慰安婦立法参考人質疑議事録 


155-参-内閣委員会-12号 平成14年12月12日

平成十四年十二月十二日(木曜日)
   午前十時五分開会
    ─────────────
   委員の異動
 十二月十二日
    辞任         補欠選任
     筆坂 秀世君     畑野 君枝君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         小川 敏夫君
    理 事
                阿部 正俊君
                亀井 郁夫君
                森下 博之君
                長谷川 清君
                吉川 春子君
    委 員
                阿南 一成君
                竹山  裕君
                西銘順志郎君
                野沢 太三君
                山崎 正昭君
                岡崎トミ子君
                川橋 幸子君
                松井 孝治君
                白浜 一良君
                山口那津男君
                畑野 君枝君
                島袋 宗康君
                黒岩 宇洋君
                田嶋 陽子君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        鴫谷  潤君
   参考人
       中央大学法学部
       教授       横田 洋三君
       神戸大学大学院
       国際協力研究科
       助教授      戸塚 悦朗君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する
 法律案(第百五十三回国会円より子君外六名発
 議)(継続案件)
○透明で民主的な公務員制度改革に関する請願(
 第一号外一九七件)
○慰安婦問題の戦後責任を果たすための立法の早
 期制定に関する請願(第一九六号外一〇件)
○道路交通法改正に関する請願(第二〇五号)
○戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する
 法律案の早期成立による慰安婦問題の解決に関
 する請願(第三五六号外六五件)
○食の安全の抜本的な見直し強化に関する請願(
 第五八四号外三件)
○国民のための民主的な公務員制度改革に関する
 請願(第九三二号外四八件)
○国民のための民主的な公務員制度の改革に関す
 る請願(第九五〇号)
○元従軍慰安婦に、国による謝罪と補償を直ちに
 実施することに関する請願(第九六九号)
○継続調査要求に関する件
○委員派遣に関する件
    ─────────────

○委員長(小川敏夫君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
 戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案を議題とし、参考人の方々から意見を聴取いたします。
 参考人を御紹介いたします。
 中央大学法学部教授横田洋三君、神戸大学大学院国際協力研究科助教授戸塚悦朗君、以上の方々でございます。
 この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところを当委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。
 本法律案につきまして、両参考人から忌憚のない御意見をいただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、両参考人から、横田参考人、戸塚参考人の順に、お一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず横田参考人からお願いいたします。横田参考人。

○参考人(横田洋三君) 委員長、ありがとうございます。おはようございます。
 本日、参考人として、戦時性的強制被害者問題の解決促進に関する法律案につきまして、私の意見を述べる機会を与えられまして大変感謝いたします。また、この法律案の発議者、そして賛成者、いわゆる慰安婦問題につきまして真摯に解決の方向に向けて御尽力してこられたということについては心より敬意を表したいと思います。
 最初に、私の本案件、すなわちいわゆる慰安婦問題につきましてどういうかかわりを持ってきたかという背景をごく簡単に御紹介させていただきたいと思います。
 まず、この問題が国際的な場面で取り上げられましたのは、私が代理委員として出ておりました国連の人権促進保護小委員会の場で一九九一、二年のころでございます。そこでこの問題が、もう一人の参考人として今朝出席しておられる戸塚先生その他の方々の御活躍もありまして、人権小委員会の場でずっと議論、審議が続けられてきているという背景がございます。
 なお、この人権小委員会における審議の状況につきましては、本日お配りしました私の原稿でございますけれども、「国連人権小委員会における「慰安婦」問題審議の状況」というものを御参照いただきますと有り難いと思います。
 二番目には、私は専門として国際法それから国際人権法を研究してまいりました。この立場から慰安婦問題というのは極めて重要な問題提起をしておりまして、我々国際法学者が真剣に取り組み、適切な答えを出していかなければいけない問題だと考えておりまして、その点からもこの問題に関心を持っておりました。
 三番目に、そういった経緯もございまして、一九九五年に日本政府がイニシアチブを取りまして作りました女性のためのアジア平和国民基金、いわゆるアジア女性基金でございますけれども、これの設立当初から運営審議会、これは理事会に対する諮問委員会でございますけれども、それの委員を仰せ付かりまして、この中で私なりのいわゆる慰安婦問題についての正しい答えに向けての努力をしてきたつもりでございます。なお、現在私はこの運営審議会の委員長も務めさせていただいております。
 このアジア女性基金の活動等につきましては、やはり本日追加資料としてお配りいたしましたこの白いパンフレットがございますが、「女性のためのアジア平和国民基金」という表題でございますけれども、これを随時御参照いただきますと有り難いと思います。
 まず、本法律案につきまして私の基本的な考え方を述べさせていただきたいと存じます。
 本法律案は熟読いたしました。そして、一般論として妥当な内容を含んでいると判断いたしました。しかし、本法律案をこのまま国会で採択し、その規定に従って政府が一連の措置を取ることについては、私の個人的判断は適当ではないという意見でございます。
 その理由は、以下の六点でございます。
 まず第一に、これまで日本政府は一定の対応をしてきたということでございます。
 第二点は、国連での審議をある程度日本政府の対応は反映しているということでございます。
 第三点は、既に一九九五年から今日まで七年近くにわたる活動をアジア女性基金はしてきておりまして、その活動に対して国際社会の一定の評価がございます。
 第四番目には、アジア女性基金に対する多くの国民の方々の理解と支援というものがございます。
 五番目には、日本政府の対応に対する関係諸外国政府の理解と協力、これもございます。
 最後の六点でございますけれども、オランダ、フィリピン、韓国、台湾の被害者、はっきりと確認された御存命中の方々の、半数までは行きませんが、半数に近い三百六十四人がアジア女性基金の償い事業を受け取られたという事実がございます。
 こういったことを踏まえますと、私は、この法律案を国会を通して政府にこの法律案に基づく一連の措置を取らせるということには適切でない部分があるという意見を持っております。多少、この私の考え方をこれから敷衍して御説明させていただきます。
 まず、日本政府は既にいろいろな場面においてこのいわゆる慰安婦問題につきまして、とりわけ被害者となられた方々に対しまして謝罪を表明してきております。
 最初は一九九三年のいわゆる河野官房長官談話でございます。この点につきましては、この白いパンフレットの四ページの年表のところに、九三年の河野官房長官談話の一番のおわびに当たる部分の文章が書いてございますので、御参照いただけると有り難いと思います。
 さらに、一九九四年には、村山総理大臣が談話でやはり深いおわびと反省の気持ちを表明されました。
 それから、人権小委員会におきまして、日本政府のオブザーバー、これは日本政府代表ですが、人権小委員会は私ども委員とか委員代理が主要なメンバーでございますので、政府代表それからNGOの代表、これはオブザーバーという資格で討論にも参加されるということでございますが、その場におきまして日本政府のオブザーバーがやはり深いおわびと反省の気持ちを表明しました。
 それから、償い事業の一環としまして、償い金、それから医療・福祉事業、更にこれに加えましてお一人お一人の償い事業を受け取られる被害者の方につきまして総理大臣のおわびと反省の手紙が付されております。
 これらのおわびの表明は、いずれも道義的責任の立場から被害者に対して、それから被害者の属する国民に対して、政府に対してのおわびと反省の気持ちの表明でございます。
 それから二番目には、歴史の教訓とする事業ということにつきまして、事実の究明、更にははっきりと分かった問題についてできるだけ正確に国民に広く知らせるための活動を行うということ、こういうことをこれまでアジア女性基金はやってまいりました。
 それから三番目には、女性の名誉と尊厳にかかわる事業も継続してやってまいりました。これはどういう事業かと申しますと、過去に日本が行ったいわゆる慰安婦の方々に対する甚だしい人権侵害、これに深い反省をしまして、さらに、現在同様の状況が戦乱の中で起こっている、その被害者の人たちに対する私たちの気持ちそれから政府の気持ちを表明する意味で、現在起こっている問題についての研究と、それから被害者に対する救済の手を差し伸べる事業、こういったようなことについてもアジア女性基金が活動してきております。
 この法律案は、こうした日本政府の対応、とりわけアジア女性基金を作ってそれを通して政府と国民が一体となってこの問題に取り組んできたという、その実績をどのように踏まえて新しい法律案の中で政府に新たな措置を取るように要請しておられるのか、この辺が私にははっきりと見えないという感じがいたすわけでございます。
 次の点でございますけれども、アジア女性基金に対して現在におきましても根強い厳しい批判があるということはこれは事実でございます。
 しかし他方で、人権小委員会の委員の多くの方々、この方たちとは私は毎年八月、ジュネーブで会合を持ちましたときにはこの問題を含めて意見交換をしておりますが、そういう人たちの意見、さらには、度々日本でも報道されました国連の女性に対する暴力に関する特別報告者クマラスワミさん、それから、やはり戦時における女性に対する暴力の特別報告者マクドゥーガルさん、それから、最近辞められましたがごく最近まで国連の人権高等弁務官を務められたメアリー・ロビンソンさん、こういう方々が折に触れて、日本政府のこの慰安婦問題に対する対応は前向きの措置である、とりわけアジア女性基金を作って被害者のために活動していることについては前向きの評価を下されているということがございます。
 それから、日本国民の多くの方々がこの基金に寄附を寄せてくださいました。この寄附にはいろいろなメッセージを付けてくださっておりますけれども、そのメッセージを読みますといろいろな御意見があることがよく分かりますが、同時に、いずれにしても日本国民として被害者の方々に深いおわびを申し上げたいという、そういう気持ちを込めてアジア女性基金に寄附をしてこられました。こういう点で、やはり国民の間に協力と支援の気持ちを持っておられる方が多数おられるということ、これもやはり考慮する必要のある点だろうと思います。
 それから、多くの関係の政府、とりわけフィリピン、オランダ、インドネシアの政府につきましては、日本政府とこの問題で幾度にもわたって協議をしてまいりまして、全体として、日本政府の対応に協力する姿勢を示してきました。
 さらには、先ほども申し上げましたけれども、実際に、韓国、台湾、フィリピン、オランダなどでは、存命中の被害者の方々三百六十四名が基金の償い事業を受け取られたと。
 こういう状況を考えますと、批判があることは事実です。それも非常に厳しい批判ですし、私もその批判には常に耳を傾け、考慮することをしてきておりますけれども、しかし他方で、こういう前向きの評価があるということも認識しておく必要があることだろうと思います。
 アジア女性基金に対する厳しい批判が今でも続いておりますが、その一番の論点は、日本政府は法的責任を認めて法的謝罪、法的補償、法的責任者の処罰をしていないということでございます。ところで、この法律案を読みますと、この日本政府の法的な責任を認めて法的謝罪、法的補償そして責任者の処罰という、被害者及び被害者を支援する団体が要求しております点につきましてはこたえるものにはなっていないという私の判断でございます。
 そうだとしますと、仮にこの法律案に基づきまして日本政府が一連の措置を取ったとしても、依然として、被害者の方々で批判的な意見をお持ちの方、そしてそれを支援しておられる方々の批判にこたえることにはならないということになろうかと思います。もし、これで批判する方々が納得するということでありますと、七年前に作られたアジア女性基金の対応も、正に今度の法律案で実現しようと思っていることに沿ったことではないかと、そういうふうに私は考えております。
 この法律案の第五条を見ますと「我が国が締結した条約その他の国際約束との関係に留意しつつ、」となっておりまして、必ずしも明確な表現ではございませんが、従来の日本政府の立場、すなわち個人の、第二次大戦中に生じた個人の請求権は平和条約その他の二国間条約によって解決済みであるというその立場に配慮している法律案のように私は理解いたしました。そうだとすると、いまだに強い批判をしておられる被害者の方、そしてその被害者を支援しておられる方々の批判、要求にこたえるものにはなっていないのではないかと、そういう判断でございます。
 私の意見は以上でございます。

