貿易ゲームの感想  活水女子大学YWCA 宮田 葵

 私の夏期ゼミの思い出は貿易ゲームではないかと思います.意地悪なA国の人たちとどう考えても仲裁しているようには見えない仲裁者の2人にはゲームの間中腹が立つというか悔しいというか悲しいというかそれはもう嫌な気分にさせられました.この夏いちばんの嫌な思いでした.

 私はC国の人でした.私たちの国にわたされたのは数枚の紙とシャープペンとお金2万円だけでした.A国の人はお金だってたくさん持っているし,商品をつくるための道具も使ってないのがたくさんあるのになかなか貸してくれません.定規を貸してと交渉に行くと売り上げの8割をくれるならと意地悪を言います.それにもまして意地悪なのは仲裁者の人たちです.ぐるぐる見て回って「ちゃんと仕事をしてください」と冷酷にいいます.私たちの国には10人ぐらいの国民がいるのに道具は借りてきた定規1つというとき,A国に道具を貸してと残りの何人かで交渉に行くと仲裁者の人が来て「たくさんで来ないでください」と追い返され,国に帰ってすることがなく座っていると冷たく「なまけないでください」とか「きちんと仕事をしてください」と言われ,楽しくやろうと賛美歌を広げ歌を歌うと「歌ってないで働いてください」とにらまれました.何とか商品を作って銀行に持っていこうとするとA国の人が契約と違うことを言い出して「おかしい」と言っても聞いてくれません.仲裁者は話しも聞かずA国が正しいといいます.銀行の人は私たちの商品は1ミリずれているとかいって突き返す のにA国のは簡単に受け取ります.「どうしてか」ときくと「A国だから」と言います.本当に理不尽なことだらけで思い出しただけでも腹が立ちます.

 私は何も考えずにただこのゲームにはまってしまいました.どういう意味のゲームかなんて考える余裕がありませんでした.ゲームが終わって感想などを話す時間がありました.その時このゲームは南北問題や日本にもあるいろんな問題に重ね合わせてみることが出来ることを知りました.私はC国で富んだ国ではありませんでした.やろうと思ってもやることがなく,そのことでせめられたり,物を持たない国だからと信用されなかったり,話さえ聞いてもらえなかったり本当に本当に嫌な思いをしました.1時間やそこらで終わるゲームではなくそんな状況におかれ生活している人たちがいると思うととんでもない気がします.このゲームを通して私は何も持たなくて虐げられている人の気持ちを少しだけのぞけたかなと思います.優位な立場に立っていると苦しむ気持ちも苦しめていることにも全然気づかないんだなあと思いました.自分の立っている場所がどんなところかちょっとだけわかったような気がしました.

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学生部委員長の1年間を振り返って  福島信夫(京大YMCA理事)

YMCA同盟関係の各委員会は毎年6月が切りです。私は1996年6月から学生部委員長の役に就いています。2年任期ですから,ここで半分を過ぎたことになります。そこで,感想程度ですが自分なりに振り返ってみて,次につなげたいと思います。

[活動報告]

1 学生部委員会に関わり始めた頃

そもそも,その4年前に斎藤先生に招かれて学生部委員会の委員として学Yに関わり始めました。その頃からズーっと同盟の再編があり,機能機構の改革や協力主事の廃止など改革の連続でした。その頃の印象としては,学Yはその現状と将来への展望について熱意はあるものの,かなり空回りしているなあという感じでした。

2 新しい学生部委員会への準備

細かいことは忘れましたが,今回の新しい学生部委員会に自主改革するに際して考えられたことは,次のようなものでした。

学生部委員会をより現場に近づけよう。意思決定をより実際に運動をになっている人たちに委ねよう。従来の学Yの老舗意識を捨ててお互いに顔の見える地域で学生YMCAを再生しよう。学生YMCA・都市YMCAの垣根を越えてYMCAに集う学生・青年の活動を強めよう。

3 最初の委員会で

例年は9月の委員会が最初でしたが,今回は大きな改革であったため,委員選出直後の6月に臨時の委員会を持ちました。

従来のスタイルでは,会議における検討課題は同盟のスタッフが事前に整理しておいてくれるのが当然のことでした。しかし,私たちはそこを変えたいと思いました。従来のままでは,同盟スタッフに依存した運動になってしまいます。現今の変化の時代に対応して創意工夫を凝らしながら進んでいくためには,現場第一線の皮膚感覚が敏感に意思決定に反映できる体制を創ることが不可欠だと考えました。そして,一人一人の自主性・自発性に依拠した創造的な学生YMCAを構築するには,与えられたレールの上を走ることではなくて,一人一人が新しい発想で工夫し,討議の中で問題解決していくことを全員の共通理解にしたいと思いました。

