一九九×年の分断線上観光飛行船ガイド

(四百字原稿用紙・換算=37枚)
…………「世界」1996年2月号に発表。連作「冬の版画」の一葉を形成する。


 板門店を舞台に、歴史には、あるいは人間の「よき意志」が貫流しているのかもしれないという、人間の良心へのかすかな信頼を語る作品。東アジアの一角に第二次大戦後半世紀以上にわたって南北に「分断」されている国家の、その軍事境界線を、外国人のみが許されて観光するという俗悪極まりないツアー。そこに参加した日本人女性が、しかし得難い出会いを経験する。
 一方で、現在のエスニック的な「韓国」観にまで通ずる日本の近代アジア史における度し難いまでの責任を確認し、さらに美しいアジア史の幻を造形する。三人称と内在的な一人称とが複合した小説。【浅葱色表紙ノートから】


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