日韓学習会

＜　日韓学生ＹＭＣＡ交流プログラム学習会　＞

暑い日々が続いていますが、健康にお過ごしの事と思います。
次回学習会の内容が決定しましたので、お知らせします。広島県呉市を訪れ、次回交流プログラム（2003年2月予定）のテーマである『東北アジアの平和と南北和解』について学びます。
講師をお招きして、しっかりと学べるよい機会ですので、是非参加して下さい。

日程：9月7-8日　7日13：00集合
場所：呉ＹＷＣＡ　広島県呉市幸町3-1　0823-21-2414
参加費：5000円程度（交通費プール含む）
講師：湯浅一郎氏（「ピースリンク広島・呉・岩国」　呉地区世話人）

プログラム：
7（土）13：00 集合
14：00 講演
19：00 講演を振り返って
22：00 懇親会

8（日）09：00 聖書研究会
10：00 運営委員会
12：00 解散

連絡先：森永　希（学生ＹＭＣＡ九州地区共働スタッフ）
e-mail non-kwu@mwe.biglobe.ne.jp

*参加申し込みは、9月5日までにお願いします。
*布団が十分にないので、寝袋を持っている方は、持参して下さい。

＜　日韓学習会報告　＞

●学生発題
日韓学習会報告朝鮮はどのようにして線引きされたか
京都大学YMCA　山下健太郎

　北緯３８度線を境に朝鮮半島は今も分断されている。
　この圧倒的な存在について、日本に住むものとしては何か自然現象のように、当然のもののように扱ってしまいがちである。分断線（「国境線」ではない）は一つの民族として独立を求めた朝鮮の人々を非情にも断ち切ることになっているのだが、私をはじめ、日本に住む者はそう言うことについても想像する回路を欠いているのではないかと思う。その回路を少しでも回復できるように、分断、それこそ朝鮮半島の線引きという作業はどのような過程を踏まえて行われたのかということについて、簡単であるが、考えてみたい。

１．分断はいつなされたか
１９４３／１１／２７　カイロ宣言
１９４５／２／１５ヤルタ秘密協定　＞＞ソ連に東北、北海道の占領を認める
１９４５／７／２６　　ポツダム宣言　　＞＞日本の無条件降伏を迫るが、日本は一貫して「国体」の護持を求め、交渉が難航する
　原爆投下など、日本本土攻撃が激化＞御前会議にてポツダム宣言受諾を決定（８／１０）したが、天皇の大権の縮小などでまとまらず、正式決定は８／１４
＞＞この間：８／８　ソ連参戦、平壌に侵攻、さらに南進を続けていた
＞＞米、ソ連の極東侵略の足場を作ることに懸念
＞＞朝鮮の分割統治案が突如登場
　　　つまり、日本の降伏受諾が早ければ起こらなかった事態である。

８／１０－１１　アメリカ国務省、陸・海軍省合同調整委員会
陸軍次官補ジョン・Ｊ・マクロイ、２人の若い将校に朝鮮を横に分断するラインを求める
＞３８度線に分断ラインを引くことに
理由
・ソウルをアメリカ軍政下におくため
・３８度線以南にいた日本軍の対米戦線に対する勝利を表し、軍の勢力を誇示するため
　　（３８度線以北は関東軍：大陸戦線）
＞ソ連：スターリンは受け入れ（見返りに福島県以北の日本の領土を狙ったが、認められず：ヤルタ協定は「秘密」会談だったので、アメリカにしらを切られてしまった。）
３８度線で分断し、北はソ連、南はアメリカがそれぞれ武装解除を行うことになった。