そして,委員の一人一人が自分の問題意識を話し,今後の問題解決のために力を合わせる委員会にしていくために,いろんなことが話されました。

しかし,協力主事制度を廃止するという方針をめぐる議論などは非常に深刻で出口が容易には見つからず,次の委員会まで先送りしたことも多かったように思います。そういうシンドイ会議ではありましたが,いくつかの新しい成果もありました。例えば,次のようなことが新しく出発するきっかけとなりました。

@ 組織をフラット化していくこと
A 情報の共有化→メーリングリストの活用をすること
B 同盟職員も参加した参加者全員の討議・本音の議論をすること
C 学生YMCAに関する意識の持続の工夫→メーリングリストの活用
D 全員の役割分担を明確化すること
E 当事者意識(私たちで責任を持って決めていくのだという共通理解を持つこと)を形成すること
F その他

4 その後の展開

(1) 協力主事制度

共働スタッフとして,全国で4名の配置が継続されることになりました。ほぼ,従来どおり学生YMCA活動が同盟予算によって支えられるわけであり,組織崩壊の不安は一応解消しました。

(2) 電子情報化

・ メーリングリストについては,各種委員がパソコンを保有するようになりました。情報の流通が格段に改善され,ymca−sとy−netの二つのメーリングリストに発展しています。これは,情報の扱い方として迅速で,確実で,後の整理も簡単と利点はたくさんありますが,特に,各地の多種多様な情報にいつもアクセスできているという一体感や関心の持続として,計り知れない効果を発揮しています。瀬口さんのメーリングリスト管理者としての働きも大きな力です。

・ また,インターネット時代に乗りあわせたため,ホームページの作成,同盟とのリンク,ワイズや都市YMCAとの相互乗り入れなどに発展しています。そして,このために必要なスキルを持ったnezumiさん,市原さん,細江さんほかいろいろな人々の協力を頂いています。きざしの編集も始まろうとしています。今後の更なる発展が期待されます。

(3) 委員会の議論手法の改革

・ 李さんがKJ法(カードを用いて意見を集約し,自由な発想を保証しようとするもの)をかみ砕いた方法で実地に導入してくれました。そして,活動推進協議会での議論や問題整理のための具体的な手法として確立できました。これは,全員による問題解決型の会議として非常に成果が上がっています。

・ また,この会議のまとめを同盟スタッフの横山さんと星野さんが同時ワープロして,その日のうちに電子メールに流すなど,情報の扱いとしては素晴らしい発展を見ました。こうして学生YMCAの情報処理の技術はかなり高度なレベルに達しています。

・ 今後は,やはり人間関係としての信頼関係といった,分かり合えていることの充実がポイントだと思います。このためには,顔を見せ合って率直に話し合って理解を深めるということに多くの時間を割きたいものです。特に,ワイズの方々との交流においては,会って話すことが必要です。また,学生YMCAでは毎年新しい学生が参加してきますから,会って話すことを繰り返し繰り返し行う必要があります。

(4)地域での都市YMCAと学生YMCAの協力関係の構築

・ 板野さんが中心となった中四国阪神の後援会,飯島さんや竹佐古さんが仙台で準備された後援会,京都の活動促進委員会の動きなどワイズとの協力関係も含めた都市YMCAと学生YMCAの協力関係の構築という新しい気運があります。

・ YMCA大会での出会いも大きいものがありました。最近では東京YMCAから学生YMCA担当となった秋田さんの活躍などが大きな特徴を作っていくようです。

・ 地域での協力関係の中で,全体としては活発化の傾向にあると思います。

(5) 各種プログラム

・ インドスタディキャンプ,日韓交流,夏期ゼミ等それぞれにおいて,リ・ユニオンが支えるなど一定の自律的展開を強め,学生の自主的な参加も増加傾向にあり,年度プログラムとしては順調に推移しています。

・ 課題としては,危機管理や対外交渉については,参加者だけにとどまらない問題がありますから十分に注意する必要があります。また,学生YMCAは伝統的に「狭く深い」ところがあります。これが良さを発揮するときもありますが逆に悪くなるときもありますので,バランスの取り方には留意したいと思います。

