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日本インドネシアNGOネットワーク
(JANNI)
〒110-0015
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丸幸ビル5階
Tel:03-5818-0507
Fax:03-5818-0520
E-mail: janni@jca.apc.org

『インドネシアの森は誰のもの?
〜違法伐採はなぜ起きるのか〜』

編集:岡本幸江(JANNI運営委員)
発行:日本インドネシアNGOネットワーク(JANNI)
2004年1月31日発行(84ページ)
A5(ブックレット)版
価格:1000円(送料:1冊200円)
(JANNI正会員割引:800円 ※ご注文の際にお知らせください。)

注文するには?
 地球規模での森林の破壊・消失が国際的に大きな関心を呼んでいます。
 そのなかでも熱帯林の伐採は、森林の消失による動植物種の減少、先住民の困窮、あるいは焼畑移動耕作民への非難、森林火災、プランテーション開発などの問題として国際的に取り上げられ、NGOなどによるキャンペーンも盛んに行なわれてきました。そして現在、森林問題のトレンドは「違法伐採」。中でもインドネシアはもっとも違法伐採が横行している国の1つにあげられています。
 なぜ違法伐採は起きるのか? 本ブックレットは、とくにインドネシアの国内問題という観点から、カリマンタンとスマトラの違法伐採の現場や、合法伐採・植林事業の現状レポートをもとに、違法伐採のメカニズムとその原因を分析しました。さらに、これまで行なわれてきた違法伐採対策や新たな持続的森林管理のあり方について述べた一冊です。
 ぜひご一読下さい。

目次

はじめに
インドネシア地図

第1章 インドネシアの森はどう扱われてきたか
インドネシアの森スハルト時代の森林政策/大規模森林開発政策の推進/低い貢献度/スハルト以降の改革/地方分権化と小規模伐採権/地域住民による慣習林での伐採/インドネシアの森林区分

第2章 違法伐採の現場を行く
カリマンタン:ケダン・パフ川流域/タンジュン・プティン国立公園/クタイ国立公園/続発する森林火災/グヌン・ポルン国立公園/スマトラ:グヌン・ルーサー国立公園/カラン・ガディン保護区/北スマトラ州ダイリ県/テッソ・ニロ/ブキット・ティガプル国立公園

Box. 1 パプアの森と国軍

第3章 違法と合法の狭間で
〜森をめぐるふたつの物語:マルガの森を食う産業造林〜
プロローグ/オフィシャル・ストーリー:森林の劣化と産業造林の導入/もう一つの物語:マルガによる伝統的森林管理/二つの物語の衝突:村落共有林の伐採と森林火災/エピローグ:森林をめぐる競合

第4章 違法伐採のメカニズムと対策
違法伐採とは何か/違法伐採のメカニズムとアクター/違法伐採が行われる要因/違法伐採対策への取り組み/新しい森林政策

Box. 2 なぜHPH保有企業は規定を守らないのか

第5章 違法伐採はなぜ起こるのか
森林住民による違法伐採はなくなるか/行政による違法伐採はなくなるか/国家政策としての森林開発/不正の問題/国による画一的な森林管理は改善されたか/地方分権化に関わる問題/地域住民主体のコミュニティ林業条例案/住民参加の中身/森は誰のものか

Box. 3 鉱山開発、天国と地獄のあいだ
Box. 4 中ジャワ州ブロラ県議会議長の挨拶

参考資料・引用文献・執筆者一覧
日本インドネシアNGOネットワーク(JANNI)とは


はじめに

 地球規模での森林の破壊・消失は、地球温暖化の原因の1つとして国際的に大きな関心を呼んでいる。中でも熱帯林伐採の問題は、過去には森林の消失による動植物種の減少、森の民とよばれる先住民の困窮、あるいは、焼畑移動耕作民への非難、森林火災、プランテーション開発のための森林伐採の問題が国際的に取り上げられ、NGOなどによるキャンペーンも盛んに行われてきた。そして、現在のテーマは「違法伐採」である。ここ数年、森林の問題に関して「違法伐採」という言葉が聞かれないことはほとんどないように思う。世界有数の熱帯林を有するインドネシアは、常にこういった問題に関連して取り上げられ、現在、もっとも違法伐採が横行している国の1つにあげられている。

 しかし、私は「違法伐採」という言葉に対して、何かしら腑に落ちないものを感じていた。その理由は2つある。
 まず、そもそも「何を指して違法伐採といっているのか」という疑問である。「違法」というからには、少なくともその国の法令に違反しているということだ。
 インドネシアでは、1960年代後半に森林の約90%を国有林に定め、国家による管理下に置いて以来、全国的に森林資源をめぐって地域住民と国や企業との間で紛争が絶えない状態になっている。それまで、何世代にもわたって森林内やその周辺に住む人びと(森林住民:Forest peopleと呼ばれている)は、慣習法とよばれる共同体独自の法規に基づいて、森林資源を利用し、生活を営んできた。彼らは国や企業が「違法」行為を行っていると非難する。逆に国や企業は住民が「違法」行為を行っていると非難するのである。したがって、「違法伐採」という時、その中身は立場(住民なのか、政府なのか、企業なのか)によって異なることが多い。
 さらに、インドネシアに多少のかかわりを持っている人なら想像できることだと思うが、違法と合法の境がよくわからないのである。森林分野に限らず、日常的に公的な証明書や文書の偽造は多いし、何よりも金を出せば条件を満たしていなくても証明書を手に入れることが容易な国である。そういう状況で、果たして違法と合法を明確に区別できるのだろうかという疑問がある。少なくともインドネシアの場合には、日本と違って「違法」か「合法」かの線引きがかなり曖昧であると感じている。
 2つ目の理由は、「違法でない(合法)伐採は問題がないのか?」という疑問である。先に述べたように、インドネシアでは国が森林管理を行ってきた。今日の深刻な森林破壊・消失の現状をみると、最近になって言われるようになった「違法伐採」という言葉だけでは片付けられない問題が横たわっていると思うのである。