○委員長(小川敏夫君) ありがとうございました。
 次に、戸塚参考人にお願いいたします。戸塚参考人。

○参考人(戸塚悦朗君) 初めに、レジュメを訂正しておきます。レジュメの中で二番目のクマラスワミというふうにありますのはマクドゥーガルの誤りですので、訂正いたします。
 初めに、大変重要な法案の審議のために、しかも人権週間という特別な時期にお招きいただきまして、ありがとうございます。
 私はこの法律案を成立させるべきであるというふうに考えます。これまで民間基金の受取に反対、拒否してきた被害者、支援団体、被害国議会がこぞって歓迎しておりまして、これはこれまでの日本の国家機関が行った提案について初めてでございます。これまでの日本政府、民間基金の措置によっては解決がなされておりません。全体としてはこれは受け入れられていないわけでありまして、国連、ILO等も解決とは見ていない、国家による補償等の措置をいまだに求めております。
 次に、具体的な内容に触れたいと思います。
 私がいわゆる従軍慰安婦問題にかかわるようになりましたのは、現参議院副議長であられる本岡昭次議員からこの問題に関する法的意見を求められたときからであります。それは一九九〇年の本岡議員のこの問題に関する最初の質問のころでありました。この点については、本岡議員の方にお願いをして先生方のところに国会審議の経過と国連、ILO等の資料集をお届けいただいておりますので、よく御存じなことだと思います。
 率直に申し上げますと、当時の私の法的見解は大変消極的なものでありました。日本法と日本の司法が持つ重大な欠陥のために、日本国内法を援用して日本の裁判所で勝訴するということは被害者にとっては極めて困難と予想したわけであります。ところが、金学順さんほかの被害者の方が名のり出られまして被害を証言し、歴史家が日本軍の関与を証明しました。そして、首相が一定のおわびをするという事態になりました。そこで、当時は私は日本にかかわる重大な人権侵害問題を国連に報告するということを課題にしておりましたので、九二年二月、この問題を国連の人権委員会に報告いたしました。これがきっかけとなりまして、被害国の支援者、支援団体と協力することになりました。ジュネーブ駐在の日本の報道関係者が極めてナショナリスティックな拒否反応、否定的反応をしたことに異様な雰囲気を感じましてかえって奮起したということもあります。結局、被害者支援の活動は十年以上も継続しました。
 その後、研究を継続した結果、日本法上、日本の国内裁判所で勝訴することは極めて困難であっても、国際法上は日本政府が国家責任を免れることの方が難しいというふうに確信するに至りました。そこで、国際法の諸問題に関しまして、IED、IFOR、JFORなどの国連NGO代表として日本軍慰安婦制度が奴隷制であり強制労働条約違反であることを指摘したほか、不処罰賠償理論を援用いたしまして日本政府の条約の抗弁を批判するなどの国際的な法的論議を起こすことに努めてまいりました。
 また、この問題の解決方式の提唱もさせていただきまして、市民、議員立法による解決への筋道を付けるという努力を継続してまいりました。その結果がこの審議につながっておるのだと思います。さらに、これらについて著書、論文を公表するなど研究活動を継続してきたこともありまして、お招きいただいたのだと思います。
 次に、何が国際法的に問題なのかということを申し上げます。
 第一に、提出資料の説明でありますが、配付資料にあります岩波講座「現代の法」掲載論文に国際法上何が問題になるのかの、九七年時点での情報の概要を書いております。その後の情報を加えまして、九九年一月時点までをかなり詳しく、お手元にあります「日本が知らない戦争責任」に書きました。しかし、残念ながら今審議の対象になっている法案はまだ存在しておりませんので、触れておりません。その後につきましては、先ほど申し上げました本岡昭次先生のお作りになった資料集を見ていただければと思います。
 これらを見ていただきますと、国際法的な問題がどこにあるのか御理解いただけると思います。更に詳しくは、週刊法律新聞の国際人権レポート、法学セミナーに掲載しました連載、「日本が知らない戦争責任」及び「これからの日本と国際人権法」などを御参照いただければと思います。
 また、日本の司法による解決が困難であるということに関連しまして、配付資料の中に参議院憲法調査会に提出いたしました私の論文が、国際法の遵守を求める憲法九十八条二項に従わない日本の裁判所の現状を説明しておりますので、それをごらんください。
 なお、この問題については、日本の大審院も、犯罪であるということを非常に早期に認めておるという証拠として大審院の判例もお手元にお届けいたしました。
 第二に、要点につきまして簡略に説明いたします。まず、国際法違反の成否が問題になります。
 第一に、一九二六年、これは奴隷条約が国際慣習法を確認して成立した年でありますが、この年までに奴隷制の禁止は慣習国際法になっていたと考えます。女性を軍需品同様に軍の所有物とした日本軍慰安婦制度は、この国際慣習法に違反しておりました。
 第二に、日本が一九三二年に批准した強制労働条約は女性の強制労働、労務を全面的に禁止していましたので、慰安婦としての性的サービスを強制した日本軍の行為は同条約違反であったと言わざるを得ません。
 第三に、人道に対する罪の構成要件は、殺りく、せん滅、奴隷化、強制的移住、その他の非人道的行為及び政治的又は人種的迫害行為から成ります。日本軍性奴隷被害者に対する日本軍の行為は奴隷化、強制的移送、非人道的行為にも当たりますし、朝鮮人、台湾人などに対する人種的迫害でもあったので、人道に対する罪にも当たります。国際法には時効がありませんので、今も国際法の違反状態が継続していると考えられます。また、人道に対する罪に当たる場合は国内法的にも時効を適用してはならないとされております。
 次に、国際法律家委員会ICJ報告書、国連人権委員会クマラスワミ報告書、国連人権小委員会マクドゥーガル報告書、ILO専門家委員会報告書はそれぞれ詳しく国際法違反があったことを認定しております。それらは先ほど申し上げた本岡先生作成の資料集に挙げられておりますので、ごらんください。
 二〇〇〇年十二月に女性国際戦犯法廷が開催されました。世界的な国際法の権威者による二〇〇一年十二月四日の判決、これは日本軍性奴隷制を裁く、女性国際戦犯法廷の全記録に、緑風出版として出版されております。この判決の国家責任に関する部分、三百六十八から四百四十三ページでありますが、には、今申し上げた以上に広範囲にかつ厳しく国際法違反を認定しております。
 次に、日本政府の条約の抗弁について申し上げます。
 第一に、日本政府はこのような国際法違反の指摘に対していつも、「日本としては、さきの大戦に係る賠償、財産請求権の問題についてサンフランシスコ平和条約などに従って誠実に対応してきた」、これは橋本首相の九六年五月九日参議院予算委員会での答弁であります、などと条約の抗弁を繰り返してまいりました。これは、平和条約及び二国間条約によってすべての国家責任が解除されたと言いたいようにも聞こえます。しかし、条約の抗弁は既に破れております。日本政府はこれに固執することをやめるべきです。
 第二に、具体的に個別条約の検討をしてみますと、これらの抗弁は崩壊してしまうことがよく分かるわけであります。
 第三に、平和条約などの条約によって性奴隷被害者の権利は放棄できないという法的見解は、国際法の権威が承認するところであります。
 時間の関係上、詳細は省略いたします。
 次に、民間基金政策では国際法違反の状態は解除されていないということを申し上げたいと思います。
 仮に、被害者すべてが国民基金による償い金を受け取っても、これは民間による措置ですから国家責任を法的に解除することはできません。その上、民間基金による解決の試みは、多くの被害者、被害国の支援団体などの拒否反応によって被害者全体との和解を達成することができませんでした。
 先ほど申し上げた国連・ILOの報告書は、民間基金に一定の評価を与えましたが、これにより国家責任が解除されたとは評価せず、被害者が求めるように日本政府に対して国家責任を果たすよう求め続けています。今後も国際世論による批判は継続すると思われます。
 先ほど申し上げた法廷の判決でありますが、その末尾で日本政府に対する具体的な勧告をいたしました。これらが実現して初めて国家責任が解除されるというふうに考えられます。これについては、レジュメの最後の「勧告」というところをごらんください。
 解決のためには、審議中の法案の立法が必要であるというふうに考えます。
 被害国の被害者支援団体は、こぞって内閣委員会で審議中のこの法案の国会提案を歓迎し、被害国の議会がその成立を望む決議を次々と審議し採択しております。日本の国家機関、国会議員もこの委員会も国家機関でありますが、によるこの問題に関する提案が歓迎されたのは初めてのことであります。
 しかし、法案に問題もあります。日本人慰安婦の方も、女性として軍による性暴力の被害を受けた点では同じですから、被害者に含むことができるようにする方がよいと思われますが、その他の点では、私が提案してまいりました暫定的な個人賠償法案等、これは特に謝罪という言葉を欠いておりましたので重大な欠陥がありますが、これよりもはるかによくできています。ですから、この法案が可決、成立すれば、この問題は解決に向けて急速に動き出すというふうに考えます。
 立法の国際的な位置付けでありますが、詳細は省略しますけれども、立法ができないという観測が有力であります。なぜなのでありましょうか。
 条約の抗弁にもかかわらず、審議中のこの法案が提案され、参議院の事務総長により受理され、内閣委に付託されました。それは、法的には立法による法的な解決ができるということを示したわけです。国会議員の多数の先生方がこの法案を成立させるか否かという問題が残っているだけであります。
 立法ができないというのは法的な問題ではありません。政治的な問題でありまして、立法に協力する気持ちがない議員がおられれば、これはできないことになるわけであります。もし、この委員会がこの法案を否決したり廃案にしたりすれば、世界じゅうの多数の人々から日本の国会が批判されることは避けられないと思われます。
 慎重な審議の上、可決してくださるようお願いいたします。
 ありがとうございました。

○委員長(小川敏夫君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 なお、質疑時間が限られておりますので、簡潔に御答弁いただくようお願い申し上げます。
 それでは、質疑のある方は順次御発言願います。

○亀井郁夫君 自由民主党の亀井でございます。
 今日は、両先生にはお忙しい中を御出席いただきましてありがとうございます。今、お二人の先生からいろいろとお話を聞いたわけでございますけれども、短時間ではございますけれども、何点かお尋ねしてみたいと思うわけであります。
 特に、この従軍慰安婦の問題というのは過ぐる世界大戦における本当に悲しい事実であり、そういう意味では多くの女性の方々が苦痛を経験された、また精神的にも肉体的にも大変いやし難い深い傷を負われたと、これに対して日本人の一人としてまず最初におわびしたいと思うわけでもございます。
 この従軍慰安婦問題というのは、やはり激しい戦争状態の中で、異常状態の中で、特に被占領地におけるいろんな問題、そういう意味では強姦等のそういった事案をできるだけ少なくするためにということで当時軍が行った方策だろうと思うんですけれども、しかし、それにいたしましても従軍慰安婦の人たちは大変深い傷を負われたことは事実でありまして、この問題をどのような形で解決していくかということが戦後の大きな課題でもあるわけでございます。
 しかし、戦後処理の問題については、そうした戦争中の賠償の問題だとか、あるいは財産請求権の問題等につきましては、こうした従軍慰安婦の問題を含めまして、サンフランシスコの講和条約、あるいは他国との両国間の条約によって一応法的には解決されたというふうな考え方を政府は取ってきたわけでございます。
 そうは言いながらも、やはり従軍慰安婦の皆さん方が高齢になり厳しい状況にあるというふうなことから、道義的には何とかこれについて対応していかなきゃならないというふうな思いから、日本政府もいろいろと対応してきたわけでありまして、先生からもお話しございましたように、平成三年から二年間にわたって調査をし、そしてまた平成五年には河野官房長官が心からおわびと反省するという気持ちも表明しましたし、そしてまた平成六年には時の村山総理がおわびと反省の気持ちを分かち合うための幅広い国民参加の運動として、このいわゆるアジア基金、アジア女性基金を作ったということでもあるわけでございまして、これは平成七年からアジア平和国民基金、アジア女性基金としていろいろと対応してきたわけであります。
 これにつきましては、今お話しございましたように、これを受けてもらえた方、これを拒否された方、いろいろあるわけでございますけれども、非常に大きな、特に性格上なかなか、私はこうでしたと言って本人から言いにくい問題でもあるわけでございますから、そういう意味でいろんな難しい問題がたくさんあったんではないかと思います。
 そういう意味では、この問題に先頭になっていろいろと対応してこられたのが横田先生でもございますし、また横田先生は国際法学者として非常に著名な先生でもございますので、まず最初に横田先生にお尋ねしたいと思うわけであります。
 今申し上げましたように、日本政府は、この従軍慰安婦問題については法的にはサンフランシスコ講和条約及びその他の二国間の関連条約によって解決済みだという考え方を取り、道義的責任を果たすべく努力しておるわけでありますけれども、これに対して戸塚先生は、これだけじゃ駄目なんだ、やはりその責任は解消されていないというふうにおっしゃったわけでありますけれども、国際法学者として、国際法的には治癒されていないのかどうか、治癒といいますか、サンフランシスコ講和条約ないしは二国間の条約によってこういう問題は解決されたと考えることは、法的に間違えているのかどうなのかということについてお尋ねしたいと思うわけであります。

