犯罪被害者保護関連法

刑事手続の中で被害者等の心情などに適切に配慮するとともにその被害の回復に役立つ措置を導入。親告罪である強姦罪などの告訴期間の撤廃、証人尋問手続きにおける証人の負担を軽減するための手続き及び被害者による公判期日における被害に関する意見の陳述の制度を導入するなど「刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律」とそれに付随する措置として犯罪被害者の公判手続きの傍聴に対する配慮などを盛り込んだ「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」の二法から成る。


刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律
犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律


刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律

  (刑事訴訟法の一部改正)
第 一 条  刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の一部を次のように改正する。
   第 四十条に次の一項を加える。
     前項の規定にかかわらず、第百五十七条の四第三項に規定する記録媒体は、謄写することができない。
    第 百五十七条の次に次の三条を加える。
  第 百五十七条の二 裁判所は、証人を尋問する場合において、証人の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、証人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、その不安又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは証人の供述を妨げ、又はその供述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、その証人の供述中、証人に付き添わせることができる。
 前項の規定により証人に付き添うこととされた者は、その証人の供述中、裁判官若しくは訴訟関係人の尋問若しくは証人の供述を妨げ、又はその供述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならない。
  第 百五十七条の三 裁判所は、証人を尋問する場合において、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、証人が被告人の面前(次条第一項に規定する方法による場合を含む。)において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であつて、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、被告人とその証人との間で、一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。ただし、被告人から証人の状態を認識することができないようにするための措置については、弁護人が出頭している場合に限り、採ることができる。
 裁判所は、証人を尋問する場合において、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、名誉に対する影響その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、傍聴人とその証人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる。
  第 百五十七条の四 裁判所は、次に掲げる者を証人として尋問する場合において、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、裁判官及び訴訟関係人が証人を尋問するために在席する場所以外の場所(これらの者が在席する場所と同一の構内に限る。)にその証人を在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によつて、尋問することができる。
    一  刑法第百七十六条から第百七十八条まで、第百八十一条、第二百二十五条(わいせつ又は結婚の目的に係る部分に限る。以下この号において同じ。)、第二百二十七条第一項(第二百二十五条の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項(わいせつの目的に係る部分に限る。)若しくは第二百四十一条前段の罪又はこれらの罪の未遂罪の被害者
    二  児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六十条第一項の罪若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪又は児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)第四条から第八条までの罪の被害者
    三  前二号に掲げる者のほか、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、裁判官及び訴訟関係人が証人を尋問するために在席する場所において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる者
   前項に規定する方法により証人尋問を行う場合において、裁判所は、その証人が後の刑事手続において同一の事実につき再び証人として供述を求められることがあると思料する場合であつて、証人の同意があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、その証人の尋問及び供述並びにその状況を記録媒体(映像及び音声を同時に記録することができる物をいう。以下同じ。)に記録することができる。
 前項の規定により証人の尋問及び供述並びにその状況を記録した記録媒体は、訴訟記録に添付して調書の一部とするものとする。
   第百八十条第二項中「前項」を「第一項」に、「但し」を「ただし」に改め、同条第一項の次に次の一項を加える。
     前項の規定にかかわらず、第百五十七条の四第三項に規定する記録媒体は、謄写することができない。
   第二百三十五条第一項ただし書中「但し、刑法第二百三十二条第二項の規定により外国の代表者が行う告訴及び日本国に派遣された外国の使節に対する刑法第二百三十条又は第二百三十一条の罪につきその使節が行う」を「ただし、次に掲げる」に改め、同項に次の各号を加える。
