昨年12月18日、大阪大学内で「民族学校出身者の受験資格を求める阪大連絡協議会」の結成集会が行われた。結成集会では、まず朝鮮の民族打楽器によるアンサンブル「サムルノリ」の公演があり、次いで私の結成アピール、賛同教官のあいさつ、構成団体のアピールと続いた。その間、朝鮮風お雑煮「トック」が参加してくれた皆さんに振る舞われた。
この協議会が何の為に作られたのかを説明しなければならない。その前に、読者の皆さんは民族学校の存在をご存じだろうか。現在、日本国内に140校以上の在日外国人の為の民族学校が存在する。そのほとんどは朝鮮学校である。民族学校は、外国にいながらも自民族の言葉や文化、歴史を学んで民族的アイデンティティを確立しようという目的で在日朝鮮人たちの手で運営されている。朝鮮人学校の場合、自民族の言語ー朝鮮語を「国語」とし、その他の授業(理科や数学、音楽なども)全てが朝鮮語で行われる。ただし、「日本語」の授業だけは日本語で行われる。(朝鮮学校は、日本学校の2か国語だけではなく、朝鮮語、日本語、英語の3か国語を習うのである。)朝鮮学校は日本学校に合わせ、6・3・3制をとっている。朝鮮語による授業の為さすがに「検定済」の教科書は使えないが、カリキュラムは日本の学校とほとんど変わりがない。
朝鮮高校については、もしかしたらテレビや新聞などによって既に知っておられる人がいるかも知れない。数年前、甲子園やインターハイに出場できることになり話題になった学校である。スポーツの面ではもう道は開かれているのである。
しかし、朝鮮学校は現在、制度的には料理学校などのような技能的、単科的教育を施す教育施設と同じ「各種学校」扱いになっていて、そのため様々な制約を受けている。
文部省は1965年文部事務次官通達「朝鮮人のみを収容する教育施設の取り扱いについて」により、「朝鮮人としての民族性または国民性を涵養することを目的とする朝鮮人学校はわが国の社会にとって、各種学校の地位を与える積極的意義を有するものとは認められないので、これを各種学校として認可すべきではない」存在と規定し、そのような時代錯誤的な見解を今なお改めていない(30年以上前の通達をそのまま踏襲するなんて、ほんまに官僚的!)。このような政策が在日外国人の正当な学ぶ機会を奪い、また父母に大きな負担を強いている。
現に文部省は民族学校出身者に対して、大学、特に国立大学への受験資格を一切認めていない。全国の公私立大学の半数以上の大学、在日外国人の多く住む近畿圏に関しては85%以上もの大学が、受験資格を認めているにもかかわらずである。
民族学校卒業生が国立大学へ入学してくるまでの一連の流れを説明しよう。上述のように国立大学への受験資格がないので大学入学資格検定、いわゆる「大検」を受験しなくてはならない。しかし、朝鮮学校は初級学校、中級学校、高級学校(小学校、中学校、高校に相当)まで一貫して「各種学校」扱いを受けている為、大検の受験資格である、中学校卒業の資格すらないのである。やむなく、日本の「通信制」や「定時制」高校に在籍して(いわゆるダブルスクール状態)、大検の受験資格を得る。大検を受験し、合格後に初めてセンター試験、2次試験へと進めるのである。普通に日本学校に通った場合に比べて、二重、三重のハードルを乗り越えてやっとセンター試験受験へこぎ着くのである。
私も民族学校卒業生で、上記のルートをたどって阪大生になったわけだが、私以外にもそのような人はいる。本協議会にも1名いる。
去る10月8日、98年度センター試験受験にあたり、朝鮮高級学校生2名が阪大への受験を志願し資格を求めたが、阪大当局は従前通り受験資格を与えなかった。学ぶ機会の平等と拡充を求めたが、その願いはかなえられなかった。
最近、「国際化」という言葉が当たり前のように使われている。しかし、この現実を目の当たりにして(しかもこの阪大の中で)、その響きは空虚だ。「差別」という2文字に完璧に置き換わっているではないか!
学校教育法第56条とその施行規則第69条は大学受験資格の問題に触れていて、「大学入学に関し、高等学校を卒業したものと同等以上の学力があるものと認められる者」に対しても、受験資格を認めている。大阪大学通則第12条にも、学生募集要項にもきちんとそのことが明記されている。前述の56条と69条に基づいて、公私立大学は民族学校卒業生に対して受験資格を認めているのである。大阪大学でも大学自治に基づいた自主的な判断でこのことを認める事は十分に可能なのである。
本協議会は、民族学校生に私が通って来たようなルートを再びは踏ませないように、民族学校を取り巻く差別を一つ一つ取り除く為に、何かできる事はないかと立ち上がった。阪大朝鮮文化研究会の部長でもある私を中心に97年度から本協議会結成への準備を進めて来た。阪大内のサークルである朝鮮文化研究会、部落解放研究会、女性学研究会、アムネスティーインターナショナル阪大グループ、フランス哲学研究会、寄せ場研究会、現代社会研究会の7団体と釜ケ崎パトロールの会有志、そして学生の他、9名の阪大教官が目下の所、構成員、構成団体となっている。
私達は、民族学校出身者に受験資格を求める為、ひいてはあらゆる差別に戦う為に全力を尽くしていくつもりである。
現在、本協議会は規模の拡大を図ろうと、より多くの学生・教官に支援を求めている。
問い合わせは、私のe-mail: mc7042mj@ex.ecip.osaka-u.ac.jp まで。