原子力ロビーによる放射線被曝の押付けを拒否しよう!
その10   2019年2月26日
世界で読まれたハーシー著「ヒロシマ」は放射能の影響を軽視する原爆被災物語
〜柴田優呼「“ヒロシマ・ナガサキ”被爆神話を解体する」から〜
 3.11後満8年をむかえ、安倍政権と福島県は被曝影響隠しを続けている。
 3年半前からそれを危惧していた柴田優呼「“ヒロシマ・ナガサキ”被爆神話を解体する―隠蔽されてきた日米共犯関係の原点」(作品社、2015年7月)を紹介する。
         

 アメリカによりヒロシマ・ナガサキの<原爆の爆発力を重視し、放射能の影響を軽視する語り>が創られ、日本がアメリカでの語られ方を踏襲し、福島の場合は<放射能の影響を軽視する語りが継続する可能性が高い。それどころか、事故の影響が語られなくなる可能性すらある>と警告している。
 この語りをもたらした書がジョン・ハーシー著「20世紀アメリカ・ジャーナリズムの業績トップ100」の第1位に選ばれた世界的ベストセラー広島ルポ「ヒロシマ」だ。

<空爆前後の運命の変転に焦点を当てた印象的な書き出しで知られる>同書は<原爆の爆発力とその威力、ひいてはアメリカの軍事力を誇示することにもつながっている。放射能の影響を否定はしていないが、爆発量の描写に比べると、矮小化されている。>

 確かに次のような事実はあまり知られていない。

★米軍の准将が1945年9月に帝国ホテルで記者会見し「広島・長崎では、死ぬべきものは死んでしまい、9月上旬現在において、原爆放射能のため苦しんでいるものは皆無だ」と虚偽の声明を発表。
★GHQの命により、広島、長崎は1945年12月まで外国人記者の立ち入り禁止区域とされた
★ハーシー著「ヒロシマ」はアメリカ人によるアメリカ人のための原爆被災物語。
★永井隆「長崎の鐘」(1949年)が、米軍占領下で出版が許可され普及した日本の被爆者の語り。永井のイメージが先行した長崎では、「怒りの広島」に対し「祈りの長崎」と呼ばれた。
★永井を誰も批判できない状態が20年も続き、多くの被曝者が自分の信条を吐露する機会を失ってしまった。
★被爆体験の語りにおいて、放射能の影響が前面に出てこなかった理由には、爆発力に焦点を当てた語りとともに、放射能と疾病や障害との因果関係のわかりにくさが関係している。

 要するに、米国がハーシー「ヒロシマ」で原爆の爆発力とその威力を誇示して放射能の影響を矮小化し、日本政府がアメリカでの語られ方を踏襲し、日米共犯関係が隠蔽されてきているのだ。
 今も、ABCC(原爆傷害調査委員会 )と厚生省国立予防衛生研究所(予研)原子爆弾影響研究所を再編してできた財団法人放射線影響研究所(放影研)による核兵器と原発の為の被曝の影響隠しに騙されてはいけない。