○参考人(横田洋三君) 亀井先生、大変適切な御質問をありがとうございました。
 私も、先ほど戸塚参考人がおっしゃられましたいわゆる慰安婦の方々に与えた苦痛、精神的肉体的苦痛、これは当時の国際法に照らしても違法であったという判断をしております。戸塚先生が挙げられた強制労働条約違反、あるいは戦時国際法違反、さらには人道に対する罪、いずれにも該当します。
 問題は、その当時の国際法は違法な行為を国家と国家の間でどう解決するかを決めるという仕組みになっておりまして、個人の問題はそれぞれの個人が属する国家が国内的に処理する、つまり国際法と国内法を二段に分けて処理する、そういう考え方が圧倒的多数でした。
 そういう枠組みの中から見ますと、平和条約というのが国家と国家の間の戦争状態をなくし、戦争中に国家と国家の間で生じた違法行為に対する賠償、そういったような問題を全部一括して解決して、今後はもう戦争中のことは終わりにして二国間の友好関係を前進させようということを決める、これが平和条約でございます。正にサンフランシスコ平和条約、それから、平和条約ではございませんけれども、戦後、日本の植民地から独立した韓国につきましては、一九六五年に基本条約が締結され、それに付随した請求権問題に関する協定がございまして、大体サンフランシスコ平和条約と同様の請求権放棄の規定が明確にございます。一切の請求権を放棄する、その場合には、国家の請求権のみならず個人の請求権も放棄するということが明文で書かれております。
 したがいまして、第二次大戦中の国際法の構造からいいますと、違法ではあったけれども、法的に個人が国家に対して請求することはできませんので、国家間で問題を解決する、その解決は平和条約で終わっていると、こういう仕組みになっておりますので、その限りにおいては日本政府の説明は国際法的に妥当なものだと考えます。
 ただ、私は、日本政府はしたがって、請求権問題がもうないから、それ以上のことは日本政府は発言しておられませんが、私は、いわゆる慰安婦の方々に与えた損害、これは国際法違反だったという判断を明確にしております。
 以上でございます。

○亀井郁夫君 よく分かりました。
 ということは、やはり戦争中に起こったそういうことに対しての問題は国と国の問題で解決し、個人は自分の属している国との関係においてその問題を解決する、これは従軍慰安婦の問題ですけれども、と財産上の問題とかいろんな問題がありますけれども、含めてそうするのが国際法のルールだというふうに考えてよろしいわけですね。

○参考人(横田洋三君) そのとおりでございます。
 ちょっと付言させていただきますと、国内的にはそれぞれの政府に対して国内法上の裁判を起こすことができます。現実に、戸塚参考人も先ほどちょっと触れられましたが、日本の国内でもそういう意味での訴訟が起こっております、国家賠償法。それから、アメリカでも、実は現実に係争中の、この慰安婦問題を含めた強制労働被害者のアメリカ国内法上の請求権は起こっております。
 そういうことを考えますと、国内法上の法的な解決は現在まだ係争中であるという状況でございます。それは、答えが裁判所によって出されると、こういうことでございます。

○亀井郁夫君 次にちょっとお尋ねしたいのは、いつも出てくるのが、国連の人権委員会等でのいろんな報告が出されて、日本はそういう意味では国連のそうした決定に違反しているんだ、違反状態が続いているんだというふうなお話が多いわけですね。国連の人権委員会でのクマラスワミ報告だとか、あるいは人権小委員会のマクドガル特別報告等が、さっきも戸塚先生からのお話がございましたけれども、そういうことが出て、日本があたかも国連の決定に違反している状況が続いているんだというふうな形での説明があるわけでございますけれども、国連結成以前に行われたこうした一連の事案でもございますし、そういう意味で、国連の報告というのがそういう形で覊絆力を持ったものとして報告が国を縛ることができるのかどうなのか、これについて横田先生、国際法学者としてお教えいただきたいと思います。

○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。
 結論から申しますと、覊絆力はございません。ただ、無視していいというものでもございません。国連の場で任命された権威のある特別報告者によって、いろいろな人の意見を聞き、いろいろな事実を検討して出された報告書、これは関係者は真剣に受け止めるその責任はあると思いますが、法的に拘束力があるかと言えば、答えはノーでございます。

○亀井郁夫君 よく分かりました。
 その後、アジア女性基金につきましてはいろいろと横田先生自身が中心になってやってこられたわけでございますけれども、そういう意味では三百六十四名の方がこれを受けておられる。そしてまた、インドネシア、オランダ等については、受けておられないけれどもいろいろな施設の整備に努力してこられたという形で、国による状況もこういう形で違うんだろうと私は思うわけでありますけれども、そういった国のこの制度に対する評価というものが、国によって、例えば韓国、台湾、フィリピン、あるいはインドネシア、オランダと、違うのかどうなのか、その辺りを、それからまた、この対象になっていない国がまだたくさんあるんじゃないかと思うんですけれども、その辺りの国はどう考えておるのか、お教えいただければ有り難いと思います。

○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。
 大変適切な御指摘だと思います。国によって大分違いがございますが、さらに、同じ国の中でも意見が分かれているというのが実情でございます。
 全体として非常に日本政府の対応に現在でも厳しい意見を多く持っておられる方がいるのは韓国でございます。それから、地域としての台湾もかなり厳しい意見を持っておられる方がおられます。フィリピンは分かれておりまして、厳しい意見を持たれている方と、それから日本政府の対応を歓迎している方々とがかなりいらっしゃるという状況でございます。オランダは全体として対応を歓迎する空気の方が強く、反対の方もおられますけれども、その方たちは現在日本で訴訟を起こして法的に問題を追及するということをやっておられます。

○亀井郁夫君 ちょっともう一つお尋ねしたいのは、反対して拒否した方がおられるわけですけれども、そうした人の数というのは、受けている人は三百六十四名ですけれども、拒否している方の数というのは何人ぐらいいらっしゃるんでしょうか。

○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。
 その問題に対するお答えは大変難しいのでございます。と申しますのは、我々が直接被害者の方々に会って御意見を聞いたり、事実関係を確認して、確かにこの方たちが被害者であるということを確認する。しかし、申し出てきた人が全部ではございません。いろいろな事情で申し出てこられない方もいらっしゃいますし、それから、ある程度、それぞれの国ではあるいは地域では、政府又はNGOによっていわゆる慰安婦にされた方だと認定されているとしましても、その方たちがどのくらい本当に慰安婦として慰安所に長期にわたって拘束されていた方かどうかという確認の方法がないものでございますから、どうしてもラフな数字にならざるを得ません。それから、残念なことですけれども、もう戦後五十年以上たちまして、被害者の方たちもかなり多くの方がこれまでに亡くなっておられます。
 そういうことを考えますと、正確にどのくらいかということは申し上げにくいんですが、私どもが確認しております韓国、台湾、フィリピンの政府又は支援団体のNGOが確認している被害者であるという数字の、半数まではいきませんが、四〇%ぐらいの方がこの三百六十四という数字になるのではないかというふうに理解しております。

○亀井郁夫君 ありがとうございました。
 戸塚先生に一点お尋ねしたいんですが、ここにもあります二〇〇〇年十二月の女性国際戦犯法廷ということの判決を基にしていろいろと議論されておられますけれども、この女性国際戦犯法廷というのは、私の記憶では東京で行われたやつではないかと思うんですが、これは国連やその他だったらそれなりの権威のある法廷だと思うんですけれども、女性国際戦犯法廷というのは、だれがどういう形で判事を選び、どういう形で行われたのか、誠に不勉強で申し訳ないんですけれども、ちょっと教えていただきたいと思いますが。

○参考人(戸塚悦朗君) ありがとうございます。
 実は私、その記録の一部を持ってまいりまして、先生に是非お読みいただければと思いますが、先ほど御紹介したんですけれども、緑風出版というところから出ております「女性国際戦犯法廷の全記録」というものがありまして、その?でありますが、ここに判決が出ております。詳しくは、この?というものがございまして、この女性国際戦犯法廷がどのように開催されたのかという経過、そしてその内容、こういったもの、起訴状、判決文、すべてここに日本語訳されておりますので、それをごらんいただければと思います。
 これを組織されたのは、松井やよりさんほかの日本の女性団体の方々、バウネット・ジャパンというのがございますけれども、そこと、それから韓国、フィリピンの慰安婦問題の支援団体の指導的な立場にあられる尹貞玉先生とか、そういった方々が提唱されまして、世界の女性運動に呼び掛けられて組織されたものであります。そういう意味で、民衆法廷でございます。前例としてはラッセル法廷というのがございましたけれども、そういうものと同じでありまして、民間のものであるという点。
 ただし、そこに参加した検事団あるいは裁判官の方々は、ここに詳しく出ておりますけれども、国際的に大変著名な法律家の方々であります。その方々が下した判決の内容を私拝見いたしましたけれども、過去の国連、ILO等の議論、あるいは私どもの提出した議論、あるいは日本政府の言っておられる議論すべてを非常に広範囲にまた丁寧に調べておりまして、それに対して事実認定もしておりますし、法的判断もしておられる。
 大きく分けて二つありまして、一つは……

○委員長(小川敏夫君) 戸塚参考人、亀井委員の質問時間が過ぎておりますので、御答弁を簡潔にお願いします。

○参考人(戸塚悦朗君) 申し訳ありません。
 そういうことで、是非この本をごらんいただければと思います。
 ありがとうございました。

○亀井郁夫君 ありがとうございました。
 今のお話で、大衆、民衆運動家の方々を中心にして行われた法廷だということがよく分かりましたので。ありがとうございました。

○岡崎トミ子君 今日は、横田参考人、戸塚参考人、国際法の学者の観点からこの戦時性的強制被害者問題、解決をしようということで、発議者として、一人の議員としてこの問題、是非この法律は成立させたいという願いからお二人に本日お話を伺えますこと、大変心から感謝を申し上げたいと思います。
 昨日、私は東チモール議員連盟に所属をしておりますけれども、この東チモールから、二十一世紀の最初の独立国でございますが、ここからマルタ・アブ・ベレさんが、被害者の方でいらっしゃいます。一九四二年から三年半日本軍が駐留いたしましたけれども、その慰安所で、彼女は年齢がよく分からない、七十歳推定と言っておりますから被害者となったときの年齢もはっきりしておりません。でも、胸は大きくなかった、生理はなかった、そのころに被害に遭ったということを証言されていらっしゃいました。
 そして、私は今年、この法案の発議者とともに、まずは二月にインドネシアに参りました。その後、フィリピン、韓国、台湾に参りまして、被害者のおばあさんたちにお会いしました。本当に一様に年を取っている、本当にいつ亡くなってもおかしくない、そういう年齢の方で、一様に今日まで大変つらい思いを抱いて生活をされている。そして、忘れることはできない、何とかして正義を取り戻したい、これは共通して昨日のマルタさんも含めておっしゃっていたことだなというふうに思っております。
 今回の私たちの戦時性的強制被害者解決促進法案は前の通常国会で初めて審議することができましたが、その際、私は宮城県の選出の議員なんですけれども、宮城県の地元に宋神道さんという方がいらっしゃいまして、在日の被害者で唯一名のり出て裁判を闘っている方でございますが、この方が証言されたこと、多くの方々に、慰安婦とされたことは一体どんなことなのかということの証言をしていただきまして、これを私が代読をして御紹介をし、多くの方々の共感を得ました。
 この方の東京地裁の判決は、国際法違反を初認定しております。国際法違反は、そのほかの裁判や国連人権委員会、人権小委員会、ILO専門委員会などで指摘をされておりますが、国際法学者でいらっしゃって国連でも人権分野で活躍をされております横田参考人から、まずお伺いしたいと思います。
 確認でございます。ただいま既に亀井さんのときにもおっしゃっていたかと思いますけれども、国際法学者として例えば慰安婦制度は強制労働条約違反だったと考えるかどうか。大変時間が短いので、短くお答えいただきたいと思います。

