トクナガさん事件ニュースクリップ

 トクナガさん事件のニュースクリップです。

 有罪心証のもとの「無罪勾留」は外国人には当たり前になってしまいました。恐ろしいことです。高裁有罪判決の直後弁護団の語る「控訴審は、当時を知る元妻らを証人として出廷させず、事件について真摯(しんし)な検討を加えたとは言い難い」という見解は印象的です。

 証拠調べをせず有罪判決をしている点も、ゴビンダさん事件と酷似しています。


3歳長女に暴行、死なせた父親逮捕
「なつかない」と腹立て−長野県警

 長野県警豊科署は27日、3歳の長女に暴行を加え死亡させたとして傷害致死の疑いで、同県穂高町穂高に住む日系ブラジル人の工員トクナガ・ロベルト・ヒデオ・デ・フレイタス容疑者(23)を逮捕した。

 調べによると、トクナガ容疑者は25日ごろ、長女のマユミちゃんが自分になつかないことに腹を立て、全身を殴るけるなどの暴行を加えた。27日朝になって、容体がおかしいため妻(21)とともにマユミちゃんを病院に運んだ。

 全身にあざがあり、病院が同署に通報した。死因は外傷性ショック死とみられる。

 トクナガ容疑者は3年前に来日し、2か月前から同所に住み、町内の工場で働いていた。

 時事通信社、2000年6月27日


トクナガさんに無罪判決

 去年長野県穂高町(ホタカマチ)で当時三歳の長女にせっかんし死亡させたとして、傷害致死の罪に問われているブラジル国籍の男に対して、長野地方裁判所松本支部は「捜査段階での被告の自白の信用性が乏しく、被告の犯行である証明がない」として、無罪の判決を言い渡しました。 この裁判は、去年六月、長野県穂高町に住むブラジル国籍の無職、トクナガ・ロベルト・ヒデオ・デ・フレイタス被告(二十四)が、当時三歳の長女が自分になつかないことなどに腹を立て、長女に複数回にわたり殴るけるの暴行を加えて死亡させたとして、傷害致死の罪に問われているものです。

 トクナガ被告は、これまでの裁判のなかで「暴行は妻が行ったが、妻をかばおうと思って警察にうその自白をした」などと、一貫して無罪を主張してきました。

 きょう長野地方裁判所松本支部で開かれた判決公判で、千コ輝夫(セントクテルオ)裁判長は「長女の遺体の状況から、死亡した二日前に被告が致命傷を負わせたとする検察側の主張には無理がある。また捜査段階での被告の自白とその妻の証言の信用性が乏しく、被告の犯行である証明がない」などとして、トクナガ被告に無罪の判決を言い渡しました。 この判決について、検察側は「判決は極めて遺憾である。控訴するかどうかはこれから検討したい」と話しています。

NHKニュース速報、2001年5月24日


穂高のせっかん死 一審無罪の被告を拘置
(東京高裁決定)

 南安曇郡穂高町で昨年6月、3歳の長女をせっかん死させたとして傷害致死に問われ、地裁松本支部で無罪判決を受けた東筑摩郡波田町の日系ブラジル人でアルバイト従業員トクナガ・ロベルト・ヒデオ・デ・フレイタス被告(25)の控訴審初公判が17日、東京高裁(中川武隆裁判長)で開かれた。検察側は「逃亡や証拠隠滅の恐れがある」として同被告の拘置を申立て、中川裁判長は認めた。同被告は同日、東京拘置所に拘置された。

 弁護側は「住所や職業も明らかでであり、一審で無罪になった被告を拘置する理由はない」などとして、拘置決定の取り消しを求めて、同高裁に異議を申し立てることを決めた。

信濃毎日新聞、2001年10月18日


一審無罪で拘置 異議申立て 穂高の女児死亡

 南安曇郡穂高町で昨年6月、3才の長女をせっかん死させたとして傷害致死罪に問われ、地裁松本支部で無罪判決を受けたにもかかわらず東京高裁の決定で拘置されている日系ブラジル人のアルバイト、トクナガ・ロベルト・ヒデオ・デ・フレイタス被告(25)=東筑摩郡波田町三溝=について、同被告の弁護団は23日、拘置決定の取り消しを求めて東京高裁に異議を申し立てた。

 トクナガ被告の拘置は同高裁で控訴審初公判が開かれた17日、検察側が「逃亡や証拠隠滅の恐れがある」などとして申立て、中川武隆裁判長が認めた。同被告は同日から東京拘置所に収監されている。異議申立書で弁護側は「定まった住所がある被告には逃亡する意図はいささかもなく、すべての証拠は一審で提出済みで隠滅しようがない。一審の無罪判決を尊重しなければならない」としている。