２．分断に対抗する動き
・朝鮮人民共和国の建国
　８／１５解放＞即日建国準備委員会の発足（代表、呂運亨）
８／２８には綱領を発表：真正な民主主義国家への橋渡し役・各階層の人民に解放された機関
＞社会主義を目指したが民族主義者（李承晩、金九など）も受け入れた＜民衆に支持される名士を求めた
各地に建国準備委員会ができる
＞行政権（生活物資の配給、重要施設の管理、学校運営）を握り、広範な運動になる。
　共産主義者を中心に人民政権樹立の展望があった
　親日派への反発も強かった。
９／６　朝鮮人民共和国、中央人民委員会の創建＜アメリカ軍の進駐前
　１０月末までに各地方自治体に人民委員会を設けるが、米軍による検挙、投獄などの弾圧が起こる。
　建国運動の中心にいた朝鮮共産党は米軍を「解放者」と規定していたがこれによって動揺
１０／１０米、「アメリカ軍政庁が唯一の行政機関」と宣言。行政権を失っていく
　また民族主義者（「重慶臨時政府」のメンバーなど）らは中央委員会入りを拒否し朝鮮民主党を結党
　　　北朝鮮にも臨時人民委員会が誕生したことなどもあり、自然消滅の道を歩んだ
　　　
・信託統治論
　ルーズベルト大統領は信託統治を主張していたが、４５年１月に死去
　（トルーマンはソ連との対決路線を採る）
　その後、４５年１２月にモスクワ外相会議が行われる
　アメリカ国務省内の一握りの国際協調派が主導＞１０年間の米ソによる朝鮮全土の信託統治の後の独立を提案　＞ソ連との交渉も順調だったが、アメリカ軍政庁側がソ連側から提案されたものとして情報を流した
　＞即時独立を求める朝鮮民衆の反発に合い、頓挫
　
３．分断の底にあるもの
　日本の責任
　・「国体」の護持のためにあがき続けたことが結果として分断へとつながってしまった
　＞アメリカはソ連が極東に拠点を持つことを恐れていた
　　原爆投下もソ連参戦なしに対日戦争を終結させることで、対ソ戦略で優位に立つための戦略であったという指摘（ノーマン・カズンズ『権力の病理』）　
　・建国の邪魔：朝鮮銀行券の乱発・船舶の略奪・民族文化財の略奪、搬出
　　＞また、沖縄に駐留していたアメリカ軍（その後朝鮮に進駐）に対し、建国に向
かう人民を「新たな敵」として認識させた。
＞米軍は日本軍の武装解除を行うだけでなく、その後朝鮮の民衆を制圧するため軍政を敷いた。
　・敗戦後は反共の立場からアメリカ軍政への協力を行った：総督府官僚が軍政の末端となって働いた
　・敗戦後、朝鮮人民に対する謝罪・補償は全くない　

　アメリカの責任
　・軍政によって広範な人民の建国運動を弾圧した
　　軍政の中身は朝鮮総督府の支配機構と全く変わらず、法律も同じものを使用した。
また、軍令の第１号は、「朝鮮の人民はアメリカに降服すべし」と、朝鮮が敗戦国であるかのような内容であった。
　　
　　
（参考文献）
「朝鮮革命運動史」２，３巻　（高峻石：社会評論社）
「日本とアメリカは朝鮮で何をしたか」　（梶谷善久：柘植書房）
「二つの朝鮮一つの未来」　
（ジョン・Ａ・サリバン、ロベルタ・フォス〔編〕／林茂〔訳〕：お茶の水書房）

●飛田雄一氏の講演　　　　　　
中央大学ＹＭＣＡ　佐藤　愛里子
　今回のプログラムでは神戸学生青年センターの飛田雄一氏をお招きし、北朝鮮についての講演をして頂いた。講演では飛田氏が2001年６月、実際に北朝鮮に訪れた際のビデオフィルムをもとに、現地の実状を語って下さった。
　飛田氏は、まず関西空港から洛陽ルートで平壌に入国し、平壌市内・開城（ケソン）・板門店・南北間の軍事境界線など様々なところを歴訪されたようだ。
　その映像の中で、私が最も印象に残っているのは、飛田氏が歴史博物館を訪れた際のものだ。そこでは北朝鮮の学生が校外学習をしに、その博物館に来ている様子が写っていた。私はそれを見てなぜか、北朝鮮の人がそのようなことをすることに違和感を覚えた。また彼らが数ヶ月前の私と同じように制服を着ていることにも、同じような違和感を感じた。なぜ、私はあの時驚きを感じたのだろう…。
　自問しても答えはでない。しかし一つだけわかったことがある。それは講演を聴く前の私と聴いた後の私では、北朝鮮に関する情報量が違うということである。
　自分の意識の中に、「北朝鮮＝貧困」というイメージが定着しすぎるゆえ、教育や物資が全ての面で欠けていると思い込んでいた。恥ずかしいながらも、彼らに対して偏見があった。また、マスメディアの流す画一的な情報を、１００％信じている自分がいた。だから、メディアを通さぬ生の声を聞くとそのギャップに戸惑い、違和感を抱いてしまったのかもしれない。確かに北朝鮮は貧しく、日本から見て決して安全な国とはいえないかもしれない。だが単にそれだけの認識ではあまりにも貧弱すぎる。
　北朝鮮の都市には日本の様な鉄橋や道路、近代的なビルが立ち並んでいる。とは言うものの、「その道路には車はほとんど通らず、馬が通るときもあるんですよ。」という飛田氏のお話に、やはり北朝鮮は貧しいのかと再認識する場面もあった。たとえ政府が大掛かりな公共投資をしても、それを運用する経済力が無いのでは無用の長物になる。日本のようにGDPの高い国は自動車という高級品を一般市民が購入できるが、北朝鮮ではそれが不可能なのである。また農村部の映像を見たとき都市部との差に愕然とした、…貧困が満ちている様子だった。
　講演を聴く前と後で、北朝鮮に対する見方が多少変わった。メディアで流れている情報は１００％正しいわけではない。また１００％偽りでもない。大切なことは、それが正しいのかを模索し続けること、そして現場に行った人の話などを聞いて（もちろん自分で現地にいくのがBESTなのだろう）比較してみることであろう。
　滞在中、日本人に対する監視は同行した韓国人ほど強くなかったという。しかし時にはパスポートを取られるか否かの危機にさらされたこともあり、やはり終始安全というわけではなかったようだ。飛田氏の講演のおかげで今までよりも北朝鮮が身近に感じることが出来た。心からお礼を言いたい。

