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(書評)戦争をどうとらえるかの本、1950年代論の本 


 

 

1)『戦争と日本人/テロリズムと子どもたち』(加藤陽子・佐高信)

 加藤陽子・佐高信著『戦争と日本人/テロリズムと子どもたち』(角川oneテーマ21新書)を読んだ。加藤陽子さんは評判になった『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』の著者で、佐高信さんはみなさんもよくご存じの評論家で、この対談は大変おもしかった。「はじめに」にあるように、この本は「多様な日本人イメージを過去に探ることで、過去・現在・未来の日本と日本人のあり方について、語り合おうと思った」ものであり、副題の「テロリズムと子ども」は「義憤や短慮から、暗殺・テロ・クーデターを引き起こしてしまう、その気性のありか」をさしており、「そのよう「子ども」たちを生み出さない、産み落とさない社会を祈念して書かれた」ものである。おふたりの対談は、実によくかみあっており、戦争と平和に関する近現代史への興味をかきたててくれ、おすすめです。読後、本の山をひっくり返して買っていた加藤さんの『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)、佐高さんの『西郷隆盛伝説』『福沢諭吉伝説』(角川学芸出版)を取り出し、また佐高さんの『石原完爾 その虚飾』(講談社文庫)をあらたに購入した。読んで見ようと思う。

<目次>
はじめに 多様な日本人イメージを近現代史に探る 加藤陽子
序 章 世の中をどう見るか?/歴史に対する眼の動かし方
第1章 政治と正義/原敬と小沢一郎に見る「覚悟」
第2章 徴兵と「不幸の均霑」/「皆が等しく不幸な社会」とは
第3章 反戦・厭戦の系譜/熱狂を冷ます眼
第4章 草の根ファシズム/扇動され、動員される民衆
第5章 外交と国防の距離/平和と経済を両立させる道を探る
第6章 「うたの言葉」から読み解く歴史/詩歌とアナーキズムと
終 章 国家と私/勁く柔軟な想像力と、深き懐疑を携えて
おわりに 歴史と日本人 佐高信

2)『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(加藤陽子)

 加藤陽子著『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)を読んだ。この本は加藤陽子さんが東京の私立中高校の生徒に行った授業をまとめたものである。対象は日清戦争から太平洋戦争までの時期で、「はじめに」で、「(1)9・11テロ後のアメリカと日中戦争期の日本に共通する対外認識とはなにか、(2)膨大な戦死傷者を出した戦争の後に国家が新たな社会契約を必要とするのはなぜか、(3)戦争は敵対する国家の憲法や社会を成立させている基本原理に対する攻撃というかたちをとるとルソーは述べたが、それでは太平洋戦争の結果書きかえられた日本の基本原理とはなんだったのか、などの論点を考えて見ました。」とあるように、現代と戦争の「根源的な特徴」を見る視点で授業は構成されている。このような授業を受けた中高校生は幸せだなと思い、本を読んでいるうちに生徒の側にいる自分を発見した。先日、戦争と社会学研究会の第2回研究大会にはじめて参加し、その報告を聞き新鮮な気持ちになったが、今後、「戦争と記憶」問題(私の場合は靖国神社と戦争の記憶問題になるが)をじっくり考えていこうと思っている。

<目次>
はじめに
序 章 日本近現代史を考える
第1章 日清戦争/「侵略・被侵略」では見えてこないもの
第2章 日露戦争/朝鮮か満州か、それが問題
第3章 第一次世界大戦/日本が抱いた主観的な挫折
第4章 満州事変と日中戦争/日本切腹・中国介錯論
第5章 太平洋戦争/戦死者の死に場所を教えられなかった国
おわりに
参考文献
謝辞

3)『1950年代/「記録」の時代』(鳥羽耕史)

 鳥羽耕史著『1950年代/「記録」の時代』(鳥羽耕史)を読んだ。「1950年代」を「記録の時代」として、生活綴方、サークル詩、ルポルタージュ絵画、テレビドキュメンタリー、「闘争」の記録等の運動を跡づけ、現代につなげて「50年代像」を再構成する非常に興味深い本だった。最終章の<「記録」を現実をどう変えたか>の論述に現在を見る著者の確かな視角が感じられた。この本を読んだ動機は、今私が追求している「1950年代の靖国神社遺児参拝と靖国文集」をどう捉えるかの関心にあった。この本は自分の関心を深める栄養分となったと思う。再度、靖国合祀取消訴訟の書面、書証(特に国会図書館の靖国資料)に戻って、考えて見ようと思う。

<目次>
第1章 「記録」としての1950年代
第2章 サークル運動と生活記録
第3章 「記録」のアバンギャルド
第4章 ドキュメンタリーとしてのテレビの始まり
第5章 「闘争」の記録/「記録」の闘争
第6章 「記録」は現実をどう変えたか
あとがき

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