都立三田高校事件第二回公判

〜弁護側冒頭陳述〜

古澤英樹(99・7・5)



三 田 高 校 爆 発 物 事 件 な ど は 「あ り 方 検 」路 線 阻 止 が 狙 い 

 都立三田高校に爆発物をおいた事件、教育庁次長宅に爆発物の様なものを破裂させた事件などの一連の事件は、広尾高校教諭であった松村高太郎さんが、都教委の「あり方検」路線攻撃をなんとしてでも阻止しようとかりたてられておこした。それが一番の狙いと、弁護側が第二回公判(7月5日)で冒頭陳述した。

 松村さんは正義感が強く、広尾高校でも、自分の保身しか考えない管理職なかでも松村勇教頭(現都立一橋高校校長)を追及していた。同教頭は、広尾高校在職中、組合員である出世志向の教員に、職場会の討議内容を密告させたり、松村さんの数学の授業を二度も監視するなど、管理職として目に余る言動で、教職員の顰蹙(ひんしゅく)を買い、当時の内規に定める職員会議における信任投票では、信任1、保留1、不信任38という有様であったが、都教委は97年度に校長に昇格させた。その松村勇校長は、一橋高校で「あり方検」路線を強硬に貫徹し、職場を混乱させた。都教委はどういう人物が校長として望ましいと考えているか、推測できる好例である。

検察側は、松村教諭の数学の授業は“手抜き"であり、その為「特昇はずし」にあってそれを恨み、2000年度の人事異動でも著しい不利益をうける可能性が強いので、それを阻止しようとして、犯行にでた、と冒頭陳述(第一回公判)で主張した。

 松村さんは、広尾高校着任3年目に、数学科の同僚たちから、授業のしかたについて非難された。==数学の理論面を深く教えず、==授業中生徒が遊んだりしていても注意しない、==教師が問題を解いて模範解答すべきなのに、生徒に問題を解かせているということ、これらは、仕事の手抜きだというのである。

 これは松村教諭にとって心外であった。これまで生徒からそのような苦情も出ず、他の数学教諭のクラスと比較して担当クラスは定期考査で劣っているわけでもなく、実力テストの高得点者も多かったのである。松村教諭は反論した。==理論的に深く追求すると生徒は興味を無くすから、いわば体験学習的に生徒が自ら考えるようなものに切り替えたほうが効果的である。==生徒を威圧してがんじがらめにするような指導は好まない。ある程度のゆとりがあったほうが生徒は活気を出す。==教師がやってできるのは当たり前。問題は生徒が自分で解かないと意欲も実力もつかない、と。

 これに対し、上昇志向の数学科の一部教師は担任するホームルームで公然と非難して、松村教諭低評価定着を目論んだ。だが、教師として絶対に許されないのは「子供や父母達の前で他の教師の悪口を言っていけない」ということである。松村教諭が逮捕されたあと、どうして「悪い授業ぶりだ」などというのだろうか。先生の授業はよかったし、質問にもきちんと答えてくれていた。私が証言台に立ってもいい、松村先生の授業をうけたのは生徒ですから、ときっぱり話す生徒の存在を、広尾高校の管理職、数学科教師、検察側はどう見るのだろうか。

 松村さんは、子供志向型の色々なタイプの教師が同じ教育現場の同僚として、指揮・命令という縦の関係でなく、横の関係で「ヨコ社会」としての職員会議を中心に教育の問題点を話し合っていくのがよいと考えていた。このヨコ社会は上昇志向型の教師にっては悪平等の社会に見えて住みにくい環境であろうと思われる。上昇志向型教師は校長・教頭の意を体して同じ職場の意にそぐわない教師を排斥したり、教頭・校長・教育委員会という縦の上下関係をもたらし、競争原理に支配されていく。

これこそ、「都立学校等あり方検討委員会」の答申の基本であり、それに基づいて昨年7月に都教委が改悪した「公立学校管理運営規則」に見出せる職員会議の補助機関化と主任中心に学校全体の運営を企画立案する企画調整会議の設置であり、「成績優良者特別昇給」というアメであろう。

