掲載された次の論文は根本的に間違っている。
「福島の甲状腺検査は即刻中止すべきだ(上下)
無症状の甲状腺がんを掘り起こす「検査の害」
菊池誠 大阪大学教授(物理学)」
https://webronza.asahi.com/national/articles/2019062000003.html
 そのことを、牧野淳一郎さんがハーバービジネスオンラインで厳しく批判している。
<「福島の甲状腺検査は即刻中止すべき」といえるのか? 朝日新聞『論座』に掲載された記事のおかしさ>(牧野淳一郎)
https://hbol.jp/196775
 3ページ渡る論文をご覧いただきたい。私は、牧野さんの次の結論を支持する。
<………
では甲状腺検査は中止するべきなのか
 ここまでの議論からは、(菊池誠さんの)「即刻中止するべき」という論理の前提になっている
a) 「放射線影響は九分九厘ないと考えられる」
b) 甲状腺検査は受診者の利益のためではなく科学のために行われている
c) 甲状腺検査は、進行の遅いがん発見してしまうだけであり、害だけがある
という主張はいずれも問題があり、
a’)甲状腺評価部会は科学をねじまげて「放射線影響はない」と結論しており、これは逆に「放射線影響がある」と示唆するものになってしまっている。
b’)甲状腺検査はそもそも科学をねじまげて「放射線影響はない」と結論するために行われている(なので「受診者の利益のためではなく」は正しい)
c’) 放射線影響があるなら、甲状腺検査は(ちゃんと正しい方法で)行われるべきである
ということになります。つまり、「即刻中止するべき」ではなく、今までのやり方、データ解析の方法、今後の進めかたを全て科学的に再検討するべき、ということなのです。>

 なお、菊池誠さんが引用しているIARC(国際がん研究機関。WHOの外部組織)の報告書「甲状腺モニタリングの長期戦略に関する国際がん研究機関(IARC)国際専門家グループの報告書について」http://www.env.go.jp/chemi/rhm/post_132.html
に対しては、平沼百合(米国在住医師、社会的責任を果たすための医師団メンバー)が『岩波科学6月号』で長論文「甲状腺がんをめぐる歪みの連環―IARC国際専門家グループ[TM−NUC]報告書・提言とは何か」で詳しく論じている。
 例えば、県民健康調査が「福島医大付属病院以外の他施設での手術症例は把握されておらず、実際の未手術症例の数は不明である」と指摘し、評価部会において高野徹部会員(大阪大学)の「超音波検査によるスクリーニングが早期診断には結びつかない」との発言が「無責任極まりないものである」と糾弾している。
 また、TM−NUCの同提言が「政治的な提言」になると予測したとおりになり、「議論を歪ませることによって混乱を来しており、議論を歪ませている報告書自体のエビデンスが歪んだ福島の知見であるという、歪みのスパイラルのような状況を作り出している」と結んでいる。

 このように、世界の原子力ロビーたちは、日本の医師たちのみならず世界の医師たちまで巻き込んで、小児甲状腺がん多発が放射線被曝の影響でないと結論づけようとしているのだ。福島県民健康調査の検討会の報告をしっかり監視しないといけない。
以上