署 名 者 御 一 同 殿 平素より、NHKの放送番組につきましては、格別のご理解、ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。 さる六月九日、NHK教育テレビETV2001「シリーズ戦争をどう裁くか」第2回「問われる戦時性暴力」(平成十三年一月三十日放送)に関する、NHK会長宛ての「わたしたちの見解と要望」を受領、拝読させていただきました。 およそ三千人に及ぶ方々からの、番組に対するご意見・ご署名を、公共放送として厳粛に受け止めました。 当該番組を所管する番組制作局の責任者である小職より、ご意見に対するNHKとしての考え方をご説明申し上げます。 はじめに、公共放送機関としてのNHKの基本的な立場について、申し上げます。 あらためて申すまでもなく、NHKの使命と責任は、全ての国民の基盤に立つ公共放送機関として、豊かで、質の高い放送を行うことにより、公共の福祉の増進と文化の向上に最善を尽くすことにあります。そのためには、何人からも干渉されず、不偏不党の立場を守って、放送による言論と表現の自由を自ら確保しなければなりません。 この前提に立ち、NHKは、常に自らの責任と判断において番組を企画し、編集し、放送するという基本姿勢を貫いてまいりました。 さて、今回ご指摘をいただきました番組は、ETV2001「戦争をどう裁くか」の四回シリーズの第2回として放送したものです。
二十世紀に繰り返されてきた戦争や紛争の中で起きた、様々な人権侵害や犯罪行為を「人道に対する罪」という国際法の枠組みの中で検証し、未来に向けた和解を実現しようという取り組みが、世界各地で始まっています。 今回のシリーズは、世界各地の和解への取り組みを紹介し、様々な見解の対立を踏まえた上で、それを乗り越え、共生を実現するための手ががりを探ろうという意図で企画いたしました。 シリーズの第2回は、「人道に対する罪」をめぐる世界の動きや第二次世界大戦中のいわゆる「慰安婦」問題の歴史的経緯とともに、昨年十二月に開催された「女性国際戦犯法廷」の問いかけるものを紹介し、その上で、日本とアジア諸国が、どのようなプロセスで和解を目指すべきなのかを考えようとしたものです。 今回の番組についてのこうした企画意図および編集方針は、NHKが自らの責任と判断において、昨年十一月に決定したものです。この編集方針は、先般の放送にいたるまでの間、一貫して変わっておりません。 番組の制作は、部内で定めた番組編集上の基本的指針である「国内番組基準」にのっとって行いました。「国内番組基準」には、たとえば、「意見が対立している公共の問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにし、公正に取り扱う」という指針が示されています。今回も、この指針にのっとり、番組制作を実施したことは申し上げるまでもありません。 制作に当たりましては、公正で最善の内容をめざし、様々な議論を重ね、放送の直前まで構成内容の検討と編集作業を継続いたしました。番組は、最終的にNHKとして責任をもって放送したものです。 繰り返し申し上げますが、NHKは、公共放送機関として、公平かつ公正の立場に立って、何人からも干渉されず、常に自らの責任と判断において企画し、編集するということを基本としております。したがって、当然のことながら、今回の番組制作過程において、特定の団体等の圧力によって、編集方針や放送内容を変更したというようなことは断じてありません。 今回の番組に対しましては、視聴者の皆様から、番組のねらいをよく理解できたとのご意見も多数いただきました。番組をとおして、 「戦時性暴力」「人道に対する罪」という世界のうねりとなっている今日的課題について、多角的に紹介し、視聴者の判断材料を提供できたのではないかと考えております。 番組の出演者の方々や取材に協力してくださった方々との関係についてでございますが、公共放送機関として、これらの方々との信頼関係が番組制作にあたっての大前提であり、常に誠実に、また率直に接することが大切であると認識しております。 今回、取材・制作の過程で、出演者の方々や取材に協力してくださった方々に対し、NHKとしての番組の編集方針や構成内容が十分に伝わらなかったとすれば、この点はまことに申し訳なく、これらの方々には、心より遺憾の意をお伝えしてまいりました。 今後とも、番組制作にあたっては、出演者の方々や取材に協力してくださる方々との意思疎通、信頼関係の維持に、格別の努力を払うよう、組織内にあらためて徹底する所存でございます。 以上、「私たちの見解と要望」に対し、NHKとしての考え方をご説明申し上げました。 NHKはこれまで、戦争と平和という人類共通の課題をテーマにした、数多くの番組を放送してまいりました。地球上で繰り返されてきた戦争や紛争がどのように引き起こされ、どんな結果をもたらしたかについて事実を多角的に検証し、視聴者に考える機会を提供する番組を、今後とも制作・放送していく所存です。 なにとぞご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。 NHK番組制作局長 平成十三年 六月二十九日 |