信濃毎日新聞、2001年10月24日


一審無罪の拘置 高裁が却下 穂高の傷害致死被告

 南安曇郡穂高町での昨年六月の長女せっかん死事件で、傷害致死罪に問われ、地裁松本支部で無罪判決を受けたが東京高裁の決定で拘置されているブラジル国籍のトクナガ・ロベルト・ヒデオ・デ・フレイタス被告(二五)=東筑摩郡波田町三溝=について、同高裁の高木俊夫裁判長は一日、拘置決定取り消しを求めた弁護側の異議申し立てを棄却した。

 弁護側は「外国人差別ではないか。トクナガ被告の弁解を十分聞くなどの適正な審理をせずに安易に下した決定」として、憲法違反を理由に最高裁へ特別抗告する方針だ。

 トクナガ被告は十月十七日、同高裁の控訴審初公判で中川武隆裁判長が検察側の申し立てで拘置を決め、東京拘置所に収監された。弁護側は「拘置の要件を満たさない」として異議申し立てていた。

信濃毎日新聞、2001年11月2日


控訴審中の拘置不当と特別抗告 
穂高の事件(弁護団)

 (長野県)南安曇郡穂高町の長女=当時(3つ)=せっかん死事件で傷害致死罪に問われ地裁松本支部で無罪判決を受けたブラジル国籍のトクナガ・ロベルト・ヒデオ・デ・フレイタス被告(25)を控訴審中に拘置した東京高裁の決定について、弁護団は7日、憲法違反として取り消しを求めて最高裁に特別抗告した。

 同弁護団は10月下旬に、拘置要件を満たさないと、同高裁に取り消し請求をしたが、高木俊夫裁判長は「一審で無罪であっても、罪を犯したと疑う相当な理由がある」とし「被告は仕事があるとはいえ生活は必ずしも安定していない」と逃亡の恐れなどを指摘し、請求を棄却した。

 特別抗告で、弁護団は「まじめに働き生活は安定に向かっていた」などと反論。拘置決定をした審理は、拘置の理由や必要性に触れない簡単な質問に終始したと指摘し、適正な手続きを怠った憲法違反に当たるなどとしている。

信濃毎日新聞、2001年11月8日


拘置特別取り消し特別抗告棄却 穂高の女児死亡

 当時三歳の娘をせっかん死させたとして傷害致死罪に問われ、地裁松本支部で無罪判決を受けながらも控訴審の東京高裁の決定で再び拘置されたブラジル国籍のトクナガ・ロベルト・ヒデオ・デ・フレイタス被告(二五)側が拘置決定の取り消しを求めた特別抗告で、最高裁第三証小法廷(奥田昌道裁判長)は二十六日までに、この抗告を棄却した。

 最高裁は、特別抗告での同被告側の主張を「単なる法令違反の主張」とし、刑事訴訟法が最高裁への特別抗告の理由に求めている憲法違反や判例違反に当たらないと、退けた。裁判長を含め裁判官四人全員一致の決定。この棄却決定に同被告の弁護団は「控訴審で再び無罪を勝ち取るしかない」としている。

信濃毎日新聞、2001年11月27日


穂高の事件 一審無罪の日系人再拘置
 「逃げる気はない」 「差別」との指摘も

 南安曇郡穂高町の自宅で昨年六月に長女(三つ)をせっかん死させたとして障害致死罪に問われ、一審の地裁松本支部で無罪判決を受けた日系ブラジル人のトクナガ・ロベルト・ヒデオ・デ・フレイタス被告(二五)が、十月十七日の控訴審初公判以降、東京拘置所に再拘置されている。無罪判決後に新証拠が示されないまま再拘置されるのは異例。東京高裁は、犯罪を疑う相当な理由や逃亡の恐れを指摘するが、刑事訴訟法の専門家からは、実質審理に入らない段階で犯罪を疑うことへの問題や外国人の被告に対する差別的ともとれる扱いを指摘する声が出ている。

 「再拘置から毎日眠れない。無罪判決なのに、逃げるつもりもないのにどうして自由になれないのか」ー。松本市での出張尋問を前にした七日、トクナガ被告は接見に訪れた上条剛弁護士に、涙を流して訴えたという。

 「せっかんしたのは妻」と一審公判以来一貫して無実を主張するトクナガ被告は、今年5月の地裁松本支部判決で「(犯人は)被告と妻の一方か両方しか考えられない」と指摘されたが、「(暴行で死亡させた)証拠がない」と無罪を言渡された。釈放後、東筑摩郡波田町の親せき宅に身を寄せた。松本市内のクリーニング工場の仕事を見つけ、ようやく生活も安定しはじめた。

