原子力ロビーによる放射線被曝の押付けを拒否しよう!
その15   2019年5月21日
福島原発事故によるセシウム137の降下量は核実験より一桁多い
〜青山道夫さんが伝える降下量の変遷、事故影響を過少と嘘つく中村尚司、早野龍五〜
岩波科学5月号に放射性降下物(フォールアウト)に関する興味深い2つの論文を紹介する。
● 「月間降下物測定720カ月が教えること(1)−降下量の変遷はどうであったか?」(青山道夫:筑波大学)
1945年から2016年までのセシウム137の降下量を観測。
★ 年間降下量は、米ソの大気圏核実験で1963年にピーク(1930Bq/u)に達しその後減少している中で、イチエフ事故後には更に一桁多い降下量(25500Bq/u)を記録。
★ 半減期を補正した積算降下量も、1966年頃が最大(6010Bq/u/年)でその後徐々に減じていたが、イチエフ事故後には28000Bq/u/年と一桁多くなりその後もそれ程減じていない(2016年で25500Bq/u/年)。
★ すなわち「福島第一原発事故によるつくば市での降下量は過去の旧ソ連、米国および中国の核実験による降下量より一桁多かった」
★ また「事故後数年間のつくば市の降下量の変動傾向が最近では緩やかにしか減少していない」
 詳細は同論文をご覧いただきたい。核実験と並べて年間推移をグラフ表示されている。
そう、東京電力は、核実験より一桁多い放射性物質を地球上にまき散らしたのだ、「無主物」と呼んで。

● 「崩れる“科学の条件”(1):原理に従うのか、権威に従うのか」(上西充子、景浦峡、黒川眞一)
★ 「降下物量のデマ」
中村尚司氏(東北大、文科省「放射線量等分布マップの作成等に係る検討会」主査:「その8」参照)が2011年7月に次の3つの間違った「見解」を述べた。
(第1)事故後の7月に行政への助言として、大気圏核実験時代は「今より1万倍も高かった」と述べている
(第2)毎時0.5μSv程度の空間線量が観測されているにもかかわらず、降下物量との関係を認識できていない
(第3)心配の必要がないと根拠なく断言し、専門家の助言の範囲を超えている
★ 早野龍五・糸井重里著「知ろうとすること。」が広めたフォールアウト比較の誤解
(コラム3)気象研究所の観測データとの比較ができていたと述べて「地域差があるので一概には言えませんが、少なくとも首都圏に関しては、1973年のフォールアウトと比較しても、それほど心配するレベルではない」と述べた。実際の首都圏の降下量は、福島原発事故後のほうが1973年よりも桁違いに大きい。
(コラム4)2011年5月に押川正毅氏が早野氏に「東京オリンピックの頃、東京に1万Bq/uを超えるセシウム137が降った」発言に千Bq/uを超える月は無かったと指摘し早野氏が訂正したにも拘らず、2014年発売の「知ろうということ。」では読者に「大気圏核実験時代のほうが降下量は多いかのような印象を与えていた」

 福島原発事故による降下量増を過少に見せようとする原子力ロビーの嘘に騙されるな!