○参考人(横田洋三君) 今の御質問に端的にお答えするならば、私は、そのとおり強制労働条約違反であったと考えております。

○岡崎トミ子君 ILO専門委員会はこの慰安婦制度は強制労働条約違反だというふうに言っていること。それはそうしますと、日本としてもしっかり受け入れなければいけない、その重みを持つものだというふうにお考えですか。

○参考人(横田洋三君) あらゆる法律違反、これはその違反をした人、そして国、団体、これは極めて重く見なければいけないものです。今おっしゃられた具体的なILO専門家委員会の意見も含めました強制労働条約違反という判断、そのほかにも、人道法、人道に対する罪等の違反もありますが、これはやはり日本政府として重く受け止めるべき性質のものだと判断しております。

○岡崎トミ子君 ILO憲章の三十七条には、ILO条約についての最終的な解釈権限は国際司法裁判所にあるとしております。ILOの見解が受け入れられないのであれば日本政府は国際司法裁判所に訴えることもできるという、この点に関しましてはどのようにお考えですか、可能性があるかどうかということについて。

○参考人(横田洋三君) 当然、可能性はございます。ただ、国際司法裁判所の管轄権というのは自動的ではございませんので、それぞれの条約が果たして日本に関して、ICJと言っていますが、国際司法裁判所に持っていって法的な解決が得られるものかどうか、これは綿密に検討する必要のある問題だと思います。
 ちょっとついでに申し上げますと、国際司法裁判所は二つの方式によって法的な判断を下すことになっておりまして、一つは、国と国の間の国際法上の解釈の違いを解決する場でございます。この場合には、日本の解釈とほかの、ILO条約、特に強制労働条約の当事国のどこかが意見を述べて、その意見の対立が生じたときに紛争を解決するために国際司法裁判所に持っていくと、これが一つでございます。
 もう一つは、国連等の機関が、どこかから問題が出てきたということではなく、この点についていろいろな人の間に意見の相違があるので国際司法裁判所の勧告的意見を求めるということを決議して求める場合がございます。この場合に勧告的意見を出すというのも一つの国際司法裁判所の役目でございます。この場合の勧告的意見は、問題を最終的に解決する判決とは違います。勧告的という言葉が示すとおりでございますが、やはりそうはいっても国際司法裁判所の権威ある判断ですので、その重みはおのずとあると考えております。

○岡崎トミ子君 奴隷条約違反も指摘されておりますけれども、確かに日本はこのときには条約を批准しておりませんけれども、既に慣習法だったのではないかと思いますが、その点に関してお願いします。

○参考人(横田洋三君) 奴隷は国際慣習法違反でございます。これは、日本は十九世紀の後半に、ペルーの船が横浜に入港しているときに中国人のクーリーをたくさん積んでいて、これを解放しました、日本の政府の判断で。これは最終的には仲裁判断で日本のやった行為は国際法上問題がないという答えが出ましたけれども、そのときの日本政府の考え方は、やはり奴隷は国際法違反であるという判断の下に行われたと私は承知しております。

○岡崎トミ子君 そうしますと、この条約違反ということになりますと、民間の機関のアジア基金でこの問題を解決、解除というふうにはお考えになりますか。

○参考人(横田洋三君) 今ちょっとおっしゃられた、条約違反とおっしゃられましたが、私は慣習法違反と思っております、この奴隷の問題は。
 ですが、それはそれとしまして、アジア女性基金のスタートは、政府が道義的な責任を認めてアジア女性基金を作り、国民と一緒になって被害者の方々におわびと償いの事業を進めると、こういうことでございますので、これで法的な問題があるとしてそれを解決するための方策ではなかったというのが私の理解でございます。
 したがいまして、答えとしましては、法的な問題に直接影響を与えるような措置ではなくて、それとは別に、年を取って健康も害しておられる方々がたくさんいる、そういう被害者の方々に対してなるべく早く、早急に何らかの、少しでも気持ちが和らぐ措置を取るべきであるという、こういう考え方に沿って取られた措置だと、こう考えております。

○岡崎トミ子君 慣習法だったということは、加盟していなくてもこの違反を正さなければならないというふうに日本はあるのではないかと思います。そして、国が国家としてこれに対応しなければなりませんから、私どもの考えでは、アジア基金では解除をされたというふうには思いません。
 その対応としてなんですけれども、これをなぜ国できちんと税金で対応しなかったのか。国家責任でやらなければならないというふうに考えておりますので、実は民間基金で行われましても、国家責任でないものは受け取れないという、そういう人たちが多く今御指摘のようにいらっしゃるわけです。大変混乱をいたしました。基金が媒介したからではないかというふうに思うわけなんです。
 そして、私は、先ほど申し上げましたように、インドネシア、フィリピン、韓国、台湾へ参りましたときに、多くの受取拒否者がいらっしゃることが分かりました。受け取った方の中でも少なからぬ被害者が新たな名誉回復の措置を願っておりまして、やはり解決をされていない。むしろ、横田先生のさきにお書きになったものを拝見いたしましても、受け取った方々にはおわびの手紙が大変誠実に書かれていて、そういうものを受け取ってそれは解決したかのようにもおっしゃる方が非常に多いわけなんですが、実は受け取った方も、これは国家として謝罪したものではないといって手紙を返しているという方もいらっしゃいますし、受け取っていない方がまず本当に多くいらして、その間に大変な問題になっているわけなんです。
 横田参考人は、実はこの書かれたものの最後に、不十分であると、この基金の問題については不十分であるというふうにお書きになっておりますけれども、不十分であるが前向きの対応だというこの評価ですね、どの点が不十分だったのかをお伺いしておきたいと思います。

○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。
 直接尋ねられた質問の答えの前に、前提で、岡崎先生がおっしゃられたことについてちょっと私の意見を加えさせていただきます。
 アジア女性基金の……

○岡崎トミ子君 手短にお願いします。

○参考人(横田洋三君) はい。簡単に申し上げます。
 アジア女性基金は国のお金で運営費が賄われ、また、医療・福祉事業につきましては全額国が出しておりまして、国がお金を出していないという一般的な表現は不正確だろうと私は理解しております。ただし、償い金の部分につきましては、これは国民から集めた寄附でやっております。その辺は明確に区別して認識した方がいいという考えでございます。
 国家責任につきましては、国と国の間の国家責任の問題は、先ほど申し上げましたように、平和条約等二国間の条約で解決済みという日本政府の立場は国際法上支持できるものであると考えております。
 ただ、不十分だと私が考えておりますのは、被害者の方々の多くが、まだ自分たちの気持ちがこれではいやされない、そしてアジア女性基金のお金を受け取れないということをかなり多数の人がおっしゃっているという状況をどうやって解決するかということをやはりやるべきであって、こういう方たちの気持ちを十分に受け入れるということを今後する努力を、日本政府も、私たち、アジア女性基金を中心に活動してきた我々も真剣に考えなければいけない、そういう問題だというふうに考えております。そういう意味で不十分だということでございます。

○岡崎トミ子君 もう本当に時間が迫ってきてしまいましたけれども、先ほど横田参考人がおっしゃいました、この法律の不十分さも指摘をされておりましたけれども、実はこの法律を作る前にも、当初、立法解決ができないかということを言われておりまして、そしてこれが作れるようになって現在この法案があるわけなんですが、この法案ができますときに、各国を本岡昭次参議院議員は回りまして、各国がこれは解決の突破口となるというふうにして支持をしているということでございます。
 この支持をされているということをもって私たちは法案を提出をしているということについて御理解をいただきたいと思いますが、戸塚先生に最後にお伺いしたいと思いますが、私が回りましたときに、各国でたくさんの支持を得ているこの結果としまして、フィリピンでは国会決議を次々に出しております。現在も出し続けております。それから、韓国でも生活安定支援法改正について今でも取り組んでおります。基金の受取をめぐって微妙かつ深刻な問題が発生しているということで、二重に受け取りたいという人の議論も起こっております。オランダでは、吉川議員が行っていらっしゃいまして、まだまだこれは解決していない、怒りで一杯だったということもよく分かりました。それから台湾では、これは立法院全体で法案支持決議が提出されまして、十月二日に提出されまして、これは議会全体で合意をしているという現状がございますが、こうした各国の被害国の動きに関しまして国際世論の広がりをどう考えるのか、お聞かせいただきたいと思います。

○参考人(戸塚悦朗君) お時間がほとんどないと思いますので簡略に申し上げるつもりですが、一つは、今の御指摘のとおり、各国で議会がこの法案を支持しているというのは非常に重要なことだと思います。国家責任の解除ということにつきましても幅がある程度ありまして、確かにあらゆることをやらなきゃいけないということは困難なんでありますけれども、例えばアメリカの議会が戦時中の日本人の収容問題で取った措置、これも非常に象徴的な行為でありますが、国家の行為であります。その他、台湾、韓国の軍事独裁政権の時代の重大人権侵害問題についての過去清算の立法、あるいは南アフリカにおけるアパルトヘイト下の重大人権侵害問題への立法等を見ましても、あるいはナチス・ドイツの過去清算の立法、こういったものも決して完全ではありません。しかし、国家が責任を明確な形で象徴的に取るという点で共通点があります。日本では、そのような過去清算がいまだに一度も行われていない。この法案が初めての法案でございます。
 そういう意味で、世界的にもあるいは日本の歴史の上でも注目すべき立法案でありまして、これがどうなるかということは今後の日本がどうなるかということを占う、あるいはアジアにおいて日本が生きていくことができるのかどうかということを占う非常に重要なものであります。
 この法案が歓迎されている、被害者団体、支援団体だけでなくて各国の議会によって歓迎されている事実というのは極めて重く見るべきであると。したがって、この法案が成立すればこの問題は解決に向かう、また他の問題も解決に向かう、つまりアジアにおいて日本が胸を張って生きていけるようになるという意味で極めて重要だと思います。
 そのほかにも国際的な問題ございますけれども、お時間がないと思われますので、そこでまとめさしていただきたいと思います。

○岡崎トミ子君 ありがとうございました。

○山口那津男君 公明党の山口那津男でございます。
 今日は、両参考人には貴重な御意見を賜りまして本当にありがとうございます。
 私がこの問題に初めて個人として接したのは一九六〇年代でありまして、従軍カメラマンの撮った写真が軍の検閲によって不許可になっていたものが数多くありまして、それが公表される機会がありました。様々な写真がありまして、日本が戦勝気分に浮かれていた当時と同時進行で、それとは裏腹の、その軍の言わば不祥事にまつわるような様々な実態が写された写真があったわけでありますが、その中にこの従軍慰安婦に関する写真もあったわけであります。慰安所に列を成して並ぶ兵士の姿とか、あるいは慰安婦と戯れる兵士の姿とか、あるいは軍とともに行軍する慰安婦の集団の姿とか、リアルに写されていたわけでありますが、そういう忌まわしい実態を見て、私は大変ショッキングな思いに駆られました。
 こういう言わば戦時下で起こった様々な問題についてどういう解決を図っていくかということは、今この問題に限らずいろんな場面で問題視されている、訴訟もいろんな形で提起されていると思います。そういう解決の方法の一つとして、立法的に解決するという試み、これはその意欲は私は歓迎すべきであると、そう考えております。
 ところで、国際法というルール、この基本的な原則から見た場合に、被害を与えた当時、それらの言わば違法な行為、不法な行為が行われたとすれば、その当時の法律、国際法によって裁かれる、あるいは国内法が存在すればそれによって裁かれるというのが法の原則であって、後に作ったルールで裁くということはできないだろうと思います。
 そうすると、この従軍慰安婦問題が起きた当時の国際法の基本的な考え方として、この被害者なる個人が加害側、加害者個人はもとよりなんですが、その加害者の所属する国家に対して賠償ないしは補償を請求できる権利が確立されていたと見ることができるかどうか、この点の基本ルールについてどのように御理解をされているか、お聞かせをいただきたいと思います。
 横田参考人、そして戸塚参考人、順にお答えいただきたいと思います。

