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人報連ニュース・ダイジェスト

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【1998年】



人権と報道・連絡会定例会の内容(1998年)



第130回 逮捕・捜索令状の重みと報道

人権と報道・連絡会の第130回定例会が1月12日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約30人が参加した。この日のテーマは「逮捕・捜索令状の重みと報道」。日本のマス・メディアは「裁判所が出した令状は重い」として、警察・検察の強制捜査(逮捕・捜索)を「実名報道」の基準にしているが、肝心の令状が警察の言いなりにノーチェックで乱発されているとすれば――。例会では昨年11月に発足した『逮捕・家宅捜索令状110番』事務局の角田富夫さん、明白なアリバイがあるにもかかわらず逮捕令状を更新され続け、時効成立まで「潜行生活」を余儀なくされた御崎直人さん、そして、一連の「オウム真理教つぶし」の中で捏造そのものの容疑と令状による捜索を受け、国家賠償訴訟を起こしたSさんが、逮捕・捜索令状の実態と被害を報告。討論では、でたらめな令状を大義名分に実名犯人視報道を続けて、「公権力発動」監視の責任を放棄したメディアに厳しい批判が出された。


第131回 放送と人権等に関する委員会機構(BRO)の活動

 人権と報道・連絡会の第131回定例会が2月9日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約40人が参加した。  BROは日本で初めての報道による人権侵害に関する苦情受け付け・救済機関。郵政省の「多チャンネル懇談会」の提言を受け、97年6月、NHKと民間放送連盟加盟各社が共同で設立した。例会では、事務局長の大木圭之介さんから、BRO設立の経緯と機構の仕組み、これまでの苦情申し立てと審理の経過などについて話していただいた。報告を受けての質疑・討論では、参加者から◎審理の判断基準となる倫理綱領の必要性◎勾留中の報道被害者などの代理人的な機能の導入◎委員への報道被害者の参加などを求める意見が出され、大木さんは「放送界と市民の両方にプラスになるにはどうすればよいか、チエを絞ってやっていきたい」と話した。(文責・山口正紀)


第132回 少年事件と報道のあり方検証

 人権と報道・連絡会の第132回定例会が3月9日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約50人が参加した。  98年に入って栃木県黒磯市、東京都江東区など各地でナイフを使った少年事件が相次ぎ、大きく報道されているが、これらの報道には、本来、少年法で非公開とされる「供述調書」内容を警察のリークのまま断定的に伝えたものが多い。また、月刊誌「文藝春秋」の「神戸事件供述調書」掲載、「新潮45」の「堺・通り魔事件」の実名・顔写真掲載など、少年の人権を「商品化」する報道も相次いでいる。例会では、江東区の事件で少年の付添人になった山下幸夫弁護士から、江東事件の供述報道の問題点を報告していただき、連絡会世話人の山口が「文藝春秋」「新潮45」報道について、問題提起した。


第133回大阪「ホームレス」襲撃事件で

  人権と報道・連絡会の第133回定例会が4月20日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約50人が参加した。 97年10月に『大阪・道頓堀川「ホームレス」襲撃事件――“弱者いじめ”の連鎖を断つ』(太郎次郎社)を出版した北村年子さんから、捜査・裁判と報道の問題点について報告を受けた。事件は95年10月に起き、「人の痛みへの想像力が欠如した現代の若者の非人間的殺人」と報道された。しかし、「加害」側の若者、「被害」側の野宿者がともに「橋」にたどりつき、出会うまでの軌跡を追った北村さんは、若者もまた「弱者いじめ」の連鎖構造の中で苦しんでいたこと、実際の事件は共犯者や殺意の存在も含め、報道とは大きく異なっていたことなどを指摘。「いじめや野宿者差別など社会全体の共犯性こそ問うべき」と報道・裁判に疑問を投げかけた。   4月定例会の報告者・北村年子さんの『大阪・道頓堀川「ホームレス」襲撃事件――“弱者いじめ”の連鎖を断つ』(太郎次郎社)は、感動的な力作です。ぜひお読みください。「野宿者襲撃事件を考える会」への財政的な支援もお願いします。連絡先は、大阪市北区野崎町6の7/大阪北野ビル901号/後藤貞人法律事務所(・06−365−9626)、郵便振替00970−6−310967


第134回 2度の無罪判決・甲山事件報道

  人権と報道・連絡会の第134回定例会が5月18日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約70人が参加した。  この日は、神戸地裁の差し戻し審で3月24日、2度目の完全無罪判決をかちとった山田悦子さんがゲストとあって、会場は約70人の参加者で埋まった。例会ではまず、判決公判を傍聴した浅野健一、山口正紀の両連絡会世話人が、当日の法廷内外の様子、この判決報道も含めた甲山報道の問題点を報告。続いて山田さんが、判決を前にして弁護団と一緒に行ったメディアへの働きかけ、判決報道と写真・映像取材の拒否、検察の再控訴、そして甲山裁判を通じて考えた「人権とは何か」について、淡々と話した。人生の半分以上を「被告」として送ってきた山田さん。その体験からにじみでた話は、参加者に大きな感銘と勇気を与えた。


