高橋哲哉さん(東京大学助教授)

 日朝学生有志という若い皆さんの取り組みでこういう会が実現したということで、大変勇気付けられる思いをしている。国立大学教職員としては今回の措置に反対する声明というものを出したが、この運動をさらに強めていきたいと考えている。

 この問題について私自身のとらえ方を、3点ほど話したい。

 個人的なことだが私は1956年に生まれた地方の3人兄弟で、大学に行くのであれば学費がないので私立はダメだと親からずっと言われ続けてきた。そして当たり前のようにしてとくに何も問題を感じることなく国立大学を受験し、学生になり、そのまま大学院に進み国立大学の教員になったのだが、考えてみると、私が朝鮮学校卒業生の誰かの場所を奪っていたのかもしれない。つまり、私の代わりに朝鮮学校卒業生が国立大学に入り、大学院に進み教員になるという可能性があったのかもしれないわけだ。

 1度気がついてしまえば、これは誰が見ても明らかな民族差別だということははっきりしている。さらに今回のように欧米系はいい、その他はダメだというのは人種差別、レイシズムだ。今時日本の文部科学省がこんな考え方をしているというところにやはり強い憤りを感じざるを得ない。断固としてこれを撤回させ、国立大学をすべての人に開放するようにしなくてはならない。

 このことが人種差別、民族差別であるということは、歴史的背景についての知識がなくてもまともな人間的感覚を持っていれば誰にでも分かることだと思う。しかし同時にこれは、戦争責任というカテゴリーではとらえられない日本の近代、戦前戦後を貫く植民地主義の問題だということも言える。戦後ずっと残ってきた民族学校、外国人学校に対する差別というのは、戦後も残ってしまった日本の植民地主義そのものだと私は考えている。制度的にそのような植民地主義が残っていたということをふまえて、日本の植民地主義の清算という非常に大きな問題の中でこの問題も考えていく必要があるのではないか。

 3点目には、今回の文科省の決定というのは、もちろん昨年の9・17以後の日本社会の状況と大きな関係がある非常に政治的なものだと思うが、それと同時に、今の日本の教育全体がどのような方向に向かって動いているかということについても注目していかなければいけないと思っている。

 98年に戦後7回目の学習指導要領改定が実施され、ここで初めて愛国心、つまり国を愛する心情と日本人としての自覚を育てるという目標が入った。その翌年に国旗国歌法が成立したというのは周知の通り。さらに2002年度の4月から注目すべき動きが学校現場で起きているのだが、そのひとつとして福岡市の69校におよぶ小学校で子どもたちの愛国心を3段階で評価することが始まっている。おそらく全国的に起きているのではないかと思うが、こういう形の愛国心教育が始まっている。つまり、教育における排外主義が小中学校の普通教育の中で制度化されようとしているのだ。それを完成させるのが、現在議論になっている教育基本法の改正だ。教育基本法に愛国心教育が入ることになれば、日本の教育全体が大きく変わってくる。

 外国人学校卒業生の大学受験資格差別と同じ排外主義が、方や公教育の内部でも制度化されていく。こうした教育全体の動きの中でこの問題をとらえていくことも必要ではないかと思っている。

(集会発言をテープ起こししたものです。文責は院内集会の実行委員にあります。無断転載・引用を禁じます。)


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