○参考人(横田洋三君) 委員長、ありがとうございます。
 結論的にいいますと、当時の国際法の圧倒的多数の考え方は、国際法は国と国の間の権利義務を定めており、先ほどから国家責任ということが言われておりますが、この問題の解決も国と国の間の条約その他で解決されるという仕組みになっておりまして、個人は、被害者であれば、その被害者としての権利がもし侵されているとすれば、それは国内法上の何らかの救済手段を求める、これが仕組みでございます。
 個人に与えた損害というのは、平和条約におきましてそれを含めて相手国に賠償という形でもって解決をする、あるいはお互いに相手に被害を与えたということでそれを相殺してお互いに請求権はもうやめようという解決をする。平和条約の場合にはそういう解決を大体は取りました。アジアの近隣の国に対しては、その後賠償を日本はしました。この賠償の基準の一つは、被害者個人がどのくらいの被害を負ったかということが念頭にあって交渉が進むということに理解しております。したがいまして、その後の問題は、国が日本から賠償金を受け取って、その受け取った賠償金を今度は被害者がどういうふうにその国の中でもって被害を補償されるか。これは、その国の国内法上の問題と、こういうとらえ方をしていたのが当時の国際法であったと思います。
 ただ、私が申し上げましたように、日本が国際法違反を起こしたか起こさないかという問われ方をすれば、これは明らかに侵しているというのが私の答えでございます。個人は、その当時は侵された被害者なんですけれども、国際法上の国家に対する、外国政府に対する国際法上の請求権を持っていたかといいますと、それは当時の国際法としてはなかったというふうに言わざるを得ません。ただし、この点は、その後国際法が発展しておりまして、現在の国際法は少しずつその点は変わってきております。

○参考人(戸塚悦朗君) ありがとうございます。
 極めて的確な御質問をいただきまして有り難く思っております。また、同時に非常に難しい問題でありまして、私のできる限りでお答えしたいと思います。
 この問題について、私は横田先生と多少違う考えを持っております。一つは、実体法上の問題と手続法上の問題に分けなきゃいけない。これは、国際法上もどういう行為が国家犯罪あるいは国際犯罪あるいは条約違反になるかという、その点についてはその当時の国際法を見なければならないことは先生のおっしゃるとおりでありまして、当時、奴隷が国際慣習法であったと、奴隷禁止がですね。あるいは強制労働条約に日本が拘束されていた。あるいは、当時、既に人道に対する罪という考え方が存在していたというようなことは当時の問題であります。これは今、横田先生も当時の国際法に違反していた事実をお認めになっておられますので、間違いのないことだと思います。
 その場合に、国家が何をしなきゃいけないか。これは国家責任の問題でありますが、これも実体法上、補償その他謝罪、真相究明、被害者の処罰、こういった、あるいは将来の同様の行為が起こらないようにする再発防止とか、これは当時からそういうルールがあったわけであります。ただし、今、先生のおっしゃった個人の請求権がどうであったかということは、非常に問題が難しいんでありますけれども、問題があると。それがすべて国と国との間で請求権の放棄まで含めてなされるのが実態であったかどうか、これは議論してみなきゃいけない。
 一つは、第一次大戦当時の戦後処理があります。このときには、国家間の賠償問題とは別に個人の請求権をどうするかということが非常に大きな問題になりまして、仲裁裁判で解決するという制度ができました。これは一九一九年のパリ平和会議で議論をした結果なんでありますけれども、なぜそうなったかというと、実は一九〇七年のハーグの平和会議で陸戦法規に関する条約が結ばれておるわけでありますけれども、この条約の三条に個人の請求権が認められているのではないかという条文がございます。これは日本でもカルスホーベン先生が裁判所に鑑定書を出しまして、個人の請求権が明確にあったということを言っておられます。
 したがって、国際法上も個人の請求権が当時からあったんだと、国家に対する。これは議論の余地のある問題。もっとも、手続上それをどう実現するかと、国際法上。これは、横田先生がおっしゃったように国家間の交渉が主でありましたし、国内裁判で勝てなければ実現はできないということだったことはそのとおりだと思います。しかし、手続法上も国際仲裁によって解決しようというような試みもあったと。
 ところで、その手続法はいつの手続法を使うのかという問題なんですけれども、実はこれは現在の手続法を使わざるを得ない。これは裁判を見ていただいても分かりますけれども、実体法は昔の行為当時の実体法を使います。しかし、裁判所は現在の裁判所を使う。これはどこの国に行っても当たり前であります。したがって、現在の国際法上こういった問題を議論できる場所、それは国連の人権委員会であり、人権小委員会であり、奴隷制部会、あるいはILOの専門家委員会、こういうような実際にそういう個人の請求権の問題を議論できる場所ができてきた。そこが強制力ある判決みたいなものを出せるわけではありません。しかしながら、これは横田先生もお認めになっているように、そこの見解は重みを持ったものとして受け止めなきゃいけない。
 それで、最後でありますけれども、どうしても法的に問題があるということになったら、国際司法裁判所は日本も認めております、ここで個人の請求権の問題を国家が持ち出すということはできるということを、これは国際司法裁判所規程を批准する際に日本の国会で議論して、政府が答弁しております。したがって個人の問題も国際司法裁判所で議論ができるということでありまして、最終的にはそちらの見解を伺うのが良いと。もし日本政府が国連やILOの方々が言っておられることは間違いだということであれば、国際司法裁判所に持ち出して議論をすることは十分可能である、そういう手続は発達してきているというふうに申し上げたいと思います。

○山口那津男君 戦後の国際法の発達について両参考人からも言及をいただきました。国際刑事裁判所というのが批准、発効されまして、今後進んでいくことになります。我が国がこれを批准していないのは誠に残念でありますけれども、この刑事裁判所規程の中で、七十五条というのがありまして、一項におきましては、裁判所が被害者に対する賠償について原則を定めることができると書いてあります。そして二項には前段後段がありまして、二項前段で、有罪判決を受けた者に対して賠償に関する命令を出すことができると、こう書いてあります。そして二項後段では、賠償の裁定が信託基金を通じて行われるよう命令することができると、こう書いてあるわけですね。これは、刑事法廷における刑事判決を出す手続規程でありますけれども、そこに唯一民事賠償についての規定も設けられているわけであります。
 私は、これは被害者個人の賠償について言及した明確な国際法として注目すべき内容だと思っております。これについて、特に被害者個人に対する賠償に言及するとともに、信託基金を通じて行われるということも書いてあるわけであります。私は、この従軍慰安婦の問題が直ちに戦争犯罪と断定できるかどうかはいろんな意見があるとは思っておりますけれども、非常に参考になる規定だと思うんですね。ですから、これがこれからの国際法をリードする規定の一つだと、こう考えれば、私はこれを参考にして、これから何らかの立法的な解決、あるいはその他の事実上の解決を図っていく道が開けるのではないかと思っているわけであります。
 この国際刑事裁判所規程七十五条、今私が申し上げた趣旨に関してどのような感想をお持ちになられるか、両参考人からそれぞれお伺いしたいと思います。

○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。
 大変重要な問題提起だと思います。
 国際刑事裁判所は今年の七月一日に発効いたしました。御指摘のとおり、日本はまだ批准しておりませんが、私も早急に日本が批准することを希望しております。
 これは、そこに書かれている三つの犯罪、すなわち集団殺害の罪、それからいわゆる通常の戦時国際法違反、それから人道に対する罪、この三つのカテゴリーに属する犯罪を犯した個人を処罰する場所でございまして、国家を処罰する場所ではございません。これがまず第一点、重要な点でございます。
 それとの関連で七十五条の御指摘がございましたが、個人で違法な行為を行ってこういう犯罪を行って被害を与えた場合には、その人は刑事責任を負うだけではなくて賠償責任も負うと。人によっては財産を持っている人がいますから、刑事罰だけではなくて、被害者に対しては、その人の財産をやはり被害者の気持ちを和らげるためにでも使うべきだという考え方がその背景にはあると思います。
 これからの国際社会は、こういう形で個人の責任を直接追及する、そしてまた被害者を直接請求権を持つ主体として扱うという方向に向かっていることは事実でございまして、国際刑事裁判所は正にそれの画期的な一つの出来事であったと思います。
 ただ、この裁判所は、裁判所ができた今年の七月一日以前に起こった犯罪につきましては処罰できない、管轄権を持たないという規定になってございますので、いわゆる第二次大戦中の性的強制被害者の方たちに対しての問題解決には当面ならないと考えております。

○参考人(戸塚悦朗君) 私も横田参考人の意見と全く同様の見解を持っておりまして、この条約が批准されてもそれは慰安婦問題に適用されるものではないわけでありまして、直接には活用できない。しかしながら、将来の同じようなことを起こした場合には適用があるわけでありますから、再発防止という点では十分な有効なものになるだろうと。したがって、この問題の関連としてやはりこの条約を批准していくということは、日本が国家として慰安婦問題に対する国家責任を取っていく一つの方法であるというふうに考えます。
 また、その解決方式ですね。これについては、ここで提案されているようなものを日本が自ら受け入れていくことはできるわけであります。例えば、非常に極端だと思われるわけでありますけれども、刑事責任についても処罰をもし本気で日本が対応しようとすれば、訴追事項というのは訴訟条件でありますので、これを撤廃するという立法も可能でございます。
 したがって、そこまで進んで日本が自らこういうような問題に対して過去の問題も対応しようとすれば可能であるというふうに申し上げたいと思います。

○山口那津男君 ありがとうございました。

○委員長(小川敏夫君) 参考人にお願い申し上げます。
 各委員の質疑時間が限られておりますので、御意見は簡潔にお願い申し上げます。

○吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。
 お二人の参考人に心から感謝いたします。
 この慰安婦問題を何とか解決したいということで、参考人質問が今日実現いたしました。これは当委員会が真剣に取り組んだ結果であり、それにふさわしい今質疑が行われていると思います。
 横田洋三先生にお伺いいたしますが、先生は、強制労働条約違反、人身売買禁止条約違反あるいは奴隷条約、慣習法違反が明確にあったということをおっしゃいました。これは国際法学者として当然とも言えるんですが、政府が、つい最近の質問でも、強制労働条約違反に当たるんじゃないかと私が繰り返し聞いても、言を左右にして認めないんですね。だから、当時こういうことで国際法に違反していたということを明確に認められたということに対して私は良かったなと、当然のことながら良かったなと思うわけです。
 そこで伺いますが、国際法に違反しているということは違法状態が今も続いていると、このように理解してよろしいのでしょうか。端的にお願いします。

○参考人(横田洋三君) 答えの方から申し上げますと、違法な状態は続いておりません。ただ、違法な行為の結果、被害者が存命中で、しかも心身ともに傷付いたままの状況がかなり残っているという状況、これはございます。これは一応区別して考えた方がいいと思います。
 日本はもう、第二次大戦後、いわゆる慰安所を作ったり慰安婦を強制的にそこに連れてきたり性的な奉仕をさせたりというようなことは一切しておりませんので、違法な状態は今は全くないということでございます。

○吉川春子君 日本がこういう国際法に違反したという行為を行って、その違法状態が解除されたのは、なくなったのはいつの時点ですか。

○参考人(横田洋三君) 違法な行為が行われなくなった時点で、私は正確には分かりませんが、少なくとも、終戦によって日本の軍隊が解散させられましたが、もうその時点では違法な行為はなくなっていると思います。

○吉川春子君 違法な行為がされなくなったということと、違法行為を犯してその違法の問題についてちゃんと決着が付いていないということとは別ではないでしょうか。

○参考人(横田洋三君) 御指摘のとおりでございます。私もそういう考えで、御質問が、違法な状態が続いているかどうかという御質問に対しては続いていない、それがいつ終わったかということにつきましては遅くとも終戦のときに終わっている、日本の軍隊が解散させられた時点では終わっていると、こういうふうに了解しているということでございます。
 しかし、その違法な状態の結果が続いている状況にあったということはそのとおりでございます。

