NHK ETV2001 シリーズ「戦争をどう裁くか」
番組改編に関する事実経過の確認

2001年3月2日

「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク
(VAWW-NETジャバン)

 1、ETV2001シリーズ「戦争をどう裁くか」第2回番組に関する調査

  私たちVAWW-NETジャパンは、私たちが実現してきた「女性国際戦犯法廷」(以下「法廷」)を報道した、貴協会のETV2001シリーズ第2回「戦争をどう裁くか」(2001年1月30日放映)について(本件放映)、右翼をはじめとする外部からの不当な圧力のもとに、番組内容が再三にわたり大幅に改編されたのではないか、との問題意識をもってこの間本件放映をめぐる事実関係を調査してきました。私たちの調査の対象は、番組関係者や右翼団体の言動や出版物など多岐に渡りますが、その中には、貴協会の番組制作局制作主幹遠藤絢一氏、同局教養番組部部長吉岡民夫氏、貴協会とともに本件放映の制作に関わったNHKエンタープライズ21社(NEP)の制作本部スペシャル番組部部長島崎素彦氏、制作本部担当取締役座間味朝雄氏などの方々が含まれています。

 以上の調査に立って私たちVAWW-NETジャバンは、本件放映について以下のような経過で改編が加えられた事実を確認いたしました。なお、以下の事実経過に訂正すべき事実あるいは追加ずべき事実があれば、それを指摘していただくことは、私たちVAWW-NETジャパンとしても、真実の更なる究明のために望むところであることを申し添えます。

2、本件放映に対する右翼等の外部からの圧力と改編の事実

(1)本件企画の内容

 本件放映は、「人道に対する罪」をテーマとする4夜連続シリーズの1話として作成されることが、昨2000年11月16日頃までに、貴協会、NEPおよび制作会社ドキュメンタリー・ジヤバン(DJ)の担当者らの間で決められました(本件企画)。その4回シリーズの中で、私たちVAWW-NETジャバンが関わる「法廷」については第2回目、また武力紛争下の性暴力に関する国際公聴会については第3回目の企画として取り上げられていました。

(2)「法廷」の取材と右翼の抗議

 「法廷」および・国際公聴会は、同年12月8日から12日にかけて九段会館等で成功裏に開催され、私たちVAWW-NETジャバンは、本件企画のための取材について全面的に協力いたしました。その結果、本件放映のVTRは、制作会社において同年12月25日頃までに編集を完了し、同月27日までには本件企画に対談者として出席した高橋哲哉氏と米山リサ氏が、VTRを観た上でのコメントの収録が貴協会の横浜青葉台のスタジオで終了いたしました。この時点での本件放映のVTRには、「法廷」の主催団体名、「法廷」で行われた元加害兵士の証拠そして天皇を人道に対する罪で有罪と判断した判決の事夷や内容に関する場面が収録されていました。

 他方で、貴協会による「法廷」に関する直後の報道に対しては、右翼団体の抗議が繰り返されていました。具体的には、12月8日の「おはよう日本」のニュースでなされた「法廷」に関する報道、12日の7時のニュースでの「法廷」とその判決に関する報道に対し、行われました。こうした右翼団体による貴協会への抗議行動は、本件企画が公にされるにつれて「法廷」に関する放映の中止を求めるものとして激しさを増していきました。

(3)本件放映の改編の事実と右翼の激しい抗議

 そのような状況の中で、本年1月19日、貴協会の教養番組部部長や担当部長は、本件放映VTRの試写を実施し、「法廷」で行われた元加害兵士の証言の削除を含む、編集のやり直しを指示しました。加えて、同月24日の試写において同教養番組部部長は、再度の手直しを指示し、すでに高橋氏や米山氏の対談コメントを収録済みのVTRに対し、急濾、秦郁彦氏のコメントを収録することを決め、翌26日に取材申し込みを行いました。その上で、貴協会の担当者は、NEP及びDJの担当者を外した上で、本件放映について第3回目の手直しを実施しました。

 この頃、右翼団体の機関紙等は、ΓNHK反日番組に抗議デモ」という見出しで、27日および28日における番組放映に抗議するためのNHKに対する抗議行動が呼びかけられ、実際に27日午前には、「維新政党・新風」が約30名で4階正面玄関に押しかけて放映中止や担当者との面会を求め、午後には「大日本愛国党」が約20名で貴協会の建物内に乱入するという事態かありました。また、「維新政党・新風」Γ日本世論の会」「大日本愛国党」などの街頭宣伝車か貴協会建物の周囲で抗議行動を繰り返しました。翌28日においても右翼団体の5台以上の街頭宣伝車が西口玄関前まで突入し、本件放映の中止を要求し続けました。さらに、この両日ごろからNHK代表電話のみならず、担当者や関係者の直通電話あるいは自宅に対し、番組の中止を求める電話が放映当日まで練り返されるようになりました。

(4)秦郁彦氏のインタビューと「法廷」に関する諸事実の削除

 1月28日には、上記秦氏に対するインタビューが実施されたが、同氏は、「法廷」が裁判長も首席検察官もアメリカ人であったこと、韓国側検事が弁護人をつけないことを求めたことなどの同氏の主張を編集段階でカットしないことを貴協会に確約させて、インタビューを行いました。このインタビュ一の後、本件放映については貴協会においてさらに手直しが加えられ(第4回)、同日深夜、制作局幹部の参加のもとで本件放映の試写か実施されました。本件放映の手直しは、1月29日から放映当日の1月30日直前まで行われました。そして、1月28日以降の貴協会による手直しの中で、本件放映のVTRから「法廷」の主催団体名、「法廷」で行われた元加害兵士の証言、そして天皇を人道に対する罪で有罪と判断した判決の確実や内容に関する場面が、削除されました。本件放映も他の3回分に比べて、放映時聞か4分足りないなど異常な形態となりました。

3、今回の番組改編の問題点

 以上のような経緯で貴協会が行った改編には、報道の自由と番組の公正性・中立性の観点から重大な問題が存在ずると言わざるを得ません。

 第1に、貴協会か繰り返される右翼団体などによる番組中止圧力の中で、再三の番組改編を繰り返し、当初放映を予定していた「法廷」に関する主催団体名、「法廷」で行われた元加害兵士の証言、そして天皇を人道に対する罪で有罪と判断した判決の事実や内容に関する場面を削除していった事実は、報道の内容を外部の圧力によって改編するという、報道機関にあるまじき行動です。私たちVAWW-NETジャバンは、このような事態が、実際に発生したことに報道の自由と番組の公正性・中立性の観点から、重大な憂慮をせざるを得ません。

 第2に、本件放映直前になって収録編入された秦氏のインタビューについては、本件放映に登場する他の対談者やコメンテーターが、秦氏のインタビューの存在すら知らないもとで、あたかも対応するコメントのように秦氏のインタビューの前後に配置されているもので、それは編集の手法として奇妙であるのみならず、公正さを欠く編集手法といわざるを得ません。また、コメントを削除しないことを条件にインタビューを実施する行為は、報道者の編集権と自由とを放棄するものです。このような行為が上記の右翼団体の圧力の結果なされたとすれば、そのこと自体が報道の自由と番組の公正性・中立性を損なう行為と言わざるを得ません。

 第3に、本件放映については、右翼団体のみならず、自民党をはじめとする政治勢力が、貴協会の放送への公的規制を強める口実とする動きがありますが、今回の本件放映における貴協会の対応は、まさにそのような規制や介入に迎合する結果となるのではないかという懸念を持っています。

 以上の事実を確認するとともに番組改編に対する抗議を行うものです。

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