ロザールさんの自白と客観的証拠について

 自白は客観的な事実や証拠に反しているだけでなく、自白がなされた過程をみると、その内容の真実性や合法性に非常に問題があります。ロザール事件は客観証拠から、無実であることを理解しやすい事件です。

ロザールさんの最初の自白に至る過程

 ロザールの最初の自白は、10日間の違法な取調の後になされました。

 田中裁判長はこの取調が違法であったと認めながら、ロザールさんが外国人であり逃亡する可能性が高いからこのような方法をとる必要性があり違法は重大でないとしました。

 ロザールさんは10年近く日本に住んでおり、病気の子供がいました。定住していたのです。 さらに、逃亡防止は大使館、友人、弁護士への連絡を拒否する理由になるのでしょうか。

 外国人容疑者の人権は日本人とは異なるのでしょうか?

 字幅の問題があるのでここでは最初の自白に議論を絞ります。より詳細な情報については、RosalAdHoc@aol.comあてご連絡ください。いつでも提供いたします。

最初の自白の内容

 1999年11月9日(日)の午後10時35分頃、私は離れて暮らしている夫から病院に早く戻るようにとの電話を受けた。私が病院に行こうとすると、恋人がそれを止め、ダイニングキッチンでけんかになった。彼は、娘が死んでしまえばいいと言った。私は包丁を取り出し、恋人の腰を2回刺した。被害者はとなりの部屋に行き、ベッドに横たわった。私は恋人の首を刺して殺し、病院へ戻った。

 

事実:

【犯行態様等について】

  • 被害者の腰には傷がなく背中にしか傷がない。
  • 被害者には100をこえる傷跡があり、傷は頭部、頸部、上半身に集中している。
  • 被害者の頬には大きな傷跡がある。
  • しかし、ロザールには全く怪我、傷がない。
  • ロザールの身長はおよそ157センチ、体重は46キロ程度、被害者の男性の身長は168センチで体重は63キロである。
  • ロザールは9日午後11時に病院に戻り、娘の医者と看護婦にあっている。彼女の様子が異常だったとの供述は一切ない。

【犯行時の着衣とされている衣服の状況】

  • 当初の警察の実況見分ではロザールの服からは最大米粒大の血痕が3つしか発見されておらず、後の鑑定によっても恋人の血液型と合致する血痕は合計7つしか発見されていない。  裁判所は、離れたところから刺せばこのようなこともあり得ると判断した。 
  • ロザールはこの血痕は被害者を発見した朝、揺り起こそうとして抱きついたときについたのだろうと主張している。救急隊員も身体を検査した際に血が手袋についたと供述している。

【死亡推定時刻】

  • 死体解剖担当の木内政寛医師と裁判所は死亡推定時刻の認定は難しいとして、11月9日午後9時16分から翌10日午前6時16分までを死亡推定時刻としたが(9時41分には被害者は同僚に電話している)、上野正彦医師は10日午前2時30分から4時30分まで、大野曜吉医師は10日午前4時から7時までと推定している。

【その他犯行現場の状況】 

  • 警察の報告書によれば、壁に血があり、ベッドの下に水が撒かれ、部屋には香水のにおいが充満し、すべての皿が流しに片付けられて生ゴミが捨てられ、被害者は寝間着に着替えており、被害者の鞄は広げられて荒らされ、棚の引き出しがあけられて荒らされていた。 

一審判決:

 一審判決は、ロザールさんの自白が信用できるとして、ロザールさんが午後10時36分から午後11時少し前の間に、被害者を殺害したと認定しました。その動機は、被害者が娘なんか死んでしまえばよいと言ったからということである。刺した回数を覚えていないのは高度の興奮状態にあったからである。