○吉川春子君 この違法な状態の結果が現在も続いているとすれば、これに対して日本は何らかのこれをなくする措置を取らなくてはいけないのではないでしょうか。

○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。そのとおりでございます。
 一つは、国と国の間の関係での先ほどから出ております違法な行為に対する国家責任の問題でございまして、国と国の間の関係につきましては平和条約等でそれぞれの国との関係は解決しているという日本政府の立場がございまして、これは国際法的にそのとおりだと言わざるを得ません。
 問題は、被害者がまだ心身ともに傷付いたまま残っておられたということ、そして今でも残っておられるということ、この点をどうするかというのが御指摘のとおりの問題でございまして、私もその被害者の方々に何かをすべきだという気持ちは強く持っておりました。したがいまして、この問題が提起された人権小委員会の場でも発言をし、被害者の方々にできるだけその気持ちを少しでも和らげていただけるような方法はないかということを考え、それなりに人権小委員会でも発言し行動してまいりましたし、日本政府が、先ほど不十分だと申し上げましたが、しかし前向きの行動としてアジア女性基金を一九九五年に作って、以後は被害者の方々の気持ちを少しでも解決できる方向に向かう活動とするようにアジア女性基金にもかかわってきた。
 アジア女性基金は、そういうふうに被害者の方々の気持ちを少しでも和らげるための方策はないかという、そういう私どもの努力の一つの現れ方であったということを申し上げさせていただきます。

○吉川春子君 アジア女性基金は明確に道義的責任ということで行われてまいりました。そして、今、先生が御指摘のように、違法の結果があるということですので、アジア女性基金でもってその違法な結果に対してその責任を果たしたというふうには言えないのではないかというふうに思いますし、また、国と国との間で戦争責任を解決してきたということは私も認識はしておりますけれども、個人の請求権については日本政府もあるんだというふうについ最近の国会でも答弁しております。
 これは、オランダの外務相スティッカーと日本の吉田全権大使との間に交わされました書簡等にもそういうことがあり、それを全体的に及ぼしていると思いますが、その問題には今日は入る余裕がありませんので、全く個人の請求権がないんだということは政府自身もそういう立場を取っておりませんので、明らかにしておきたいと思います。
 そして続けて、横田参考人、お伺いいたしますけれども、アジア女性基金の償い事業はこの夏に打ち切られました。そして、そのアジア女性基金を受け取った人は台湾、フィリピン、韓国の被害者の四割ぐらいだろうということを先ほど言われました。ということは、あと六割の方が、参考人の立場からしてもあと六割の方が受け取っていない、拒否している。とりわけ一番深刻なのは、韓国の政府そして被害者が圧倒的多数が拒否されているということにあるわけでございまして、今後どうしていったらいいのか。
 もうこのままアジア女性基金ですべて終わりではないということは官房長官も繰り返しおっしゃっております。このアジア女性基金ですべてを終わらすことができなかったとすれば、私たちはアジア女性基金を全面的に否定してという立場ではなかったんですけれども、立法解決という一つの方法を出しました。
 それで、戸塚参考人、横田参考人両方に伺いますけれども、今後、こういう残された問題、アジア女性基金では解決できなかった問題についてどのようにしていけばいいのか、前向きの御意見を伺わせていただきたいと思います。

○参考人(戸塚悦朗君) 今後どうすればよいかということなんですが、一つは、私は、この解決に向かっての日本人の行動というのは、私も含めましてプロセスの問題だと思っております。できる限り被害者の方々の気持ちを酌む、そして被害者の方々の同意の得られる解決に向かって最大の努力をする、日本側でここまでしかできないんだからそれを受け取れということを言ってはいけないんだと、そこが一番の大きな問題だと思います。
 横田先生も大変御努力いただいて、確かに道義的責任を一定程度取るということで民間基金が努力された、これは私も認めております。関係者が善意であったことも認めております。しかし、こういう立法の法案が提案されていないという状態ではこれしかないというふうに思われたのも無理がないと思われるんでありますが、だから、不可能なんだからこれを受け取ってくれということは、やはり被害者にとっては、受け取る方は受け取りますけれども、拒否される方も出てくると。したがって、全体として被害者の方に受け取っていただける方法を考えなければいけない。
 そこで出てきたのがこの立法でありまして、立法の提案が被害国あるいは被害者で民間基金を拒否された方々から歓迎されているという事実は極めて重い。これを、私は更に被害者側と対話を継続しながらこの審議を続けていただく、この審議を続けていただくことそのものが私は被害者側に対する謝罪の行為であると。このプロセスを明確に被害国側に示すことで被害国側が納得してくださる。
 どのような立法をしても、本当に被害者の被害は返ってきません。結果として表れるのは被害者側の許しです。この許しを得るために私たちは何をしなきゃいけないのか。これは被害者側と誠実に向き合う、被害者側の言われることを熱心に誠実に最大限の努力をして実現しようとするというそこにあると思います。
 アジアと日本が和解をするというためにはあらゆる行為をしなきゃいけない。その場合に被害者側の気持ちを最大限に尊重する、押し付けない。そして、私はだから、この立法でも被害者側が拒否されるんであればすべきでないというふうに考えております。現在のところ歓迎されておりますので、この立法を進めていただく、そして慎重な審議の上成立させていただく、これが最大の被害者に対する謝罪のプロセスだというふうに思っております。

○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。
 私も戸塚参考人が言われた継続的、真剣な継続的対話とお互いの理解の促進を行う、これは極めて重要な問題だと思います。これは私も私の立場でこれまでやってきましたし、また続けたいと思いますし、また日本政府もできるだけの努力をしていただきたいと、そういうふうに思っております。
 法的な問題ですが、被害者の方々及びその支援者が国連の場、とりわけ人権小委員会の場で明確に述べておられる立場は、日本政府が法的責任を認めて、法的な謝罪と法的な補償をすること、これです。そして責任者を法的に処罰することなんです。
 戸塚先生は先ほど、立法が法的答えになるというおっしゃられ方をしましたが、私の理解しているところでは、それはそれで一つの法的対応ですが、被害者及びその支援団体が要求している法的責任を認めるというのは、これから作る法律、立法による解決という意味ではなくて、既に存在する法律の下で違法行為を行ったんだから、法的にそれを認めて謝罪をし、現在あるあるいは過去にあった法律に基づいて、国際法に基づいて補償をすべきだという要求、そしてその当時の国際法に基づいて責任者を処罰すべきであるという、こういうことを要求してきているわけでございます。これが私が人権小委員会で毎年繰り返し聞いている支援団体の方々の発言と考えていいと思います。
 そうしますと、その点については今の法律案も答えを持っていないというふうに私は認識しております。したがいまして、戸塚先生もちらっとおっしゃいましたが、これで完全に解決するかどうかということはまだ分からないという状況であろうかと思います。
 私の考えでは、法的な答えは、現在係属中の様々な裁判、日本やアメリカで行われている裁判、これに一つ一つ答えが出ていくプロセスの中で法的な答えは探さざるを得ないという、そういう理解でございます。

○吉川春子君 私どもが提案しております法律は、一つは、私が直接行きましたインドネシア政府そしてオランダ政府の代表の方も評価をしていただいております。オランダは確かにサンフランシスコ条約で決着済みという立場を取っておりまして、しかしながら、この法律についても非常に期待を持っております。
 それで、私たちの法案は、当時の実行行為者について処罰せよと、こういう内容は含んでおりません。それは、それをもってしないと完全に法的解決ができないんだとおっしゃる横田先生の御発言の意図がどこにあるのか私は分かりませんけれども、例えば慰安婦被害者の皆さんが心の傷、トラウマに悩んでいる、そして日本政府が全然謝罪をしてくれない。先ほど横田参考人のお話でもありましたけれども、アジア女性基金を受け取る人にはお手紙が渡っているんです。でも、受け取らない人には渡っていない、こういう問題もありまして、本当の意味で日本政府があのときは本当に戦争としてこういうことをやって済まなかったという態度を表明するに至っていなくて、その点についてもやっぱり謝罪も行われていない、そしてましてや政府のお金による補償ということも行われておりません。百歩譲って、医療・福祉支援事業がこれが政府の謝罪の表れだという形で法的に取れればよかったと思いますが、そういうことも取られていない。そして、償い金の二百万は民間のカンパだというところで、本当に日本が法的な責任を認めてそれに基づく行為が行われていないということに対して、多くの被害者、被害国は拒否反応を示しているわけです。
 ですから、私たちの法律がパーフェクトだとは思いませんけれども、今、日本の憲法、条約、そして法令の中でぎりぎりなし得るものとして出しておりますので、実行行為者まで処罰せよという法律にはなっていないから不完全だということはちょっと私は思いません。
 それで、最後、もう時間がなくなりましたけれども、なぜ政府はなかなか解決できないのか、毎年国際的な批判にさらされているのか、その理由について、一言ずつしかもう時間がありませんが、答弁をお願いします。

○委員長(小川敏夫君) 時間が来ていますので、簡潔にお願いいたします。

○参考人(戸塚悦朗君) その問題、非常に難しい問題でありますが、なぜ解決できないのか、これは、一つは国際性の欠如だと思います。それから次は、私一番大きいと思うのは、日本が極めて男性中心的であるというところにあると思います。女性に対する犯罪を認めると日本社会がひっくり返る、それがやりたくないということではないかと思います。それが二つですけれども。
 それから、今の処罰せよという問題があるということでしたけれども、これについて非常に強い反応があることは間違いありません。しかし、不処罰の場合どうすればいいか。国際法上、補償すればよろしい、不処罰に基づく補償と。それはこの法案に含まれているというふうに私は考えております。ですから、拒否反応をそんなに強く示される必要はないのではないかと思います。

○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。
 責任者処罰の問題につきましては、戸塚参考人も言われましたが、被害者及び支援団体が強く要求していることであることは、これは確かでございまして、国連の場で要求している項目の一つにございます。
 したがって、いわゆる市民法廷もそういう要求の流れの中で出てきていることでございまして、私が意図しているわけではなくて、私は、そういう方々の主張をここで紹介させていただいたと、その主張に沿えばこの法律案では依然として問題は残されていると。今、先生がおっしゃったとおり、これでも完全ではないとおっしゃられました。そのとおりだと思いますが、それは私の認識と一致しております。
 そこで、私どもが国連で審議をし、日本政府に早く対応してほしい、一九九五年の時点で対応してほしいと考えて、アジア女性基金が完全な答えではないとしても、とにかくあの時点で存命中の、しかも受け取る意欲のある方がいらっしゃれば、その方たちに対しては当面何かをすべきだという、そういう気持ちで、不完全だけれども協力していこうという気持ちになったそのときの気持ちは、今先生がおっしゃった気持ちと同じでございます。
 ですから、私は、アジア女性基金の答えをまず踏まえて、あのときそういう気持ちでこれを作ってここまでやってきた、この先どうするかということになったら、やはり先ほど申し上げたように、法的な問題は法的な場で解決、しかし、私たちとしては継続して誠意を示し続けるということでないかと思っております。

○島袋宗康君 国会改革連絡会の島袋宗康でございます。今日、お二人の先生方、大変お忙しい中を御意見賜りまして、ありがとうございます。
 まず、横田参考人にお伺いいたします。
 当内閣委員会調査室が、一九九八年東信堂刊の大沼・下村・和田編「「慰安婦」問題とアジア女性基金」より引用して作成した「「慰安婦」問題と国連の人権保障」という題の論稿の中で次のように横田先生、述べられております。
 御自身も参画された経験を持っておられる国連の人権関係機関での審議状況を踏まえて、
 「アジア女性基金をとおして「償い金」と首相の反省とお詫びの手紙を被害者ひとりひとりにお届けするという活動は、法的責任の問題に対する答えではないという点と政府のお金が「償い金」の部分に含まれていないという点で不十分である。しかし、医療・福祉事業のかたちで被害者の方たちには政府の予算からも相当の額が支出されること、および首相の手紙の誠実な内容、さらに尊厳事業や調査・研究活動などは意味のある活動である。全体としては被害者も高齢になられて一刻も早い対応が要請されている状況を考慮すれば、このような日本の対応は前向きの措置として評価できる」というものであると思います。
と述べておられます。
 これは、国連人権関係機関における慰安婦問題に対する主要な論調であると同時に横田先生御自身の御見解でもあると理解できるわけでありますけれども、このような国連人権関係機関や横田先生の御見解にもかかわらず今なおいわゆる従軍慰安婦問題が解決されないままに終息が、要するに終息しない真の原因がどのような点にあるというふうに、終息しないということについてどういうふうな点が問題であるのかということをお尋ねいたします。

