都立三田高校事件初公判

〜検察側三流週刊誌なみ(?)の冒頭陳述〜

古澤英樹(99・6・8)



 1990年代末の学校教育の状況は、戦後の学校教育史上の大きな転換点になるものだと思われます。

 たとえば、東京都立高校では、長年にわたって学校現場が民主的に運営されているかどうか点検をし、主任制度を空洞化させ、教職員が平等に出席する職員会議中心の学校運営がなされてきました。ところが、1998年7月、東京都教育委員会は「公立学校管理運営規則」を改悪し、職員会議は校長の補助機関、校長の下に主任層で構成する企画調整会議を設置するなど、教育委員会→校長→主任→平教諭のヒエラルキーつくろうとふみこみました。

 大阪府でも1999年3月末、府立高校(小中学校は4月1日)などの「公立学校管理運営」を改悪し、職員会議は校長の「諮問機関」、校長・教頭・主任が一体になった「運営委員会」で、学校全体の企画・運営し、職員会議を伝達機関化しようとしています。

 これらの動きは、日米戦争協力法(周辺事態法)、盗聴法、「日の丸・君が代」法制化等の一連の政治状況と軌を一にしているとみて間違いなさそうです。

 松村高太郎さん(都立広尾高校元教諭)は、都教委の公立学校の管理強化におおきな危機感を抱き、「自分ひとりの力でもなんとしても押し戻さねば…」と思い、都立三田高校の校長室に爆発物を置くなど一連の直接行動にでました。彼の直接行動が、たんなるテロ行為なのか、それとも私たちへの問題提起なのか、この点は深く考える必要があります。

 
 松村さんの一連の直接行動に対する裁判が始まりました。6月8日東京地裁での初公判には、傍聴希望者が数十名もいて(そのうち23名のみ傍聴許可)、報道陣も殺到し、松村さんの事件に対する、関心の高さがあらわれていました。

 公判では、検察側からの起訴状朗読、松村さん本人の罪状認否、検察側の冒頭陳述がなされ、弁護側の冒頭陳述は、次回公判(7月5日[月]午前10時)に行われることになりました。

 松村さんの罪状認否は次ぎのとうりです。

☆ 2月7日の教育庁次長宅の火薬物取締法違反…(認める)同家人への傷害罪(3週間の火傷)…(認める)

☆ 2月10日、教育長らへの脅迫…(認める)

☆ 3月5日、爆発物製造(爆発物取締罰則3条)…(認める)

☆ 3月12日、都立三田高校長への「殺害目的」…(否認、「傷害目的」と訂正)をもって

☆ 校長室で爆発物を爆破行使(爆発物取締罰則1条)…(否認)


 検察側からの冒頭陳述(要旨)は次ぎのとうりです。

1.松村被告は、1997、98年度の成績特別昇給の対象者として、組合側から推薦をうけてい たが、安食校長は勤務態度不良の被告を都教委に推薦せず、被告は同校長に対して憎悪 を深めていった。

2.教育庁は、98年10月、教員本人の希望や承諾なしでも、定時制高校や島嶼の高校に異動さ せることができるよう「異動実施要綱」を改定したが、被告は定時制高校や島嶼の高校な ど意に添わない高校に異動させられるのではないかと恐れた。そこで、そのような異動を 阻止するため教育庁幹部や校長に危害をくわえ、恐怖心を抱かせて、同実施要綱に基づく 異動を妨げようと考えるに至った。

3.被告は、安食校長を襲撃しょうと考えたが、みずからの手で同校長を刺殺することに恐 怖を覚え、代わりに火薬類を爆発させて教育庁幹部を襲うことを考え、爆発物様のもの を製造した。

4.被告は、2月9日早朝、千葉県市川市にある教育庁次長宅の門扉の外側に爆発物様の物を 仕掛けた。次長の長女が自宅を出る際、爆発物様のものが爆発し、左足打撲・火傷を負った。

5.被告は火薬が爆発したことを、同日の夕刊で確かめ、教育長と人事部長あてに、「教育庁 次長宅の爆発事件は教職員組合に対する弾圧への報復である。弾圧が止まない限り今後 も報復行動にでる」旨の脅迫状を郵送した。

6.被告は、前記犯行後に、安食校長の言動をみて、同校長が「主任制問題」や卒業式での「日 の丸掲揚問題」で一層管理主義的な方針を打ち出してきたと考え、教育庁に方針変更の 考えがないと判断した。被告は、このままでは、みずからの異動時期(2000年4月)に定時 制または島嶼の高校に異動させられる、将来リストラの対象とさせられることは間違い ないと考え、教育庁の方針に追随する校長らをねらった、爆弾事件の実行を決意した。そ して、都立三田高校長らを対象に選んだ。

7.被告は、3月7日休暇をとり、自宅で振動型の鉄パイプ爆弾を製造した。

8.被告は、3月12日、都立三田高校長室内で、同爆弾を設置後、直ちに校長室をでたが、事務 職員に詰問され、部屋を間違えたと言って、正門付近まで逃げた。しかし、このまま逃げたのでは同校職員らが校長室を調べ、校長の机上にある紙箱を見 つけ、これを動かして爆発させると考え、正門付近で徘徊していたところ、同校職員に  つかまり、校長室横の応接室前廊下に連行された。被告は、このままでは、職員が校長室の紙箱を動かすなどして鉄パイプ爆弾を爆発させ、 職員が死傷することを恐れ、自ら起爆装置を外して爆弾を回収しょうと考え、「校長室に 落とし物がある」と言って、校長室に入ったが、職員に室外に連れ出された。 爆弾の回収をあきらめた被告は、催涙スプレーを職員に吹き付け加療1週間の眼瞼皮膚 炎等の傷害をおわせて、逃走を図ったが、他の職員に取り押さえられた。

9.被告は駆けつけた警察官に「校長室に爆弾を仕掛けた動かすと爆発する」と告げた。 警視庁爆発物対策班は、液体窒素で凍結処理中、校長机上のビニールマットが急冷の結 果、変形し、紙箱がもちあげられて動いたため、紙箱内の爆弾が爆発した。


 上記の冒頭陳述では、==松村さんの直接行動の目的がa「特別昇給はずしの恨み」、b「強制 人事異動逃れ」、c「教職員組合へ弾圧阻止」 などにあるとされている。ところが、松村さんにとっては、都教育庁の「公立学校管理運営規則」改悪にともなう、「職員会議の補助機 関化」、「企画調整会議の設置」などの阻止が問題であった(この点については、次回公判の 弁護人冒頭陳述を待ちたい)。a,bなどの卑近な動機で彼が行動したのではないことを、検 察側は、広尾高校教職員へ事情聴取で知っておりながら、松村さんの“志"をさながら三 流週刊誌の報道にみられるような矮小化を行っています。また、注目に値するのは、松村さんが、都立三田高校の校長室に爆発物をしかけなが ら、同校職員が、それに触って傷害を負わないようにと、配慮したことです。これは並 の人間にできることではない、と考えますが、如何でしょう。


松村高太郎さんの問題を考える会( 代表 古澤 英樹)

1.目的、a 松村さんが直接行動にでざるをえなかった問題の究明、b 松村さんの裁判闘争の支援、 c 松村さんの問題についての広報、 d 松村さんの家族への支援 を行う。

2.会費 1年 1千円

3.事務局 350-0824 川越市石原町1-14-11 古澤宅 TEL・FAX 0492-24-4666 E-mail hurusawa@mb.infowb.ne.jp