第135回定例会 捜査情報リーク報道の実態

  人権と報道・連絡会の第135回定例会は6月22日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約50人が参加した。「捜査情報リーク報道の実態」をテーマに、「玄米酵素」冤罪事件、帝京大レイプ事件の2つの事例について報告を受けた。  玄米酵素事件では、警察の不当な見込み捜査による薬事法違反容疑の家宅捜索を、NHKや北海道新聞などが、「健康食品にホルモン」と断定的に報道(翌年、不起訴)。また帝京大事件では、逮捕・報道された学生のうち2人が「自分たちはレイプに関与していない」と冤罪・報道被害を訴えている(被害者側との示談書にも明記)。2つの事件に共通しているのは、警察の公式発表の前に捜査情報がメディアに流され、それを鵜呑みにした断定的な報道がセンセーショナルに行われたこと。例会では、玄米酵素社の社長と、冤罪を訴える帝京大生2人のご両親から、報道の問題点を中心に報告していただいた。


第136回定例会 裁かれた「ロス疑惑」報道

  ☆三浦和義さんに、逆転無罪判☆ 人権と報道・連絡会の第136回定例会が7月13日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、例会史上最も多い約150人が参加した。報告者は三浦和義さん、三浦さんの弁護人・弘中淳一郎さん、当会事務局長の山際永三、同世話人の浅野健一、山口正紀。  7月1日に東京高裁「ロス銃撃事件」控訴審で、「実行犯」とされたOさんとともに無罪判決をかちとった三浦さんを迎え、例会史上最も多い約150人が参加した。まず、連絡会の山際永三事務局長が事件・裁判と支援の経過を報告。続いて三浦さんが、「文春連載」が始まって以降の報道被害、本人訴訟でそれと闘ってきた経験を中心に話し、主任弁護人の弘中淳一郎さんが、二審判決の報道に対する指摘の意味などを解説した。この後、山口世話人が二審判決と上告報道を分析、最後に浅野健一さんが、「ロス疑惑」報道との関わりから判決に対するメディアの反応などを総括的に話した。例会には、河野義行さんからの電話メッセージも寄せられ、浅野さんから披露された。


第137回 “海外報道の犯罪”2件報告

 人権と報道・連絡会の第137回定例会が9月7日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約50人が参加した。この日の報告は、(1)国連「子どもの権利委員会」での日本の高校生の発言をめぐる『週刊文春』などの捏造・歪曲報道、(2)「タイ・偽ドル事件」をめぐる「テレビ朝日」などの虚報・名誉棄損報道――の2つ。  いずれも海外での出来事を報道したものだが、取材者が最初から特定の意図をもって事実を歪曲・捏造したうえで記事・番組を作り、読者・視聴者に誤った情報・印象を与えた点で共通した問題をはらんでいる。「海外報道の犯罪」というべきメディアの暴力と、抗議を受けても無視する傲慢な姿勢に、例会参加者から厳しい批判の声が出た。


第138回 「新聞の危機」で討論

 人権と報道・連絡会の第138回定例会が10月19日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約50人が参加した。この日の報告は、「新聞の危機」をテーマに行われた。報告者は新聞労連委員長の服部孝司さん。  報道被害や読者の新聞離れ、再販制度、技術革新と人減らしなど、新聞が抱える深刻な問題点とその克服に向けた新聞労連の取り組みについて報告した。討論では、再販制度の是非、報道被害と技術革新の関係、新聞への不信感とジャーナリズムの役割などについて、参加者から活発な意見、問題提起があったが、報道被害に象徴される「新聞の危機」を克服するには、なによりもまず新聞労働者の自覚が必要であり、そのうえでの新聞労働者と読者のつながりの大切なことが確認された。


第14回・人権と報道を考えるシンポジウム成功

 《報道被害者が問う冤罪とメディア――甲山・「ロス疑惑」・松本サリン》をテーマに、人権と報道・連絡会主催の「第14回人権と報道を考えるシンポジウム」が11月21日午後、お茶の水スクエアC館で開かれ、約150人が参加した。  今年出された甲山事件差し戻し審、「ロス銃撃事件」控訴審の2つの無罪判決は、これらの冤罪共犯者になってきたマス・メディアの報道姿勢に根本的な反省を迫ったが、7月以降の和歌山カレー事件では、これまでの「犯罪報道の犯罪」をすべて再現し、さらにエスカレートさせた犯人視・悪人視報道が繰り広げられている。  シンポジウムでは、こうした状況を踏まえ、報道被害の当事者と新聞労連代表が、報道被害の実態とその防止・救済の方向について問題提起。会場の参加者からもさまざまな体験報告や提言が行われた。報道による人権侵害がいかに被害者を苦しめ、生活・人生を破壊し、取り返しのつかない被害をもたらすか。参加者の発言には、報道被害防止・救済制度の確立に向け、日本にも一日も早く報道評議会を設立しようとの思いが共通しており、その実現に向けてさまざまな意見が交換された。


第139回 和歌山カレー事件報道を検証

 人権と報道・連絡会の第139回定例会が12月14日夜、中央大駿河台記念館で開かれ、約50人が参加。この日の報告は「和歌山カレー毒物混入事件と報道」の捜査と報道の実態をテーマに行われた。報告者は木村哲也弁護士。  木村さんから事件発生以来の報告していただき、メディアによる「弁護士叩き」も含めて一連の報道の問題点を話し合った。木村さんは、(1)発生直後からの犯人探しの過熱報道、(2)捜査を先取りした夫妻に対する犯人視報道、(3)別件逮捕段階での実名による本件犯人視報道、(4)被疑者の黙秘権を否定する弁護活動非難報道――などの問題点を指摘。参加者からも、「ロス疑惑」報道の教訓や松本サリン事件の「反省」を完全に捨て去った今回の報道に対して、強い批判の意見が相次いだ。