○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。
 島袋先生の御指摘、私、今、先生が読んでいただいた部分、私が書いた部分でありますが、聞いていまして、今の気持ちと全く変わりがありません。そのときの、書いたときの気持ちのまま今もそう思っております。
 そこで、先生の御質問のポイントでございますけれども、なぜこれだけ誠意を持ってやってきたけれども十分に理解が得られないのかと。私どもとしてはできるだけの努力をして、被害者の方々お一人お一人にできれば説明したい、それから反対運動を続けておられる方とも対話をしたいということで、いろいろな形で被害者の方への接点を求め、それから反対運動をしておられる方との対話を求めてまいりました。一部はそれで実現しまして、私どものやってきたことを説明することによってかなり理解を得られた部分もございます。そういう人たちの中には、先生たちのやってきたこと、それからアジア女性基金がやってきたことを自分はちょっと誤解していたというふうに率直におっしゃる方もおられます。
 なぜ反対運動がまだあるのかということにつきましては、大変残念でございますけれども、私どもの誤解を解く努力不足と、それから、国境を越えての問題ですので、お一人お一人にじかに説明をしてすべての誤解を解くことができないという、そういう限界のある中での活動でございまして、これはしたがいまして更に継続して私たちは対話を続けていきたいと、そういうふうに思っております。
 結論的に申しますと、なぜそうなのかということについては、私は私たちの理解を求める努力がまだまだ足りないんだと、こういうことでございます。

○島袋宗康君 受け取っていない方々の気持ちを大体考えてみますと、やはり日本政府はこの問題を謝罪し補償しなければ正しい信頼関係は生まれないというふうなことが大方の方々だと思うんですよ。したがって、先生がおっしゃるように、基金を設けて四〇%の方々が受け取ったにしても、まだ日本人、日本政府に対するいわゆる信頼、そしてこれからアジアに対する全体的な信頼関係というのは生まれ出てこないんじゃないかというふうな、私たちはそういう考えを持っているわけです。
 したがって、村山首相時代にそういった政府による謝罪、いわゆる謝罪と補償金じゃなくして民間に任せた、民間から調達したというふうな点で、やっぱりこれは政府の責任を果たしていないんじゃないかというふうなことが今問われているんじゃないかと思いますけれども。
 先ほど来いろいろ説明ありますけれども、やはりその点についてアジアの方々が本当に日本政府を信頼し、あるいは日本人とアジアの皆さんと本当にこれから二十一世紀に向けて信頼関係を築いていくというふうなことを踏まえていくならば、やはり皆さん方の御意見を十分尊重して、政府の責任においてこれを謝罪し補償していくというのが私は基本的になされるべきだというふうに思っているんですけれども、再度お願いします。

○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。
 私は、基本的に今、島袋先生がおっしゃられたことに賛成でございます。
 私どもは、アジア女性基金の活動を協力して支持するという立場で、できるだけ反対者の方々の理解を得るように努めてまいりまして、反対者の方々もいろいろな御意見があることは承知しておりまして、その中で、比較的これまで誤解をしていたと、先生がおっしゃったことでよく分かりましたという方もかなりいらっしゃることは事実でございますが、私が期待したいのは、これから日本政府もいろいろな問題についてやはり、この問題だけではありませんが、いろんな問題についても関係者にきちっと説明して、日本政府の意図を理解してもらう努力をするということは大事だと思いますが、特に国際的な影響のある外国の国籍を持つ方たちが被害者で多くいらっしゃるということを考えますと、そういう方たちに対して日本政府として理解を得るための努力を一層続けてほしいという気持ちもございます。それもやはり今後の問題の解決に結び付くのではないかと考えております。

○島袋宗康君 先ほど岡崎委員からお話がありましたように、東チモールの方が非常に強制的にいわゆる従軍慰安婦として大きな被害を受けたというふうなことで私らに説明がありましたけれども、本当に先ほどありましたように、自分の年齢さえ分からないというふうなことで、もう大変な状況ですね。これはもう日本の軍隊そのものが大きな被害を与えたというふうな点では大変人権侵害だというふうに思われます。
 それで、その説明の中で、東チモールだけでも六百人か七百人の慰安婦がおっただろうと。実際に、また今本当に名のりを上げるということが大変難しい状況でありますけれども、三十名ぐらいはその中に名のりを上げた人がおると。しかし、それもやはりいろんな点で、政府に対する要求といいますか、補償要求というものは十分な組織を作っていないためにうまくいっていないというふうな説明でありますけれども、政府としてやっぱりそういった具体的に、例えば東チモールだけでも六百から七百人の慰安婦がおったと、そういったことを十分把握して、そしてその上でその基金というふうなものを、私は基金を認めるわけじゃないけれども、そういうふうな本当に大所的な人数を把握した上で基金というものを作って、そしてやるべきじゃないかという、これは基金を賛成するわけじゃないということをはっきり申し上げていますけれども、そういうふうな仕組みを政府として取るべき責任があるんじゃないかというふうに思いますけれども、その点についてお伺いいたします。

○参考人(横田洋三君) 私は、七年、八年前に基金を作って、それに協力するという立場を取りましたので、その点では島袋先生とは違いますが、恐らく被害者に会って感じられた気持ちは先生と同じでございます。
 私もそのころ十数名の被害者の方とかなり細かいお話を一緒にさせていただいて、その経験のひどさに私もショックを受けました。被害者の方たちの気持ちを一人一人伺いますと、これは早急に何かしなければいけない、日本の国民の義務だと私は自分で思いました。私は政府でありませんが、自分で思いました。それが私のこの基金にかかわるきっかけでございます。
 東チモールの問題、それからさらにほかの国、地域、今、朝鮮民主主義人民共和国との国交に向けての交渉が順調に進む状況ではありませんが、しかし一応そういう努力は始まっているわけですけれども、そこでは当然まだ未解決の問題としてこの問題が一つの議題になるとは考えられるわけですね。
 こういう問題について、私は、政府は今から七年前にアジア女性基金を作って対応するという決断をし、我々もそれに協力したわけですので、私の意見は、こういうまだ対応していない問題についてもアジア女性基金を通して答えを出せるような道を探るのが政府としては一貫性のある対応ではないか、こういうふうに考えております。これは私の意見でございます。

○島袋宗康君 それじゃ、戸塚参考人にお伺いいたします。
 この論稿の中で、女性のためのアジア平和国民基金の償い金によっては被害国、民族、被害者、支援団体全体との和解を実現するものとなっていない事実を直視し、法的責任の問題を将来の課題とし、今、暫定的国家補償の支払すべきとするICJ、国際法律家委員会勧告の実現を図るべく日本政府が被害者個人に対し暫定措置金を支給することができる議員立法の成立の必要性について説いておられます。
 そのお立場から、現在、当内閣委員会に継続している戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案をどのように評価しておられるのか、その重要な論点についてお述べいただいた上で、いわゆる従軍慰安婦問題の現状についてどのように御認識なさっているのか、お伺いいたします。

○参考人(戸塚悦朗君) ありがとうございます。
 私のその時点で書いたものは非常に不十分でありまして、この法案の方がはるかに進んでいるという点で高く評価しております。
 第一は、私のその時点では暫定でありました。しかし、この法案では、それは最終的な措置になっております。それから、この法案は公的に被害者に対して国が金銭を支給するという点で極めて明確であります。国会が行うという点でも明確であります。政府が行うという点でも明確であります。
 先ほど、横田先生から言われた誤解を受けていたというその誤解を受けやすかった最大の原因は、民間基金を間に入れることによって訳が分からないようなものになってしまった、政府の行為ではないようになってしまったというところにあると思います。国家が、国会が関与し、そして政府が支払うということで極めて明確になっているという点で非常に優れているというふうに思っております。
 最大の点は、謝罪という言葉がある。私が提案した当時は、その謝罪という言葉がなかった。実は、被害者側と何年にもわたって私は交渉をいたしました。自分の提案を持って韓国に行きまして、二年間ソウルで被害者側と協議をしましたけれども、この秘密協議の結果、結局拒否されました。拒否されて私は非常に意気消沈していたわけでありますが、しかし、まだ希望はあると。その拒否された状況を実は法制局の皆さんにお伝えしました。法制局の皆さんが極めて熱心な作業の結果、この謝罪という言葉を入れた。これが最後の瞬間に韓国の支援団体が、日本に対するジャパン・バッシングの切り札を失うということもあるのに歓迎した。これは極めて大きなことだと思います。ですから、その点で非常に優れているというふうに評価いたします。
 しかし、そうなってきた原因はやはりプロセスにあるだろうと。これは本岡先生始め議員の先生方が被害者側を丁寧にお訪ねになって、懇切にこちらの意図も説明し向こうの意見も聞いて、その上ででき上がってきた、そのプロセスが最大の謝罪になっているというふうに私は思います。
 この審議もそのプロセスの一つであります。これが理解されれば、必ず被害者側全体によって受け入れられると。したがって、この法案は解決の端緒になるというふうに私は考えておりまして、高く評価しているというふうに申し上げたいと思います。

○島袋宗康君 私たちも今、先生の御期待に沿うように頑張ってまいりたいということを表明して、時間でありますので、終わります。

○田嶋陽子君 戸塚参考人にお伺いします。
 今、謝罪ということで御説明いただいたんですけれども、今のお話を伺って、どれだけ日本の人たちがよく分かるかというのは疑問だと思います。というのは、私の周辺でも、あるいは世間でも、日本は土下座外交だとか、これだけ謝っても謝っても、まだよこせ、まだよこせと言うという、そういう感じで受け取っています。このギャップは何なんでしょうか。

○参考人(戸塚悦朗君) やはり、最大の問題は、被害が日本人の想像を超えたほど大きかったということだと思います。したがって、私も実はこの問題に取り掛かる前は全く知らなかった。先ほど言った経過で、国連にこの事実を報告した、その後で被害者側の方々と頻繁にお会いするようになって、一つずつ植民地支配とは何か、女性に対する日本軍の行ったことは何か、そういうことを伺って、私自身が極めて男性中心的な人間であった、家父長制そのものの考えを持っておりましたので、その点を強く反省した次第であります。
 お答えになるのかどうかよく分からないんですけれども、これまで日本が、例えば先ほど言われたような条約によって終わったというふうに言ってきたりという問題でありますけれども、実際問題として、政府が言われたことは、先ほど私は橋本総理大臣の答弁をちょっと引きましたけれども、これは実際はよく見てみますと、解決したとは言っていないんですね。サンフランシスコ平和条約等でその財産請求権の問題は誠実に対応してきたと、こういうふうに言っているだけでありまして、解決したとは一言も言っていない。その点をやっぱり重視すべきだと思います。
 例えば、北朝鮮に対しては条約はないんですね。台湾との条約は日本が破棄したわけであります。これはないんですね。それから、韓国に対しても、違法行為について個人の請求権を放棄するという条文はどこにもない。中国に対しては、日本は賠償というものは全く払っていない、あれだけの被害を与えて一銭も払っていない、それで誠実に対応したと、こういうふうに言っているんですね。
 中国とは、確かに日中平和条約ございますし、日中共同声明ございます。しかし、その中に個人の請求権の放棄という言葉は一言も入っていない。当時は、もう既にジュネーブ条約によって日本も中国も個人の請求権の放棄を禁止されておりました。だから、できなかったというのが私の考えであります。北朝鮮に対しても、今、北朝鮮が個人の請求権を放棄しようとしてもジュネーブ条約の拘束のためにできない、そういう状況であります。
 これを、条約によって解決してきたかのような発言を繰り返すということで、言わば国民もあるいは被害国の人たちもだましてきたと、この態度に問題があるのじゃないか。私は、そういう事実を上手に言葉で丸めて、被害国をだまそうとかあるいは日本の市民の人たちに誤解を与えようとか、そういうようなことをやってはならないと。それをやればやるほど関係は悪くなる。人をだましたら必ずその反動が来ます。したがって、真実をきちっと認めて、究明して認めて、そして被害者に対して、被害国に対しても日本の市民に対してもきちんと事実を全部明らかにすると、決してだまさないと、そういうことがないといけない。
 このだましてきたというか、うそをついてきたというか、誠実に対応してこなかったのに誠実だと言うその態度が私は一番大きなギャップを作っている。このギャップを埋めるには誠実に対応するしかない、先ほども申し上げたとおりです。それが初めて、本当に初めてなんですね、日本の国家機関の行為が、ここで審議するという行為が被害国に歓迎されたと。これはいまだかつて歴史的にないんです。その事実を極めて重く認めていただければ、それを続けていったら必ず溝は埋まっていくと、そういうことだと思います。

