原子力ロビーによる放射線被曝の押付けを拒否しよう!
その19   2019年7月5日
小児甲状腺がん多発(230人超)「被曝の関連は認められない」を誰が信じよう!
〜牧野淳一郎さんが「県民健康調査」議論を統計学に基づき糾弾する〜
<2011年の東京電力福島第一原発事故時に、18歳以下だった福島県民を対象にした14〜15年度分の甲状腺検査について、福島県の評価部会は3日、「現時点で、発見されたがんと被曝の関連は認められない」とする見解を取りまとめた。>(朝日新聞デジタル)
 そして、第35回「県民健康調査」検討委員会を7月8日に開催し、「甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連は認められない」とする評価部会まとめ案を承認すると危惧されている。これに強く抗議して「放射線被ばくを学習する会」が「緊急申入書」を提出する。
 さて、「福島でこんなに小児甲状腺がんが多発しているのは被爆の影響だろう」との当然の推定を否定しようとしている「県民健康調査」については多くの方々が問題点を指摘している。ここでは、牧野淳一郎さん(神戸大学)が「岩波科学」の「3.11以後の科学リテラシー」で統計学に基づき「県民健康調査」を糾弾しているので、紹介する。
 一言で言えば、「個人の被曝量データにアクセスできる」のに、作為的に区分けされた市町村別にグループ分けして統計解析して、被曝量の影響による有意な差を出ないようにしている。また、その統計計算も正確さが疑わしい。
 
以下に、「科学」6月号と7月号から、牧野さんの文を引用する。
(6月号から)
◆ そこに示されている結果は、オッズ比、信頼区間ともに間違っているように思われる。
◆ そのような資料が、「線量依存性の悪性ないし悪性疑い発見の性・年齢調整オッズ比の上昇傾向は認められなかった」という文言になって絵委員会の検討結果としてでてこようとしている。これはいくつもの理由で正当な科学的方法を使ったものとはいいがたい。

(7月号から)
◆ 大平哲也氏の研究では、2016年の論文と2018年の論文ではなぜか分析方法を変えている。「データが既に揃ってから」分析をしています。「出したい結果を出す」ようなバイアスにつながっている可能性が高いのでは。
◆ Kato Toshiko氏(大平論文掲載雑誌にコメントがアクセプトされた)によれば。
★ 大平論文に書いてある基準(外部被曝量が1mSvを超える割合)で分類したら大平論文に書いてあるような地域区分にならなかった。
★ 大平論文と同様な分析を本格検査についての公開データから行ったKato論文では、外部被ばく線量推計と悪性率に明確な関係が出ている。
★ 大平論文の解析は再検証されるべきであろう。
◆ そもそも、個人の被曝量データにアクセスできる大平論文で、市町村ごとにまとめてさらにグループ分けした解析を行うのは統計学的に適切なアプローチではなく、そのようなやり方をとっていること自体が大きな問題である。