原子力ロビーによる放射線被曝の押付けを拒否しよう!
その9   2019年2月11日
全データを廃棄! 7つの倫理違反で住民を裏切るガラスバッジ論文
〜黒川眞一・島明美が岩波科学で明らかにする原子力ロビーのやり口〜
 「その6」で、早野龍五氏が、伊達市の住民同意なしに個人被曝線量データを使い、累積線量を3分の1に過小見積りした論文を国際専門誌に発表したことを述べた。ところが、この論文の為の「全データを研究終了時に廃棄している」ことを知った。驚くべきことだ。「住民に背を向けたガラスバッジ論文―7つの倫理違反で住民を裏切る論文は政策の根拠となり得ない」(黒川眞一・島明美、岩波科学2019年2月号)を紹介し、再度この問題を取り上げる。

○福島県立医科大学の宮崎真氏(伊達市市政アドバイザー)と東京大学の早野龍五氏が、伊達市の市当局から提供された市民のガラスバッジによる個人線量測定データと内部被曝線量データを用い、Journal of Radiological Protection誌に第1論文(2016年12月)と第2論文(2017年7月)を発表。2018年6月にはこれを放射線審議会が取り上げた。
○これらの論文は文科省・厚労省が定めている「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に対して、次の7つの違反をしている。
(1)提供を同意していない市民のデータを使用(5万9千人のうち同意は53%)した
(2)研究内容を告知せず、市民に同意撤回の機会を与えなかった
(3)伊達市長から論文作成を依頼されたことを隠していた
(4)倫理審査委員会による審査と学長承認とを得る前に、データ提供され研究発表した
(5)研究計画書にある内部被曝線量と外部被曝線量との相関を発表せずに終了した
(6)研究終了報告書には研究計画書に書いていない成果を報告した
(7)データをできるだけ長期間保管するべきであるにもかかわらず、全データを研究終了時に廃棄している
○早野氏と宮崎氏は突合データベースを市が持っていないことを知りながら、研究計画書に市がデータベースを持っていると書き、このデータベースを含む全データを破棄した。
○「個人の外部被曝線量と内部被曝線量との間には相関がない」などの研究結果を研究計画書で予定した第3論文の結果を発表しなかった。

 ナチスの人体実験の反省で生まれた「ヘルシンキ宣言」の重要な基本原則、医薬関係企業も建前の上ではきちっと守っている倫理指針。それに宮崎・早野論文が違反しているのだ。
 それにしても、田中俊一氏(前原子力規制委員長)も後押しして、伊達市が宮崎氏・早野氏にひそかに依頼して(一部)無断で市民データを使ったこの研究は、市民が受けた被曝線量は小さいよ!と主張する為の研究だった。
 被曝線量について大幅な過小評価をし、それを国際専門誌に発表し、根拠となるデータを廃棄する。正に原子力ロビーのやり口の典型ではないか? 
 幸いにも黒川眞一さんや島明美さんたちが、この不正・捏造をしっかりと追求し明らかにしてくれた。厚労省の統計処理同様、原子力ロビーが行う「科学的・技術的」を装う捏造研究は他にも沢山あるのではないか? 騙されてはいけない。
以上