○田嶋陽子君 確かに、その橋本元総理が謝ったということも、英語を見れば、マイ・パーソナル・フィーリングであって、国として謝っているわけではないですよね。でも、日本語になったときにはそこの部分はあいまいにされていると。少しずつ少しずつずらしながら、確かに相手をだましてきた。相手の方は真剣ですから、そういうことに敏感に感じるわけですよね。ですから、幾ら謝罪したと言っても相手には通じていないということはそのとおりだと思います。
 そこで、一つ、横田参考人にお伺いいたします。横田参考人は、これは人道に対する罪であるということを、慰安婦制度ですね、お認めになったわけですけれども、その国際刑事裁判所の規程の七条のgにある要件を挙げてください。

○参考人(横田洋三君) 大変申し訳ありません。今ちょっと手元にございませんので、もし田嶋先生お手元にお持ちでしたら、御指摘いただけると有り難いと思います。

○田嶋陽子君 そこではずっと、殺人、せん滅、奴隷化からずっと来まして、e、f、fが拷問で、gが強姦、性的奴隷化、強制売春、強制妊娠、強制断種又はその他同等の重大な性的暴力とあります。
 それに関して、横田参考人にお伺いいたします。どうしてこのgのようなことがこの世界で起こるのでしょうか。

○参考人(横田洋三君) 私は男性ですから、こういう問題について確たる女性の立場や気持ちを十分に理解した答えが出せるかどうかは分かりませんが、御質問に端的にお答えするならば、やはりこれまで男性は歴史の中で、自分たちはやろうと思えば好きなことができる、やりたいことができる、その場合に女性に対して何かをする場合も何かができると。そして、女性は社会的に政治的に弱い立場でしたので、あるいは家庭の中でもそうでしたので、それに対して抵抗することも文句を言うこともできないという、そういう人類の長い歴史の中で女性と男性の関係がゆがんだ形でもって続いてきた。それの表れが戦争という状況の中で、兵士たちが極限状態で死ぬ前にもうやりたいこと全部やるんだというようなやり方でもって行動する。それが占領地における強姦行為であり、また慰安所を作り兵士たちにそういう奉仕をさせようという判断を、これも男の人たちがしたわけですけれども、したという、そういうことだと思います。
 私は、率直に言って、これは人類の歴史の中で男性が男性の立場からしか考えずに行ってきた行為、これが一番極限の形でもって出てきた姿だと、こう考えております。

○田嶋陽子君 ありがとうございます。そのとおりだと思います。
 先ほども戸塚参考人が反省なさったように、この問題を理解するためには本当に男性が良識的に勉強しないとできないほど、要するに百八十度角度を変えないとこの問題が見えないほど大変な問題なんですね。ですから、これがそう簡単に解決する問題ではないと思うんですけれども、今のお話を聞いた上でもう一度横田参考人にお伺いいたします。
 先ほど、この横田参考人がお書きになった本の中にも、アメリカの委員の意見とか何か、取りあえずこの人たちはみんな高齢なんだから、健康上の問題もあるんだから早くこの問題を解決しなければという言葉があります。そして、私も政府に物を言うときには、急いでください、この方たちはもう命が短いんですから、生きていらっしゃるうちに解決してほしいと、こういうことを言います。この言葉はとても危険なわけで、先ほどからお二人の意見を聞いていますと、特に横田参考人はやっぱり健康のために高齢のためにということを言っていらして、途中からは心身ともに傷付いているということをおっしゃり始めました。
 私は、最初、やっぱり日本の女性基金も半分はODAですね、それは医療部分です。すなわちその根本にあることは、今、横田参考人がおっしゃったように、女性は昨日の、先ほど島袋さんがおっしゃって、同じ会にいたんですが、東チモールから慰安婦の方がいらして、その人は耳も聞こえない。実際には殴られて耳も聞こえない人もいるし、おなかに刀で切り付けられて傷を付いたまま生きていらっしゃる方もいて、皆さん大変、健康の面では大変なんですけれども、結局は肉体を傷めたから肉体にと、そういう発想なんですね。その東チモールの女性もこう言っていました。私は牛のように扱われた。人間ではないんですね。
 だから、今、横田参考人がおっしゃったように、男性の意識の中には、よく言えば女は大地の母と言われて自然扱いされて、一方では男性の都合によって動物扱いされるという、その極限状況が今、横田参考人がおっしゃったような戦争での慰安所での在り方だったと思うんです。今もその意識は続いていて、肉体が傷められたから肉体の補償をということが最初に来ていると思うんですね。
 この慰安婦の方たちは、本当に体の傷を引きずりながらも心の傷で苦しんでいらっしゃるわけですね。よく眠れない、トラウマに苦しんでいらっしゃる。その人たちはそれでも苦しんで苦しんでここ五十年来たから、この間台湾に行ったときにはこう言っていました。私は許そう、でも忘れない。許すと言っているんですね、でも忘れないと。だから正義を果たしてほしいと。
 お二人にお伺いします。
 この女性の言う正義とはどういうことなんでしょうか。

○参考人(横田洋三君) 正義というのは、女性を、まずは被害者について申し上げますと、被害者の女性としての、人間として、女性であり人間としての尊厳を尊重することです。そして、男の人たちがこれまで女性を虐げられた立場に置き、そして性的な側面でも、実は慰安所、慰安婦の問題だけではありません。公娼制度とか、それから私が今真剣に取り組まなければいけないと思っておりますのは、少女たちの国際的なトラフィッキングの問題です。今でも数百万人の少女たちが、十一歳、十二歳、十三歳の少女たちが国際的に性的な搾取のために売られ、強制的に連れて行かされ、私はその少女たちの証言を国連の場でも聞きました。もう本当にショッキングな出来事です。これが現在、数百万人がそういう状況に置かれているということを考えますと、これはもう本当に深刻な問題なんです。
 ですから、慰安婦の方々、もちろん私たちはこの問題に真剣に取り組む必要がありますが、もっともっとたくさんの女性もいろんな形で被害を受けているということも考えると、これは男性の意識と、それから男性中心に作られた法律、制度、これを根本的に変えるという形で、女性を男性と対等に、女性を一個の人間、個人として尊重する、そういう制度と法律に変え、そして男性がそういう意識を持つように努力する、最終的にはそういう状況を作るということが、恐らく被害者の方がおっしゃっている正義ということではないかと、こう思います。

○参考人(戸塚悦朗君) 私も極めて同様の考えを持っております。
 実は、お手元に配付していただきました国外移送誘拐被告事件という大審院の判決があります。これは極めて古い、一番最初に上海で慰安所が作られたときに起きた事件を、大審院がこれは明確に犯罪であるというふうに、日本法上犯罪であると認めて処罰をしたものです。中では、被告側は軍に頼まれたんだというふうに言っておりますけれども、仮に軍に頼まれたものであっても認められないというふうに言っておるわけです。これが、私は正義の出発点だと思います。
 しかし、残念なことに、このような処罰がなされないような手だてが後に取られました。したがって、その後処罰はなくなった。この問題、なぜこの犯罪が全面的に処罰されなかったのか。これは、日本軍が男性によって作られていたから。日本の検察官も警察官も全部男性だったから。日本の裁判官も全部男性だったから。日本のその他の官庁もすべて男性であります。国会も男性。したがって、このような法律があっても、それを適用しないということは容易にできたわけであります。この状態を変えない限り正義は来ない。現在でも私はそれは変わっていると思いません。ここでも女性の方は極めて少数でありますし、女性の方がこの法案をリードしているんでありまして、男性の方はそれを厳しく受け止めているという段階だと思います。
 したがって、このような正義を行わなければならない、そしてこの法案を成立させることが正義であるというふうに私は思います。

○委員長(小川敏夫君) 田嶋さん、簡略にお願いします。

○田嶋陽子君 ありがとうございました。
 今、横田参考人は私が言いたかった結論、ここ過去三十年間でも三千人の女性が商業的に、トラッキングといいますか拉致されて密輸されているという状況、それを解決したいとおっしゃってくださって、それも正義につながると言ってくださって、大変有り難いと思います。それから、戸塚参考人も私たちが日ごろ思っていることをここで言ってくださって、私の結論の一つですが、大変有り難かったと思います。
 ですけれども、もう一つ、先ほど横田参考人が、途中から子供のトラッキングのお話に行ってしまったんですが、この慰安婦の問題としてもう一度お伺いいたしますが、女性の人間としての尊厳を尊重するということは、この慰安婦の問題に関しては具体的にはどういうことをお考えですか。簡潔に、一言だけ。

○委員長(小川敏夫君) 横田参考人、簡略にお願いします。

○参考人(横田洋三君) 私たちは、そういう方たちの話したいこと、我々に出したいメッセージ、とりわけ我々男性に対して出したいメッセージ、これを一つ一つ丁寧に聞いて、その一つ一つの重みを男性の側で受け止めていくということをする必要があると思っております。
 長期的には、私は、被害者の方たちの非常にまじめな形でのヒアリングということをどこかできちっとやって、その方たちの経験を基に二度とこういう女性をつくってはいけないという方向で、政策も、それから男性の人たちも自覚を持つという、そういうことが重要だと思っております。

○委員長(小川敏夫君) 田嶋さん、もう時間。

○田嶋陽子君 はい、これで終わりますが、具体的なこととしては、横田さん今はっきりおっしゃいませんでしたけれども、これは国が関与した慰安婦制度であるということを国がきちんと認めることですよね。で、もう一度謝罪することですよね。そのことを言っていただきたかったんですが、それでよろしいですか、横田参考人、イエス、ノーでおっしゃってください。その後一つ、もう一つあります。

○委員長(小川敏夫君) 田嶋さん、もう時間過ぎています。
 じゃ、横田参考人、ただいまの点、イエス、ノーの点、簡略に答えて。それで終わります。

○参考人(横田洋三君) 答えはイエスです。

○田嶋陽子君 それでは、もう一つ、これだけで終わります。

○委員長(小川敏夫君) 田嶋さん、田嶋さん、もう終わります。発言はやめてください、田嶋さん。

○田嶋陽子君 横田参考人は、この解決を目指して引き続き活動を続けていきたいとおっしゃいましたけれども、この法案を成立することがその解決に結び付くとお考えでしょうか。このまま継続審議を……

○委員長(小川敏夫君) 参考人は答えなくて結構です。参考人は答えなくて結構です。
 今、大幅に時間を超過しましたので、質問は終わらせていただきました。
 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、一言御礼を申し上げます。
 両参考人におかれましては、大変御多忙の中、貴重な御意見をお述べいただきまして誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)
 速記を止めてください。
   〔速記中止〕

○委員長(小川敏夫君) 速記を起こしてください。
    ─────────────

○委員長(小川敏夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、筆坂秀世君が委員を辞任され、その補欠として畑野君枝さんが選任されました。
    ─────────────

○委員長(小川敏夫君) これより請願の審査を行います。
 第一号透明で民主的な公務員制度改革に関する請願外三百三十件を議題といたします。
 これらの請願につきましては、理事会において協議の結果、すべて保留とすることになりました。
 以上のとおりとすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(小川敏夫君) 御異議ないと認めます。
    ─────────────

○委員長(小川敏夫君) 継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。
 内閣の重要政策及び警察等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(小川敏夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 なお、要求書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(小川敏夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────

○委員長(小川敏夫君) 委員派遣に関する件についてお諮りいたします。
 閉会中の委員派遣につきましては、その取扱いを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(小川敏夫君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時二十四分散会



慰安婦法案に戻る > トップに戻る