●聖書研究
日本ＹＭＣＡ同盟主事　本田真也
箇所　マルコによる福音書１章１節～１５節

　イエスは、その宣教、運動を始めるとき、最初ヨハネの運動に参加していたと記されている。６章にあるようにヨハネは、後ガリラヤの領主、ヘロデに無残な処刑をされている。危険な人物であり、運動とみなされていたのである。ユダヤ教の主流ではなく、小さな禁欲的、修業的なグループであった。異教徒から改宗するときに川に全身を浸す洗礼が行われていたが、ヨハネは、罪やけがれを浄める悔い改めの証しとして洗礼を行い、もっぱら死海のほとりの荒野にて活動をしていた。しかし、全くの世から離れての密教のようでなく、その場からもヘロデの不道徳さ、神殿批判を行い捕らわれていくのである。そのような運動にイエスも最初身を置き、荒野の誘惑も修行のことを象徴しているのかもしれない。ひとつのポイントは、ローマの支配下、その支配に迎合しながらも栄華を持ち続けようとする神殿勢力、それを批判していく勢力があり、そのような時代状況の只中にイエスも身を置き、自らの運動、宣教をスタートさせたことである。
　そして、イエスは、ヨハネのような禁欲、修行、そして、荒野を選ぶのでなく、人々の中へ、街へ、現場へ向かい、１５節「神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい」と宣言したのである。この「悔い改め」については、昨年夏期ゼミの本田哲郎神父が、低みから見ること、目線を移すことだ」と言われていた。個人的な内省の問題として片付けるのでなく、ポズションを変えること。そのことにより自らの問題も見えてくるというのであろう。
　本田神父は、自ら翻訳した聖書により、「低みから見る」と訳せると言う。「神の国」も「神の支配」と言われる。そのことはそれで、大きなテーマであるが、ルカによる福音書14章１５―２４節「大宴会のたとえ」は、考える導きになる箇所である。神は、一体誰を招き、誰をもう招かないとはっきりと言っているのか。イエスの言う神の支配とは、立場がはっきりしているのではなかろうか。イエスは、自由に共感を基に動いたとも言われるが、しかし、時代状況の中で、どの立場に立つかは、はっきりしていたと思う。その点を見つつ、イエスの運動を見ていきたい。
　時代状況については、ローマ、ユダヤ、アラブという側面の織り成す流れが見え、それは、今日のパレスチナ、シオニズムなどへ繋がることがらである。また、今回の学習会のその歴史的な状況と現代を切り離さない、その接点から今を見る立場は重要なことであると思う。
　キリスト教国際団体のプログラムでキリストの和解、イエスの愛など語られるが、中立的で、ヒューマニズム的な側面を切り取り、事柄の当事者とは距離を置く形でよいのかな思わされる。その戦禍の問題性、真実もどこかできちんと見据えていかないとその場しのぎとならないかと思われる。
　聖研の中で、遠藤比呂通さんが「低み」ではなく、どうしても「高み」から見てしまうあり様を証しとして話され、その限界と無力さに気付き、イエスの前に立つことも示された。
以上

