葉っぱ講演会の記録 2000.10.06
◆やってもないのにどうしてしゃべるの?
「あなたもきっと自白する!?」
浜田寿美男・花園大学教授のお話を聞きましたdiv>

青木惠子さんの支援を訴えると、まず「無実なのにどうして自白するの?」という一言が必ずと言っていいほど返ってきます。そこで、心理学者の浜田先生から「自白の研究」―取調べる者と取調べられる者の心理的構図―について、お話を聞きました。

浜田先生は説得力のない判決が人を拘束する。警察・検察官・裁判官の心理として、「犯人」であるとの思い込みがあり、無実の人を「でっちあげ」ているというわけではないと話し始められました。

通常では下図の上の天秤であろうが、無実の人が虚偽自白(「悲しい嘘」)するのは、「過酷な取調べの状態の中で今のしんどさから逃れよう」とするためである。「本当は無実なのだから、ここで自白しても後に裁判で訂正できる(実際は自白の任意性が欠けていると裁判官が認めることはめったにない)、無実だから刑罰に対して現実感がない。」等、無実の人ほど、「否認→無罪」より「死刑←自白」の方が軽い(図の下の天秤)。


取調べは拷問のように外形的に過酷でなくても、一般的に思われている以上にずっと厳しく、以下の要因が重なりあい、被疑者が受ける圧力が肉体的拷問に等しいレベルに達することがある。つまり

  1. 身柄を拘束され日常生活からの遮断で、心理的に安定を失う
  2. 代用監獄におかれ、食事・排泄・睡眠という基本的生活まで他者に支配され、自分の自由にならない
  3. 被疑者を犯人として自白を迫る取調官により、ときに人非人として罵倒され続ける
  4. 事件に関連のない事柄についても取り沙汰され、罪責感を募らせられる
  5. 無実であれば弁解したい思いが募り、黙秘する気になれず、弁解を繰り返しても聞き入れてもらえず、無力感に押しひしがれる
  6. こうした辛さも期限があれば耐えられるが時間的な展望が見えない
  7. 理不尽な取調官にも敵対しきることは難しく、自分の将来の処遇が相手に握られてしまっていると感じ、迎合的な気分になり、時折見せられる取調官の温情にほだされる

青木さんは実際に任意同行の日から、耳元10cm位の位置より大声で執拗に罵倒される、体力が弱っているのに長時間の取調べを受ける、娘を亡くして傷ついている心を逆なでするような言葉を浴びせられる等々でこのような心理状態になり、自白したそうです。しかし、代用監獄での2度の自白以降、「娘のためにどんなに辛くても逃げることなく、真実を語る」と言う姿勢で否認・黙秘を今日まで貫き通しています。担当弁護士はひどい取調べの中で頑張っている青木さんに感嘆の声を上げています。

浜田先生のお話は「犯人になる真理」へと続き、自白すると犯行の筋書きについても自分が犯人になったつもりで考えていく以外に「しんどさから逃れる」すべはなく、常軌を逸した取調べ状況の中で被疑者は「犯人になる」ことを選ぶそうである。

また、日本では取調べ時に録音・ビデオもなく(英国等にはある)、取調べて「いる」方には「られている」方のことは判っていない、自白を取ることの危険性を警察・検察官・裁判官は判っていない。さらに「犯罪捜査101問」には、頑強に否認する被疑者に対し、「白かも知れないと思ってはいけない」というような記載があるそうである。

お話を聞くうちに、司法改革の重要性がますます高まってきました。(Y.O.)