    一  刑法第百七十六条から第百七十八条まで、第二百二十五条若しくは第二百二十七条第一項(第二百二十五条の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項の罪又はこれらの罪に係る未遂罪につき行う告訴
  二  刑法第二百三十二条第二項の規定により外国の代表者が行う告訴及び日本国に派遣された外国の使節に対する同法第二百三十条又は第二百三十一条の罪につきその使節が行う告訴
   第二百七十条に次の一項を加える。
     前項の規定にかかわらず、第百五十七条の四第三項に規定する記録媒体は、謄写することができない。
   第二百八十一条の二中「面前」の下に「(第百五十七条の三第一項に規定する措置を採る場合及び第百五十七条の四第一項に規定する方法による場合を含む。)」を加える。
   第二百九十二条の次に次の一条を加える。
  第 二百九十二条の二 裁判所は、被害者又はその法定代理人(被害者が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹。以下この条において「被害者等」という。)から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする。
 前項の規定による意見の陳述の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
 裁判長又は陪席の裁判官は、被害者等が意見を陳述した後、その趣旨を明確にするため、当該被害者等に質問することができる。
 訴訟関係人は、被害者等が意見を陳述した後、その趣旨を明確にするため、裁判長に告げて、当該被害者等に質問することができる。
 裁判長は、被害者等の意見の陳述又は訴訟関係人の被害者等に対する質問が既にした陳述若しくは質問と重複するとき、又は事件に関係のない事項にわたるときその他相当でないときは、これを制限することができる。
 第百五十七条の二、第百五十七条の三及び第百五十七条の四第一項の規定は、第一項の規定による意見の陳述について準用する。
 裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させ、又は意見の陳述をさせないことができる。
 前項の規定により書面が提出された場合には、裁判長は、公判期日において、その旨を明らかにしなければならない。この場合において、裁判長は、相当と認めるときは、その書面を朗読し、又はその要旨を告げることができる。
 第一項の規定による陳述又は第七項の規定による書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない。
   第三百四条の二中「面前」の下に「(第百五十七条の三第一項に規定する措置を採る場合及び第百五十七条の四第一項に規定する方法による場合を含む。)」を加える。
   第三百五条に次の二項を加える。
     第百五十七条の四第三項の規定により記録媒体がその一部とされた調書の取調べについては、前二項による朗読に代えて、当該記録媒体を再生するものとする。ただし、裁判長は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、当該記録媒体の再生に代えて、当該調書の取調べを請求した者、陪席の裁判官若しくは裁判所書記官に当該調書に記録された供述の内容を告げさせ、又は自らこれを告げることができる。
 裁判所は、前項の規定により第百五十七条の四第三項に規定する記録媒体を再生する場合において、必要と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、第百五十七条の三に規定する措置を採ることができる。
   第三百二十一条第一項中「左の」を「次に掲げる」に改め、同項第一号中「面前」の下に「(第百五十七条の四第一項に規定する方法による場合を含む。)」を加える。
   第三百二十一条の次に次の一条を加える。
  第 三百二十一条の二 被告事件の公判準備若しくは公判期日における手続以外の刑事手続又は他の事件の刑事手続において第百五十七条の四第一項に規定する方法によりされた証人の尋問及び供述並びにその状況を記録した記録媒体がその一部とされた調書は、前条第一項の規定にかかわらず、証拠とすることができる。この場合において、裁判所は、その調書を取り調べた後、訴訟関係人に対し、その供述者を証人として尋問する機会を与えなければならない。
 前項の規定により調書を取り調べる場合においては、第三百五条第三項ただし書の規定は、適用しない。
 第一項の規定により取り調べられた調書に記録された証人の供述は、第二百九十五条第一項前段並びに前条第一項第一号及び第二号の適用については、被告事件の公判期日においてされたものとみなす。
   第三百二十三条中「前二条」を「前三条」に、「左の」を「次に掲げる」に改める。
   第三百二十五条中「前四条」を「第三百二十一条から前条まで」に改める。
  (検察審査会法の一部改正)
第 二 条  検察審査会法(昭和二十三年法律第百四十七号)の一部を次のように改正する。
   第二条第二項中「被つた者の申立」を「被つた者(犯罪により害を被つた者が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹)の申立て」に改める。
 第三十条中「告訴若しくは告発をした者、請求を待つて受理すべき事件についての請求をした者又は犯罪により害を被つた者」を「第二条第二項に掲げる者」に、「申立」を「申立て」に、「但し」を「ただし」に改める。
   第三十八条の次に次の一条を加える。
  第 三十八条の二 審査申立人は、検察審査会に意見書又は資料を提出することができる。
    第三十九条中「前条」を「第三十八条」に、「但し」を「ただし」に改める。
     附 則
  (施行期日)
1  この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。
  一  第一条中刑事訴訟法第二百三十五条の改正規定及び第二条の規定 公布の日から起算して二十日を経過した日
  二  第一条中刑事訴訟法第百五十七条の次に三条を加える改正規定(第百五十七条の四に係る部分に限る。) 公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日
  (経過措置)
2  前項第一号に定める日前に犯した第一条の規定による改正後の刑事訴訟法第二百三十五条第一項第一号に掲げる罪について告訴をすることができる期間については、なお従前の例による。


 

犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律

  (目的)
第 一条 この法律は、犯罪により害を被った者(以下「被害者」という。)及びその遺族がその被害に係る刑事事件の審理の状況及び内容について深い関心を有するとともに、これらの者の受けた身体的、財産的被害その他の被害の回復には困難を伴う場合があることにかんがみ、刑事手続に付随するものとして、被害者及びその遺族の心情を尊重し、かつその被害の回復に資するための措置を定め、もってその保護を図ることを目的とする。
(公判手続の傍聴)
第 二条 刑事被告事件の係属する裁判所の裁判長は、当該被告事件の被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)又は当該被害者の法定代理人から、当該被告事件の公判手続の傍聴の申出があるときは、傍聴席及び傍聴を希望する者の数その他の事情を考慮しつつ、申出をした者が傍聴できるよう配慮しなければならない。
(公判記録の閲覧及び謄写)
第 三条 刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、当該被害者等の損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合その他正当な理由がある場合であって、犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせることができる。
2  裁判所は、前項の規定により謄写をさせる場合において、謄写した訴訟記録の使用目的を制限し、その他適当と認める条件を付することができる。
3  第一項の規定により訴訟記録を閲覧し又は謄写した者は、閲覧又は謄写により知り得た事項を用いるに当たり、不当に関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は捜査若しくは公判に支障を生じさせることのないよう注意しなければならない。
(民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解)
第 四条 刑事被告事件の被告人と被害者等は、両者の間における民事上の争い(当該被告事件に係る被害についての争いを含む場合に限る。)について合意が成立した場合には、当該被告事件の係属する第一審裁判所又は控訴裁判所に対し、共同して当該合意の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。
2  前項の合意が被告人の被害者等に対する金銭の支払を内容とする場合において、被告人以外の者が被害者等に対し当該債務について保証する旨又は連帯して責任を負う旨を約したときは、その者も、同項の申立てとともに、被告人及び被害者等と共同してその旨の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。
3  前二項の規定による申立ては、弁論の終結までに、公判期日に出頭し、当該申立てに係る合意及びその合意がされた民事上の争いの目的である権利を特定するに足りる事実を記載した書面を提出してしなければならない。
4  第一項又は第二項の規定による申立てに係る合意を公判調書に記載したときは、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
(和解記録)
第 五条 前条第一項若しくは第二項の規定による申立てに基づき公判調書に記載された合意をした者又は利害関係を疎明した第三者は、第三条及び刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第四十九条の規定にかかわらず、裁判所書記官に対し、当該公判調書(当該合意及びその合意がされた民事上の争いの目的である権利を特定するに足りる事実が記載された部分に限る。)、当該申立てに係る前条第三項の書面その他の当該合意に関する記録(以下「和解記録」という。)の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は和解に関する事項の証明書の交付を請求することができる。ただし、和解記録の閲覧及び謄写の請求は、和解記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。
2  前項に規定する和解記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は和解に関する事項の証明書の交付の請求に関する裁判所書記官の処分に対する異議の申立てについては民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第百二十一条の例により、和解記録についての秘密保護のための閲覧等の制限の手続については同法第九十二条の例による。
3  和解記録は、刑事被告事件の終結後は、当該被告事件の第一審裁判所において保管するものとする。
(民事訴訟法の準用)
第 六条 前二条に規定する民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解に関する手続については、その性質に反しない限り、民事訴訟法第一編第三章第一節(選定当事者及び特別代理人に関する規定を除く。)及び第四節(第六十条を除く。)の規定を準用する。
(執行文付与の訴え等の管轄の特則)
第 七条 第四条に規定する民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解に係る執行文付与の訴え、執行文付与に対する異議の訴え及び請求異議の訴えは、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第三十三条第二項(同法第三十四条第三項及び第三十五条第三項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、当該被告事件の第一審裁判所(第一審裁判所が簡易裁判所である場合において、その和解に係る請求が簡易裁判所の管轄に属しないものであるときは、その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)の管轄に専属する。
(手数料)
第 八条 第三条第一項の規定による訴訟記録の閲覧又は謄写の手数料及び第五条第一項の規定による和解記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は和解に関する事項の証明書の交付の手数料については、その性質に反しない限り、民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)第七条から第十条まで及び別表第二の一から三までの項の規定(別表第二の一の項上欄中「(事件の係属中に当事者等が請求するものを除く。)」とある部分を除く。)を準用する。
2  第四条及び第五条に規定する民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解に関する手続の手数料については、民事訴訟法第二百七十五条の規定による訴え提起前の和解の例による。
(最高裁判所規則)
第 九条 この法律に定めるもののほか、公判記録の閲覧及び謄写並びに民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解について必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
  附 則
(施行期日)
1  この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(刑事確定訴訟記録法の一部改正)
2  刑事確定訴訟記録法(昭和六十二年法律第六十四号)の一部を次のように改正する。
 第二条第一項中「記録」の下に「(犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(平成十二年法律第七十五号)第五条第一項に規定する和解記録については、その謄本)」を加える。



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