追記
　今、日本と韓国のＹＭＣＡ間で、ＹＭＣＡ関係史の編纂を進めている。１９９５年より始まった日韓YMCA歴史セミナーを２０００年の第４回で終え、歴史テキスト作成をすることとしたもの。日本のYMCA史では、植民地統治支配に、当時の日本のYMCA、組合教会を中心とするキリスト者が協力してきたことが、語られておらず、空白である。
　そのような空白を埋めていき、テキストを作成することで、歴史の学びの上に、今後の歩みを語れる道筋ができていくと思う。来年夏前には完成の予定。

●学習会の感想
京都大学ＹＭＣＡ　山下健太郎（もち）
　年度の初めということで、今回の学習会は新入生や、はじめて日韓に参加する人もあり、今回僕が発題で取り扱ったところはかなり細かいところだったんじゃないか、という不安を感じながら、発題を行った。それでも、僕としては今回取り扱ったところは知っておくべきところが多くあると思っている。瑣末でマニアックな知識にはならないように注意したつもりである。
　朝鮮半島の分断が、実際どのような力が働いて行われたのか、ということについて、日本ではほとんど知られていない。朝鮮は日本の敗戦後、なるべくして分断という形になったかのようである。でもそこには日本やアメリカ、ソ連（ここでは挙げていないが一貫して北朝鮮を保護し、分断を黙認し続けた）の意志が働いていたことは間違いない。戦時中の侵略、もしくは強制連行などの問題についてはさまざまなところでその責任を問う動きが生まれているが、現在日本に住む国民（いちおーそういうことになってる）であり、主権者（こっちのほうが響きがいい）の一人としては、最も責任を持つべき問題なのではないか、と思って取り上げてみた。結構「お勉強」で、参加した人たちは大変だったと思うけど、できればもっと知ってもらいたいと思う。
　飛田さんの北朝鮮旅行記はただ興味というか、好奇心が沸きました。まったく閉ざされてるわけじゃなく、いろんな方法を使えば見て、知ることができるところなんだなあ、というのが少し新鮮な感じでした。日韓のプログラムとかを経験して思うのだけど、どんな固っくるしい問題であってもそこに人間的なにおいだとか、興味というものがなければ一緒に問題を解決していく接点は見えないと思う。そんなにおいを感じてみたいなあ、と思ったのでした。
　最後に：今回の学習会にあわせて東ティモールへのスタディキャンプのおしらせをしてくれたヒウンさんという韓国の人が、学習会の様子を見てちょっと驚いていたのが印象的でした。こんな小さな場だけど、きちんと考える場を持ち続けるということでいろんな人の心に響いていけばいいな、とちょっと嬉しくなった。

