読む・視る

今年の8月5~6日は広島におりました。

松岡 勲


 

 

 今年(2014年)の3月に被爆者で語り部の佐伯敏子さんと28年ぶりに再開しました。その後、佐伯さんの被爆体験を朗読劇として演じ続けている「伝の会」の寺西郁雄さんともお会いできました。そして、「伝の会」の寺西さんたちとご一緒して、8月5日に再度佐伯さんを訪ね、夜の原爆供養塔前での朗読会にも参加しました。

佐伯敏子さんを再訪 

 8月5日、高速バスで広島に到着し、タクシーで佐伯さんのおられる老人健康施設「ウエル・フェア」に向かいました。その施設で「伝の会」皆さん(寺西さん、三原和枝さん、井口卓也さん、加堂貞幸さん)と合流し、佐伯さんとお話ししました。佐伯さんは「目は見えないけれど、耳が聞こえるのは幸せです。こうしてお話しができるのですから。」とおっしゃられ、この前に私がひとりでお会いしたときよりもよく語られました。このような人の訪れで、佐伯さんは記憶と意識を覚醒をされるのだなと思いました。とくに14年間も佐伯さんの体験を(佐伯さんに成り代わって)語られてきた三原和枝さんとの応答は、佐伯さんの気持ちと触れあっていて、大変生き生きとしたものでした。また、偶然なことに「伝の会」の加堂貞幸さんは昔(大阪府同和教育研究協議会の事務局にいた頃)に知り合った人でした。彼の先輩にあたるTさんともその後連絡がつきました。佐伯さんのお導きだと感じました。

供養塔前での朗読会

 その日の夜、原爆供養塔前での「伝の会」の朗読会に参加しました。あいにくの雨模様の天気でしたが、朗読劇「広島には歳はないんよ」が約2時間かけて上演されました。ナレーションは井口さん・加堂さんで、佐伯さんの語りは三原さん、演出は寺西さんで深深と夜が更けるなかで語られる佐伯さんが13人の家族を亡くされた被爆体験が参加者の心に響きました。佐伯さんとの再会、「伝の会」のみなさんとの出会いを幸せに思いました。

6日の広島は「涙の大雨」だった。

 6日は朝から大雨で、慰霊祭に雨というのは47年ぶりだとニュースで言っていました。安倍首相の集団自衛権容認の閣議決定への広島の被爆者の怒りと悲しみの雨と思いました。慰霊祭には行かず、広島市現代美術館でやっている「ドリス・サルセド展」を見ました。ドリス・サルセドは南米コロンビアの現代美術作家で、内戦と暴力で亡くなった人々を悼み、現代世界の暴力支配を静かに告発するインスタレーションでした。実際に来ていた作品は「ア・フロール・デ・ピエル」「プレガリア・ムーダ」の2作品でしたが(他は写真展示)、深く訴えるものがあえいました。特に拷問で亡くなった1人の行方不明の女性に捧げられてた「ア・フロール・デ・ピエル」には強い感銘を受けました。無数の薔薇の花びらを糸で縫い合わせた作品で、深紅の色に死者の血の色を感じました。
 午後は広島市映像文化ライブラリーで「ドキュメント8・6」(新藤兼人、1977年中国放送作品)を見ました。新藤兼人がインタビューアーで、被爆者の聞き取りをする映画ですが、その真摯な姿勢はさすがだなと思いました。特に印象深かったのは原爆小頭症患者の聞き取りでした。また、原爆投下のB29の指揮官に会うためにアメリカまで出かけ、肉薄しますが、不成功に終わります。そのドキュメンタリー精神には感服しました。この映画は以前見ていた作品でした。 

 その後、雨もあがったので開催できた「アオギリ平和コンサート」を聞きました。被爆したアオギリの木の横での被爆ピアノコンサートで、私の中学校時代の友人が熱心にサポート活動をしています。その同窓生汐谷恵美子さんとコンサートで落ち合いました。今後、彼女の活動を応援していくつもりです。
 今回の広島行で広島在住の「ヒロシマノアール」「ヒロシマ独立論」の著者東琢磨さん、それと知人の広島平和記念資料館の学芸員をしていいるFさんとも会うことができ、大変収穫の多い2日間でした。 

読む・視る

書評・映画評・教育時評・報告を掲載します。

学校訪問

これまで管理人(松岡)が取り組んだ学校訪問・学校間交流の記録です。

旅の記憶

これまで管理人(松岡)が出かけた旅の記録です。