私が解放塾に行き始めてから二年半が過ぎました。その間、小学生・中学生の講師をしていたわけですが、子どもたちを見てきて私が感じたことを少し書きたいな、と思います。
初めてその塾に行き、子どもたちと接した時の印象は「何て人見知りをしない子たちなのだろう」ということでした。けれどその一方で、言葉使いの悪さもひしひしと感じました。まず、講師に対して「先生」はおろか、「さん付け」もしないのです。最初はかなり驚いていたのですが、長く講師をやると何だかこちらも慣れてしまって、最近では「先生」と呼ばれた時の方が思わず「え?!」という感じでどきっとするくらいです。でもそれくらい言葉使いが悪いのです。現在私は小学生の方の講師をしているのですが、十歳以上年下の小学生から呼ばれる言葉は「ささき!」いつもその度に「さんを付けろ」というようなことを講師は言っているのですが直りそうな気配はありません。
次に感じることは「子どもたちが『金持ち』であるな」ということでした。高校生はもちろん、小・中学生でも携帯電話を持っている人がいます。一時期ブームになった「たまごっち」も多くの小学生が持っていました。私は「同和地区の人は生活水準が低い」というようなことを聞いていたのですが、少なくとも子どもたちからはそれは感じられませんでした。子どもたちの「おもちゃ」が充実している一方で私が一つ驚いたのは、新聞をとっている家庭が少ない、ということでした。勉強を教えていて「これ、新聞にのってたやろ」と言うと、その返事の多くが「うち新聞とってへん」でした。そういう時は「新聞も読むと結構楽しいから読んでみたらいいよ。図書室にもあるからさ」と言っていますが、果たして、それで新聞を読んだ子がいるだろうか、という状態です。
私は塾で講師をしているわけですから、やはり最も気になるのは子どもたちの「学力」です。勉強にはやはり四苦八苦している子どもたちが多いのが現状ですが、それは「勉強が出来ない」と言う表現より「勉強をする習慣が身についていない」という方が正しいな、と私自身は思っています。実際、中学校で言えば、中間・期末テストの試験範囲を、例えば試験の三日前に知っている子は非常に少ないのです。私が「数学の範囲はどこから?」と聞くと、生徒の方も「分からん。先生どこからか教えて」という感じです。いつも私は「君がこの試験うけるんだろ」と言っていますが、なかなか自ら家で勉強しようと意志は少ないように思います。そして何より「集中して勉強できる」子どもが非常に少ないのです。十分机に向かうと二分休憩といったペースです。おそらく勉強に集中さえ出来ればもっと(成績が)伸びる、と思う生徒も多いのですが、あと一歩、がなかなか踏み出せていないように思います。
同時に、向上心というか将来に対する夢がとても少ないように感じます。中学生であればもっと(偏差値が)上の高校を目指してみてもいいのに、と思っても「頑張らなあかんのはイヤ」なのです。目標を決めてそこに向かって頑張る、というよりは「今の状態で行ける所へ行く」という場合が多いような感じを受けます。もったいないな、と私はいつも思います。小学生の中にも、冗談かもしれないけれど「中学校も行きたくない」という子がいます。私も「これから本当にいろんな可能性があるんだよ」という事や、少しでも関心を持ってくれればと「大学生の生活がどれほど楽しいか」を説明したりしているのですが、子どもたちが「(大学などに)興味を持つ」という所まではいっていません。
今まで、批判的な部分ばかりを書いてきましたが、塾の講師として子どもたちに勉強させるのが大変な一方で、私が子どもたちを見ていて「面白いな」と思うこともとても多いです。まず、子どもたちに「勉強しろ」と言うと「なんでやらないかんの?」という返事がよく返ってきます。単に講師を困らせているだけなのかもしれないけれど、多くの子が何も考えず周りから言われるがままに勉強してエリートを目指していく……という社会の中で、こういう疑問をぶつけてくる子どもたちは「面白いな」と感じます。またこれは 「団地」という性質からと思うのですが、子どもたちの人間関係がとても複雑なのです。同い年の人としか遊んだ経験のない私にとっては、うらやましく思う環境かもしれません。まず、今の子どもに不足していると言われている「他学年の人との交流」は自然な形で出来ています。男女間の仲も良さそうです。そういう環境だから、例えば喧嘩が起こっても、本当にいろいろ複雑そうで何だか「荒波にもまれてる」という気がします。でもこれは貴重な経験になるかも……と思います。また、地区で様々なイベントもあるようで、それらの経験を全て自分の中に取り入れることが出来れば、すごい大きいスケールの人になるだろうな、とうらやましく思います。
以上、私が塾の子どもたちに対して思っていることを率直に書いてみました。私の主観が入っている部分もあるだろうし、私も一部の子どもたちの一部の姿しか見ていないので、事実とずれている部分もあると思います。この文に対する意見・批判などを聞かせて頂ければ、とてもうれしく思います。
(注)解放塾とは……
主に同和地区の子どもを対象とした学力補充のための塾で、地区外の子どもも、友人関係などでぜひこの塾に来たいという希望があれば受け入れています。講師・スタッフとしては、主に大学生があたっています。