学生YMCA夏期ゼミ 
2001年度報告
 


『「他者」の声に応答できるか』 
 第29回全国学生YMCA夏期ゼミナール
 
8月26日〜28日、『「他者」の声に応答できるか−いま、共に断絶を超えて』をテーマに、大阪YMCA六甲研修センターにて今年の「夏期ゼミ」を行った。北海道大学Yから熊本大学Yまで全国から1〜2年生を中心に約60人が集い、夏の最後を締めくくるにあたり活気ある会となった。
 
 講師の高橋哲哉氏(東京大学助教授)は「つくる会」による新しい歴史教科書の背景となる日本の侵略戦争を正当化する右傾化の動きや、国民を戦争に駆り立てる「装置」としての「靖国神社」の問題性を歴史的流れの中で説明された。大事なこととして、私たちと戦争・戦後責任のかかわりを挙げ、丁寧に解き明かされた。報道される事柄の背景や政治的なことなどを「知る」こと、いかなる歴史認識をもって応答していくかは一人ひとりが「判断する」ことであると課題を投げかけられた。
 高橋氏は講演を終えてすぐ、神戸港から北朝鮮にピースボートの講師として同行するというスケジュールをぬっての講演であった。

 そして、聖書研究の講師として本田哲郎神父(フランシスコ会司祭)を招き、本田神父訳の聖書『小さくされた人々のための福音』を神父を交えながら小グループで読んだ。釜ヶ崎の中で言えば「(給食をする者ではなく)給食を受けねばならない者」の列に並ぶイエス、神父の釜ヶ崎の人々との関わりとそこに見出される福音についてのお話しに、参加者は学Yの活動で出会った元"慰安婦"やハンセン病患者、日雇い労働者らの姿と重ね合わせて受け止めることができた。

 後半では、「宗教を超えて-キリスト教か福音か」と題した講演を頂き、イエスがこの地上に浸透させようとしたことは、もう一つの宗教=キリスト教ではなく、正義と平和と喜びの「神の国」であること。そして、それは社会において最もつらい思いを強いられている小さくされた者たちが、貧しさと抑圧から解放されていく過程で実現するものであり、そのことが「刈り入れ」であること。すべての人が社会の谷間や周辺に注目し、実りの共有を願って「刈り入れ」に出かけること、ここに「神の国」が始まること。その実現を願う者、そのために行動する者に求められていることは、「低みに立って見なおしなさい」(メタノイアmetanoeite)ということであると、2時間にわたりお話しを頂いた。

 参加者は聖書にほとんど初めて触れる者、キリスト者ではないがイエスの姿に従おうとしている者から神学生、牧師まで幅広いものであり、教派も様々であったが、一様に、自分のありよう、社会との関わり、また信仰を厳しく問い直された時間となった。

 中央大学YMCA、関西学院大学YMCA、同志社SCAなど近年復興した学YMCAから、また教科書問題についてエキュメニカルに連帯している他教派・団体から、都市YMCAスタッフ、ワイズメンからと広く参加者を得て、次なる歩みを定めるための出会いと気づき、対話の場となすことができた。
また、早朝礼拝は長倉望伝道師、望月浩牧師、加藤久幸牧師が担当し、学生がギターで奏楽をし祈りの時をもった。交流の時間には野外にて食事、シニアによる映画上映がなども行い大勢の方の協力により良き2泊3日となった。