 その矢先に開かれた控訴審初公判。傘以外は持たずに上京したトクナガ被告に対し、当日、検察側の申請を受けた東京高裁は、十分とかからない非公開の審理で再拘置を決めた。弁護人も退席させられたため、トクナガ被告は「見捨てられたのかと思っていた」と、初めて通訳を介した七日の接見で上条弁護士に不安を打ち明けた。

 いったん無罪が言渡された被告が新証拠の提示もなしに再拘置されたわずかな例に、九七年三月の東京電力の女性社員殺害事件がある。一審で無罪になったネパール人男性が控訴審前に再拘置された。二審は逆転有罪となり、現在上告中。ネパール人男性の弁護人の神山啓史弁護士は「結論を先取りするような判断は許されない」と、無罪の段階での裁判所の再拘置決定を避難する。

 刑事訴訟法が専門の河崎英明・関西学院大教授は「少なくとも実質審理が行われ、有罪を強く印象づける新証拠が出たり、証人がこれまでの証言を撤回するなどの事情がなければ拘置すべきでない。今後、一審が無罪でも再拘置が容易になってしまうのでは」と危ぐ。「日本人の被告でこういう例は聞いたことがなく、外国人を特に監視対象としていることが見て取れる」と差別的な身柄の扱いを指摘する。

 トクナガ被告は一審で決して”真っ白”な無罪が証明されたわけではない。だからといって控訴審公判の最初から嫌疑があるとの扱いをするのでは、裁判の公正さが損なわれかねない。「一審は、検察側が有罪の立証に失敗したということ。裁判所も一緒になって、再拘置する形で被告に責任の一端を負わせるのは、正義に反する」。河崎教授はこう訴えている。(菅野 貴大記者)

信濃毎日新聞、2001年12月13日


せっかん死控訴審で元妻の証人申請却

 南安曇郡穂高町の長女=当時(三つ)=せっかん死事件で、傷害致死罪に問われ一審で無罪にとなったブラジル国籍のトクナガ・ロベルト・ヒデオ・デ・フレイタス被告(二五)の控訴審で、東京高裁(中川武隆裁判長)は一五日までに、同被告の当時の妻を証人として出廷させるよう求めた弁護側の申請を却下した。

 「真犯人は元の妻」と主張する弁護側は、昨年十二月十日に地裁松本支部で行った出張尋問の際に元妻を承認として出廷させるよう申請したが、中川裁判長は、一審で証言したーなどとして留保していた。

信濃毎日新聞、2002年1月16日


検察が一審無罪判決破棄求める 穂高の長女傷害致死

 南安曇郡穂高町で一昨年六月、長女=当時(三つ)をせっかん死させたとして傷害致死罪に問われ、一審で無罪になったブラジル国籍のトクナガ・ロベルト・ヒデオ・フレイタス被告(二五)の控訴審第3回公判が八日、東京高裁(中川武隆裁判長)であり、検察側は論告で一審判決の破棄を求めた。

 論告で検察側は「(致命傷を与えた最後の暴行の時間について検察側主張の矛盾を指摘した)一審判決には医学的判断の誤解がある」と強調。弁護側が「真犯人は妻(当時)」と主張している点には「(ブラジルで出産した)長女を自己負担で日本に引き取ろうとした妻が、虐待をすることは考えられない」とした。

 弁護側は、事件前に長女の監督、保護の権利をめぐって妻とトクナガ被告の両親(ブラジル在住)が争っていたブラジルでの訴訟で、「妻が長女を虐待していた」と両親が主張した書面を提出。医師の証人申請方針は「適切な証人が見つからなかった」として断念した。

信濃毎日新聞、2002年3月9日


穂高せっかん死事件 7月8日控訴審判決

 南安曇郡穂高町の長女=当時(三つ)=せっかん死事件で、傷害致死罪に問われて一審で無罪となったブラジル国籍のトクナガ・ロベルト・ヒデオ・デ・フレイタス被告(二五)の控訴審第四回公判が一三日、東京高裁(中川武隆裁判長)で開かれ、弁護側が「検察は犯罪の十分な立証をしていない」と改めて無罪を主張して結審した。判決は七月八日。

 弁護側は最終弁論で、長女に致命傷を与えた最後の暴行時間の医学的判断のほか、捜査段階での同被告の自白や当時の妻の供述の矛盾点なども指摘、「日常的に長女と一緒にいた妻が暴行を加えた可能性が高い」とした。

 懲役六年を求刑している検察側は前回の公判で、一審判決に医学的判断で誤りがあったとの主張を柱に、無罪判決の破棄を求めている。

信濃毎日新聞、2002年5月14日


穂高のブラジル人長女せっかん死事件
懲役5年の逆転判決 東京高裁 自白の信用性を認める

主な争点と1,2審判決

暴行の日時

地裁松本支部    東京高裁
外傷性ショックは負傷から8時間くらいまでに発生するのが通常。 6月27日の長女の死亡の直接の原因となった傷害やぼうこう破裂は26日夜に発生した可能性が高く、被告が自白している25日の暴行と結びつけるのは無理がある 太ももの皮下出皿は短時間の急激なものではなく比較的長い時間がかかっている。外傷性ショックは、死亡まで1日程度かかることもあり、6月12日から25日まで繰り返した暴行で徐々に衰弱し死亡したとする自白を裏付けられれる