・ 夏期ゼミについては,参加者の規模,人数について,はたして今のままでいいのか?という問題意識があります。地区連盟の夏期学校の充実と全国ゼミとの関係の整理も課題です。

・ 日韓交流では,組織的位置づけの課題が残っています。

・ インドスタディキャンプでは,3年インターバルの問題やいつまでやるのかという課題を背負っています。

・ 今後,学生YMCAのプログラムをオープンにして,都市YMCAの学生たちと共有できるものにしていくには,まだまだたくさんの改善課題がありそうです。

(6) 学生YMCA寮関係

・ 岡山大の操山寮に新入寮生が入り,元気回復しました。

・ 東北大の渓水寮に女子寮生が入り,他大学生も入りました。

・ 今後は,多くの寮で,大学院生,留学生,女子学生,他大学生に門戸を開き,地域のYMCAの関わりの中で新しい位置づけ(存在意義)が得られていくことが必要ではないかと密かに考えています。

・ 寮は自己完結的になり勝ちですが,寮間の交流という新しい動きも始まりつつあります。

5 共働スタッフの働き

竹佐古さん,朝比奈さん(新),長倉さん(新),黒木さんの4名が大変頑張ってくれ,新しい学生部委員会の時代にふさわしい展開が進んでいると思います。私としては,それぞれのメンバーが逃げ出したくなるほどの負担でない限り,その思うところのままに提案し実行していったもらいたいと考えています。「それぞれが,やりたいようにやる。」ということが,今後の組織運営の基本となっていいのではないかと考えています。もちろんコミュニケーションが十分でなければそういうきれいごとは通用しませんが…。

だいたい共働スタッフというような現場第一線の人間が使命感・充実感を持って働いていれば,その組織は問題がないものです。ただ,今後のことを考えると,このようなボランティアスタッフを数倍増していくことを具体的目標にする必要がある
と感じています。

[今後の課題]

1 共働スタッフ等の充実

若い学生には,若いリーダーが指導にあたるというのは鉄則です。人を育てることを目標にしている学生YMCAは,そのための戦略を練り,組織的な方針として確立していく必要があります。働き人としては,共働スタッフのほかにサポーター,アドバイザー等のさまざまな役割を区分し種々の参加の仕組みを作り出していくというシステム構築的な発想が求められています。

また,ボランティアをすればするほど貧するようでは,運動は発展しません。協力者には交通費等の実費を払えるようになりたいものです。

2 情報ネットワークの充実

メーリングリスト,ホームページの充実のほか,顔を見せるという関係の構築に力を注ぐ必要があります。信頼でつながったネットワークを築くことがYMCAのネットワークの基本です。この原則をあらゆる機会に明確に打ち出し,その方向で動くことが必要だと思います。

そうすれば,さまざまな人材が改めて参加・協力してくれます。信頼がベースになっていれば,メーリングリストは極めて強力な情報交通手段になります。できればワールドワイドなネットワークを構築したいものです。

3 新しいプログラムの開発

学生YMCAが「人を育てる」戦略を構築するためには,新しいプログラムを開発することが必要になります。初級段階では,生活力,環境適応力の向上のための各種レベルのキャンプが考えられます。そしてリーダーシップトレーニングや具体的な運動に生かせる実用的な英語会話力の習得もプログラム化が必要になると思われます。ただし,これらの進め方については,機が熟しているか,経費や体制が組めるかなど乗り越えるべき条件がありますので,多くの方の協力を築き上げながら着実に歩んでいくということにならざるをえないと思われます。

4 学生YMCA支援の陣形づくり

「人を育てる学生YMCA」に脱皮していくプロセスでは,活動の活発化や運動の質量ともの数倍化がなくてはなりません。このためには各地域での都市YMCAとの協力,ワイズとの協力,学生YMCA寮OB組織の協力,単位大学YMCA理事会の協力,学生YMCAシニア等の後援会活動などの支援の陣形づくりが必要となります。

以上,これらはすべて先の長い課題ではありますが,混乱を極める今の時代においては「人を育てる」事業を強める必要度も激増していきます。そして,学生YMCAが果たすべき役割や使命もいっそう重く大切なものになっていくことと思います。YMCAの広いネットワークを活用し,YMCA自体を活性化し,今後とも確実な歩みを続けたいと思います。

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