関西地区共働スタッフ　水谷憲（あかまむし）
　前回東京で行われた日韓学習会に引き続き、今回もまた関東、中央大Ｙから３人のフレッシュなメンバーが参加してくれたことはとてもうれしいことでした。慶応大Ｙからも参加の予定があったのですが、直前でキャンセルになったのはとても残念です。
　最近の関東の各学Ｙの元気さがうかがわれます。京大Ｙからも新しい人が参加してくれました。私たちが気づかないうちにも時は流れ、「日韓」のメンバーも徐々に世代交代の様子を見せはじめているので、彼ら彼女らがこれからも継続して「日韓」にかかわりつづけてくれるようになるといいな、と思います。今回の講師は神戸学生青年センターの飛田雄一氏ということもあり、第８回交流プログラムで講演をして下さった遠藤比呂通さんと李鍾和さんが愛明君を連れてお忙しい中参加して下さったのもうれしいことでした。弁護士を目指す京大Ｙの堀金君はすっかり遠藤さんに心酔してしまったようです。
　今回は京大Ｙの山下君が「朝鮮半島はどのようにして線引きされたか」として、南北分断がいつどのように決定されたか、またそれに対する韓国での動きや、分断の底にある日本やアメリカの責任について発題をしてくれました。本来米ソで分断されるはずだったのは日本の方であったのが、日本の「国体護持」による降伏受諾の遅れと米ソの極東での駆け引きのために朝鮮半島が分断されてしまいました。朝鮮半島が日本の代わりに分断されたのだということを聞き、同時に原爆投下や沖縄のこと、靖国神社に行った時のことを思い出し、つくづく日本の降伏は「遅すぎた聖断」であったと改めて思わされました。
　飛田さんには、北朝鮮へのツアーを引率した時のことをスライドを使ってお話ししていただきました。そこから伝わってくる北朝鮮という国は、へんてこな、不思議な国でした。道路はきれいに整備されているけれども、交通量はほとんどないがらーんとした街の様子。高速道路で自転車や馬車が逆行して走っていたり…。北朝鮮の国でありながら北朝鮮の金を一度も見ることができず、買い物はすべて円でしたこと。円とドルの植民地状態なので、両替なんかしてくれないのだそうです。犬を連れて散歩している人の何気ない風景に、北朝鮮では犬を飼ったりするのは考えられないことで非常に珍しいのだということを言われていました。また、共和国は旅行できない国なのだとも言われていました。
　車が少ないことからも分かるように、ガソリン事情も悪ければ、サーカスのクライマックスで突然停電になったりするように電力事情も悪い。一般市民にとっては旅行も、犬を飼うことさえも普通にできない。でもみんなそれが普通なんだと思わされているんではないでしょうか。市販のラジオはチャンネルがはんだ付けされているのだそうで、チャンネルが動くラジオを持っているだけで反共と見られかねないんだそうです。それも日本の「遅すぎた聖断」によってもたらされたものであるのだと考えると、複雑な気持ちになります。
　Ｗ杯をきっかけに、日韓関係は再び前進し始めているようにも見えますが、それでも私たちは、北朝鮮との関係等も含めて、しっかりと過去のこと、日本が背負っている罪や責任のことなどにも目をむけて学んでいかなければと考えています。
　　　　　　　　　　　　　　　
●中央大学ＹＭＣＡ　佐藤愛里子
　６月２４日、日本は初のサッカーW杯予選突破という歴史的瞬間に酔いしれていた。新宿駅は勝利を祝う人々で溢れ、私は見知らぬ老若男女と互いに握手を交わし、至福の時を分かち合っていた。日常生活の中では、会社員や学生が共に時間を共有し言葉を交し合うことなど考えられない。しかし「W杯」という一つの共通話題があらゆる人々を集め、繋げ、一体感を共有させてくれた。京都での学習会もこれと同じである。共に見知らぬ物同士を「日韓」いう一つの共通話題が引き会わせてくれた。
　現在、日韓問題について興味のある人は全国に数多くいる。その中で、京都大学に集まった私たちは一体どういう巡り合わせで、こうして集まったのだろうか。このようなことを考えていると、「袖振り合うも多少の縁」という先人の名言が頭から離れない。
　さて、最近では私たち若者がこの先人の足跡、すなわち歴史について無関心だという声をしばしば耳にする。主たる原因として、教育する側に問題があるというが、はたしてそうだろうか。私は今日学生が兼ね備えている「私化」にあると思う。公共性から目を閉ざし、私的な関心・興味に閉じこもり、全ての判断基準を享楽に置くこの傾向は、国家や民族に対して無関心な人間を増長させている。そればかりでなく、知識や判断能力の欠乏を引き起こし、プロパガンダやマインドコントロールに陥りやすい状況を自ら作り出している。私は、このような状況を危惧し歴史や歴史認識について深く学ぼうと思った。特に日本と朝鮮との関係史は切っても切り離せないもので、この歴史のパズルを解かない限り「相互理解」が成り立たないのは、教科書問題や靖国問題から見ても周知の事実である。
　しかしやる気はあったものの勉強会では、初めての参加ということもあり中々思うように発言することができなかった。また自分で事前学習したものと異なるtopicだったので多少の戸惑いがあった。それにも関わらず、当時の日本（関東軍と日本軍）が朝鮮半島分断に大きな影響力を持っていたことや分断背後の歴史を知ることができたのは発表者の手腕であり、未熟な私にとっては大きな刺激となった。そして、最も強く感じたことは、歴史は感情的に眺めるのではなく、論理的・分析的に眺めなければならぬ産物だということだ。日本と朝鮮にある認識のズレは、単に歴史を学ぶだけではなく、各国でそれがどの様に報道され、教育され、解釈され、人々のcommonsenseとなるのかを把握しなければ解決の糸口は見出せないだろう。今回偶然にも韓国人の方が勉強会でいらしていたのだが、両国の歴史教育には以前大きな隔たりがあり、認識のズレを引き起こしているような気がした。私はその大元は「解釈のズレ」ではないかと推測する。
　歴史にＩｆは無く私達は過ぎ去ってしまった事実を多種の解釈を基に客観視する。だが中には解釈そのものが事実だと思い込む人もいる。しかしそれは大きな間違いであり、偏った思想を形成する基を作ってしまう。事実は一つだが、解釈はそれを分化し価値化する。そしてその解釈とは国や民族によってだけでなく、個々人によっても異なることがわかった。
　朝鮮との歴史問題は避けて通ることのできない課題だ。日本人は韓国側に立った視点を念頭に置くこと、また韓国人も日本に対して同等のことをせずには相互理解関係は得られない。これらを深く考えさせられた日々だった。最後にこの貴重な経験を与えてくれたＹＭＣＡの方々と、勉強会を準備して下さったすべての方に感謝の意を表し、結びの言葉としたい。
　
●中央大学ＹＭＣＡ　伊藤清香
　今回、私が日韓の勉強会に参加したのは、韓国に観光に行った際に韓国の方がよく日本について知っていることに感心したのに、日本人はそれほど韓国について知らないことに気付いたからです。これを機会にちょっと勉強したいな、と思いました。日韓の勉強会に参加して、今まであまり考えたことがなかった分野のことについて真剣に考える機会を得ました。
　今回のテーマは「南北分断」についてでしたが、なぜ、朝鮮南北分断が日本と関係あるのか、など基本的なことから知らなかったので、よい勉強になりました。一般的な韓国人は反日感情をもっているとききますが、日本人はあまりにも韓国について無関心です。一番近い国に関してもう少し勉強するべきであるとまた実感しました。
　また、北朝鮮に実際に訪問した方のお話をうかがう機会もあり、そこでの様子が納められたデジカメを見て、想像していたよりは発展していたので驚くことも多かったです。　あまりにも無知で、すごく恥ずかしくなりました。これからもっと知識を増やしていけたらと思いました。