 後者についていえば、広尾高校の安食校長は、いわゆる「輪番制」を無視し校長に逆らう教員は排除し、覚えめでたい教員には特昇を与えていた。 昨年10月の都教委の通達に基づき、同校長は「広尾高校管理運営規定」を策定し、12月の職員会議に提示したが教員の賛成者はゼロであった。主任が所管の企画・立案のみならず、学校全体の運営について企画・立案するというのは、その職務に反するのではないか、という矛盾の指摘があったにもかかわらず、これに対する明確な答えなしに、校長は都教委と協議の上というか、端的に言えば都教委の指示通りに同規定を決定し、99年1月1日から施行されることになった。これにともない、従来の内規を破棄して、新しい「校内内規」を定め、1月20日の職員会議に提示した。その内容について、特に校内人事の説明が中途であったにも拘わらず、校長は人事希望をとりだし、希望を出さない者は校長に一任したとみなした。 そして、“主任は分掌内の教職員の意見を参考に定める"とみずから規定した校内規定に反して、都教委に具申を要する教務・生徒指導・進路指導の3主任をみずから指名した。(教務・生徒指導主任はいずれも、校長の覚えめでたい上昇志向型の人物であった)。教職員から、校内規定違反を追求されるやいなや、校長は開き直って「では、その規定は削除します」と発言した。その独断専横ぶりに憤激した教職員は、動議を出して職員会議を閉会した。

 そして、卒業式では、校長は「日の丸」について、都教委の通達どうり、始業時から終業時まで掲揚した。 「あり方検」報告書以来、広尾高校の教頭がいみじくも比喩的に「憲法が変わった」といった大変革が着々と実行されて、ついに松村さんが在籍した広尾高校にその全てが押し寄せてきたのであるが、これらは全て、松村さんが良しと考え、また長年の間定着してきた「職員会議」を中心とした平等な関係にある教員の「ヨコ社会」としての教育現場が、都教委→校長→教頭→主任→平の教員という縦の権限系列の「タテ社会」化するものである。
 
 これを迎える松村さんは、教員全体の中の一員としての異議をなんらかの形で表し、「あり方検」路線による耐え難き変革を少しでも押し止どめたいとの焦りに似た想念に取り付かれて行った。そして、一人で出来る効果的方法としては、爆発物の使用しか思いつかなかった。
 
 3月12日、三田高校長の机上に振動型爆発物をおいたものの、発見され、校門まで逃げたが、無関係の職員に害がおよんではと思いかえし、逃走せずに、爆発解除に戻ったところを取り押さえられた。 爆発解除の方法を松村さんがくわしく説明したにもかかわらず、警視庁爆発物処理班は、液体窒素で凍結処理し、そのため校長机上のビニールマットが50センチほど盛り上がり、爆発物が爆発した。ところが検察側はこの爆発は松村さんが行ったものだと主張する。この相違は、この裁判の大きな争点で、次回公判(8月25日[水]2時30分、東京地裁510法廷、裁判所合同庁舎内、地下鉄霞ヶ関・桜田門下車)で、警視庁爆弾処理班の責任者を証人によぶ。夏休み中ですが、ぜひ傍聴においでください。


「松村高太郎さんの問題を考える会」( 代表 古澤英樹[都立広尾高校教諭])

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☆裁判闘争が始まり広報のための郵送料は赤字支出の状態です。入会・カン パをお願いします。(会費 1年 1千円)。
 郵便振替口座「松村高太郎さんの問題を考える会」00520-1-13747
 

 期末の成績処理でお忙しいことと思います。松村さんの裁判は第二回公判で弁護側からの冒頭陳述が行われました。一回目の検事側冒頭陳述は、マス メディアが報道しましたが、第二回弁護側冒頭陳述を取材にきたのは一社のみで、TV・新聞には載りませんでした。この報道姿勢は公正さを欠くものだといわざるを得ません。できるだけ多くの方に真相を知ってもらいたいと思っています。そこでお願いですが、お手数をおかけして恐縮ですが、上記原稿をお知り合いの方に配信いただければ幸いです。 よい夏休みをお過ごしください。( 7月11日 古澤 英樹)