捜査段階の供述

地裁松本支部    東京高裁
致命的な暴行を受けた6月26日の長女の様子について、つらそうにしながらも、歩いたり遊んだりしていたとしたり、長女が立ったまま暴行に耐えていたとするなど、被告の捜査段階の供述には疑問の余地が大きい 長女が懐かないので暴行を加え るようになったという経緯や心情、主な暴行の様子や長女の状態、死亡に気づいた時の動揺などが具体的に述べられており、捜査段階の供述は信用性が高い。当時の妻の証言とも基本的に合致している

 南安曇郡穂高町で一昨年六月、当時三歳だった長女をせっかん死させたとして傷害致死罪に問われ、一審の地裁松本支部判決で無罪になったブラジル国籍の父親トクナガ・ロベルト・ヒデオ・デ・フレイクス被告(二五)の控訴審判決が八日、東京高裁で開かれた。中川武隆裁判長は一審判決を破棄し、懲役五年(求刑懲役六年)の実刑判決を言い渡した。弁護側は上告する意向だ。

 トクナガ被告は、捜査段階で暴行を自白したものの公判では一貫して「暴行したのは当時の妻」と無罪を主張。一審判決で自白の信用性否定の根拠となった、外傷性ショクは負傷から約八時間までに野生するなどの「医学的知見」について、二審は、検察側証人として出廷した医師の証言を基に「支持できない」と退け、被告の自白の信用性を認めた。

 また、控訴審での医師の証言から、長女が死亡する二日前の六月二十五日の暴行が最後の暴行だったと、被告が自白で認めた点についても「合理的な疑いはない」と判断。同被告の捜査段階の自白と妻の供述を採用し、公判での被告の供述は信用できないとした。

トクナガ被告 表情は青ざめ 

 「原判決(一審判決)破棄する。被告人を懲役五年に処する」ー。八日の東京高裁の法廷で、トクナガ被告は中川裁判長が逆転有罪の判決を言い渡す間、青ざめた表情でうつむき加減に聞いていた。

 同被告は昨年五月の一審無罪判決で自由の身となったが、同十月の控訴審初公判の際、一審無罪の被告としては異例の拘置決定で収監された。高裁への異議申し立ても最高裁への特別抗告も退けられ、顔を真っ赤にしてすすり泣きながら控訴審の公判に出廷していた。

 今回の判決公判閉廷後、「また会いに行くから」と慰める三人の弁護士に、トクナガ被告は小さくうなずき、サンダル履きの足を引さずるように法廷を出ていった。

 控訴審判決によると、同被告は二〇〇〇年六月十二日から二十五日にかけて、自宅アパートで長女に殴るけるなどの暴行を繰り返し、皮下出血やぽうこう破裂などの傷害を負わせ、二十七日朝、外傷性ショックで死亡させた。

 今回の判決について、同被告の弁護人は閉廷後、「控訴審は、当時を知る元妻らを証人としてて出廷させず、事件について真摯な検討を加えたといは言い難い」などと批判。一方、東京高検の桜井正史・次席検事は「検察官の主張が認められた。量刑の点を含め適正、妥当な判決」とコメントした。

信濃毎日新聞、2002年7月9日(火)


女児の父親上告 穂高のせっかん死

 南安曇郡穂高町の長女=当時(三つ)=せっかん死事件で、傷害致死罪に問われ一審の地裁松本支部で無罪判決を受け、二審の東京高裁で実刑判決を受けたブラジル国籍の父親トクナガ・ロベルト・ヒデオ・デ・フレイタス被告(二五)の弁護側は十八日、二番判決を不服として最高裁に上告した。

 弁護側は一審から一貫して「暴行を加えたのは当時の妻。被告は妻の身代わりになってうその自白をした」と無罪を主張。一審の地裁松本支部は最後の暴行時間と死亡時間の関係から、捜査段階の被告の自白の信用性を否定、無罪を言渡した。だが、今月八日、東京高裁は検察側証人の医師の証言を根拠に自白は信用できるなどとして、一審判決を破棄、懲役五年の実刑判決を言い渡した。

 上告を前に弁護側は東京拘置所に収監されている同被告に接見。被告は通訳を通じ「(二審の)裁判はおかしい。(当時をよく知る元妻を証人として出廷させず)ちゃんと審理してくれなかった」と話していたという。

信濃毎日新聞、2002年7月19日