●中央大学ＹＭＣＡ　根本忠
　今回の勉強会は京都大の地塩寮で行われるとあって楽しみとどのような話し合いになるのだろうかという思い出臨んだ。今回のテーマは「朝鮮半島がどのようにして線引きされたのか」ということであった。それまでは、朝鮮半島は50年代に起こった朝鮮戦争によって３８度線にぶんだんされと思っていた。だが、実際は、第二次世界大戦の終結間際に米・ソの話し合いによってすでに分断が決めえられていたということであった。その後、冷戦時にはいって両大国はお互いの勢力を及ぼすために経済面、軍事面で多くの支援をおこなってきたのが、今日の深い対立を生んでしまったのではないだろうか。さらには、日本の責任も追及されたわけであるが、それは「国体」護持のおためにあがき続けたことが結果として分断へとつながっていったという。これは、あらためて当時の軍国主義の日本に対して呆れるような思いを抱いてしまった｡
　ただでさえ、「国体護持」のためにアジアで多くの侵略を行い、国内においてもたくさんの国民の命を奪っていったのである｡その、５０年前の日本の見栄とでも言うべき過ちが50年たった今でも負の遺産として他国に影響を及ぼしていたのである｡
　これいがいにも、日本は戦中、朝鮮半島においてたくさんの非道な行いを行ってきた。それは、否定することの出来ない事実であるし､これから、私たち日本人が向き合っていかなければならない事実でもある｡今回の学習回では、李鐘和さんやＷＣＦの朴さんから韓国人から見た日本に対する思い等を聞かせていただき大変参考になったと思う。それ以外にも話し合いの中で新しいことを知ることが出来てよかったと思う。

●京都大学ＹＭＣＡ　石塚　晶啓
　南北分断の問題は、朝鮮民族（敢えてこう言う）の心に深く深く突き刺さっていること。この前の銃撃戦に対する感じ方も、日本人のそれとは次元の違うものであっただろう。戦争では「誰が敵か」という判断が、政府（政治）によってなされる。殺さなければ、殺されるという恐怖が、戦う双方に形づくられる。こういう過程が、すべての戦争に当てはまるわけではないだろうが、今も休戦状態、停戦ラインには軍隊がひしめく両国に、「政治的判断」を強いたのは、大国と、日本ではなかったか。在日朝鮮人のこともふくめて、分断は現在進行中である。過去はもう取り返しがつかないが、今回のような学びを通じて、自分の立場や、とるべき行動を、明らかにしていきたいと思う。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　