 日本インドネシアNGOネットワーク(JANNI)は、これまでインドネシアの森林問題、とりわけ森林住民が伐採事業や産業造林事業、プランテーション開発などによって森を奪われ、生活に困窮するという問題を調査してきており、違法伐採はインドネシア政府のこれまでの開発政策がもたらした結果の1つであると考えている。インドネシアにおける「違法伐採」調査を行ってきて、ますます、このことを確信している。
 「違法伐採」の実態を調査してみると、やはり違法、合法を判定することが非常に難しい事例がたくさんあった。中でも本来、伐採権が発布できないはずの自然保護区などに伐採権が設定されている事例が少なくなく、「法を守るはずの政府自らが法を犯しているのか?」と困惑した。2003年6月に合意された日本・インドネシア二国間協力の中で、「違法伐採」の定義を明確にしていく作業が含まれている背景には、こういった状況があると思われる。
 たしかに、「違法」という言葉はセンセーショナルであり、法治国家を標榜している以上、生産国だけでなく、輸入国、輸入業者に建前上、違法な取引は拒否するという姿勢をとらせることはより容易である。その結果がインドネシア政府の違法伐採取り締まり(主に違法材取引や密輸)の強化や、日本を含めた多国間、二国間のさまざまな国際的な違法伐採対策にもつながっていると思う。
 しかし、その一方で、インドネシア政府が、「木材マフィア」による密輸や、業者に雇われた地域住民による伐採、あるいは拙速な地方分権化の結果、能力のない地方への権限委譲を違法伐採の主な要因としてあげる傾向があることには、素直に賛成できない。森林破壊の原因として「違法伐採」があげられるようになったのは、スハルト政権崩壊後のいわゆる「改革」の時代(1998年以降)であり、年間の森林劣化面積もこの時期以降、急速に拡大しているのは事実である。しかし、だからといって、こういった原因を取り除くだけでは、森林破壊を止めることはできないと思う。
 インドネシア政府(ここでは林業省)は、深刻な森林破壊に対する対策の1つに「森林の回復(復旧)」をあげている。2004年は「国民的な植林運動」を展開することにしている。この決定に対しては、誰からも異論はないだろう。しかし、ここで考えなければならないのは、実はインドネシアにおける植林事業は、これまで「社会林業」の一環として進められてきたし、産業造林事業(HTI)という大規模植林事業としても推進されてきたということだ。そもそも、伐採事業(HPH)においては、事業者には「インドネシア択伐植林方式(TPTI)」という伐採跡地での植林が義務付けられていたということを忘れてはならない。もし、これらの施策がきちんと実行されていたなら、インドネシアの森林破壊はこれほど深刻にはならなかったはずである。なぜ、これらの施策がうまくいかなかったのだろうか。その検証を抜きにして、新たな森林政策として「植林事業」を進めても、うまくいくとは思えない。単に対症療法的なものに終わっては、それこそ、インドネシアの森林の再生は「夢のまた夢」に終わるのではないかと思う。
 以上のことから、違法伐採対策には現在行われている国際的な取り組みと並行して、インドネシア政府がこれまでどのような森林政策を行ってきたのかをきちんと検証したうえで、インドネシアの森林政策やそれがうまく実施されるための提案を行うことが不可欠であると思われる。それによってインドネシア国内の取り組みだけでなく、インドネシアの違法伐採問題、ひいては森林の持続的な利用・管理にたいする国際的な支援はより実のあるものになると信じる。

 違法伐採の一因が、木材輸入国の需要の増加や合法性を問わない態度にあることも事実である。そういった観点から、木材や木材製品の国際的な取引における改善などの取り組みが進んでいる。しかし、このブックレットでは、この点については最小限しか触れていない。これらの情報やデータは容易に入手できるからである。日本の林野庁、環境省、外務省や、国際熱帯木材機関(ITTO)などの国際機関のホームページでも扱っている。NGOでは世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)、FoE Japan、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、ウータン・森と生活を考える会から入手できる。

 このブックレットではなぜ違法伐採が起こるのかを、とくにインドネシアの国内問題という観点から考察した。まず、第1章ではインドネシアの森の変遷、過去30年間の森林行政を中心に記述した。第2章では、カリマンタンとスマトラの違法伐採の現場を歩いたレポートと、情報が少ないパプアの状況を、さらに第3章では、合法伐採・植林事業の現状をレポートした。第4章は、これまでの違法伐採調査をもとに、違法伐採のメカニズムとその原因を分析し、これまでに採られてきた違法伐採対策や新たな森林政策について述べた。そして第5章では、なぜ違法伐採が起こるのか、2002年から2003年に出された林業省の施策を中心に、今後のインドネシアの森林問題を考察した。その結果、最終的には、「森は誰のものか?」という問題に突き当たったのだが、このブックレットでは十分に考察できたとは言いがたい。しかしながら、違法伐採というものがその国の法令に違反していることを根拠にしている限り、やはり、その国の森林政策をみていくことは重要だと思う。その意味で、本ブックレットでは、インドネシアにおける違法伐採、また持続的な森林管理のあり方に関する問題提起ができたのではないかと思う。

 最後に、本ブックレットの出版の意義をご理解いただき、資金面でご支援をいただいた財団法人イオン環境財団に、心からお礼を申し上げたい。

2004年1月

日本インドネシアNGOネットワーク(JANNI)
岡本 幸江


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