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(書評)『子どもが<少国民>といわれたころ/戦中教育の裏窓』(山中恒) 


 

 

 山中恒著『子どもが<少国民>といわれたころ/戦中教育の裏窓』(朝日選書)読んだ。15年戦争当時、<少国民>とされた少年少女たちの聞き取りが詳細になされた本だった。この本は、1979年に刊行され、1982年に選書に入ったのだが、少しも古びず、アクチュアルである。友人に僕が学生時代に作家いいだ・もものフアンだったと知らせた時に、「靖国神社の集団奉仕で朝に掃除をしている所で東条首相に声をかけられ、それが新聞に載せられ、当時の東条首相のPRに使われた少女がいた。その少女がいいだ・ももさんの奥さんだったことを知っていますか」と聞かれたことがあった。その話が冒頭近くに載っている。多くの事例があげられ、少国民<錬成>の「しごき」をかけられたた子どもたちの悲惨な実態が明らかにされ、教師の罪が浮き彫りになる。
 最初の「<銃後綴り方集>の冒頭を飾った少女」を読み始めたとき、丁度、靖国遺児参拝について調べていた所なので、この本を「たまらなくおもしろい」と思った。「これ(綴り方の書き手の現在から当時を聞き取ること)を僕の仕事にしよう」と思いいたった。それは「靖国文集の書き手のその後」を聞き取ることをこれからの僕の仕事としょうということだ。この仕事を僕のライフワークにしようと思った。5年、10年はこれをやっていけるなと視界が広がった。この本を読み終わって、その気持ちを強くした。

<目次>
<銃後綴り方集>の冒頭を飾った少女
父の応召、母の死。銃後を守った少女
国民学校最初の日本一健康優良の少年
戦艦武蔵で死線を越えた海軍若年兵
東条首相のPR作戦につかわれた少女
キャベツを持ち首相官邸を訪れた少女
「欲しがりません勝つまでは」の作者
同窓会への出席を拒否続ける元訓導
「漁村」をえがいて文部大臣賞の少女
陸軍幼年学校で敗戦を迎えた星の生徒
空襲下の放送局で歌い続けた童謡歌手
「家のほまれ」と父を讃えた作文少女
『特高月報』に名のある替え歌の少年
報道写真で錬成を演じさせられた少年
機銃掃射で目の前の父を殺された少女
<座談会>集団疎開を語る
/再び<少国民>と呼ばせないために
あとがき
<朝日選書>版へのあとがき 

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