2000.5 例会

「ジェンダーフリーセミナー」
セクハラ事件 報告会

―ケース・スタディ:バックラッシュとキャンパス・セクシュアルハラスメント―

スピーカー  澤野 優希
「ジェンダーフリー社会をめざす若者セミナー’98」委員会元スタッフ・被害者、レズビアン・フェミニスト
◎スピーカー 川本 恵理子
ジェンダー・セクシュアリティー・クライシスセンター・スタッフ、フェミニストカウンセラー


文部省委嘱事業である「ジェンダ−フリー社会をめざす若者セミナー’98」で度々起こった セクシュアル・ハラスメント事件について、何が起こったのか、キャンバス・セクシュアル・ハラスメントとは何か、心的外傷後ストレス障害(P T S D)とはどのようなものか、等について、被害者当事者であるレズピアン・フェミニスト 澤野と、フェミニスト・カウンセラーとして関わった 川本氏がお話しします.もちろん、加害者側の方は来場をご遠慮下さい。  

※参考となるホームページのアドレスは以下の通りです。
       〇 http://www02.so-net.ne.jp/~sukotan/nikki107.html
       〇http://www02.so-net.ne.jp/~sukotan/nikki109.html
       〇http://plaza26.mbn.or.jp/~sukotan/new270.html
 
◆お話しの後は、自由な語り合いの時間を持ちます。 ◎日 時/5月28日 (日) PM 1:30 〜 5:00
◎会 場/ドーンセンター  4階 大会議室 
◎参加費/会 員 500円、 非会員 700円


5月例会報告

「ジェンダーフリーセミナー」セクハラ事件報告会を終えて 澤野 優希  

                                

 5月28日(日曜日)ドーンセンターにて、私は、日本女性学研究会5月例会として、キャンパス・セクシュアルハラスメントのケーススタディーについて、即ち文部省委嘱事業であった「ジェンダーフリーセミナー」セクハラ事件報告会を開催しました。
 1時30分から5時まで、ジェンダー・セクシュアリティー・クライシスセンターのスタッフである川本さんとと一緒に報告をしました。私は本名を明かさず、ペンネームでやりました。
 私はカミングアウトとクローゼットとを使い分けざるを得ない状態にあるからです。

   当日はいいお天気でした。参加者はスタッフも含めて15人ほどの小人数でしたが、何とかうまくいきました。途中で泣くこともありませんでした。OLPというグループの人たちにもブースを出してもらいました。
 ほとんどの人が知人や支援者でしたから、安心して話せました。終わった後の懇親会は6名でやりました。和気藹々で和やかな感じでした。こういうふうに異なるグループに属する支援者同士が会うことは実はこれが初めてだったのです。皆さん、本当にありがとうございました。ただ、できればもっと人が集まって欲しかったのですが。

 私はラディカル・レズビアン・フェミニストです。この一言がどれだけ言い難いことか皆さんはお分かりですか。この一言を言った途端にどれほど憎まれねばならないかと思うとぞっとします。このヘテロセクシズム社会においてどれほど女性憎悪やホモフォビア(同性愛に対する憎悪)が、特にフェミニズムに対する憎悪やレズビアンに対する憎悪がはびこっていることか、おわかりですか。

それは女性学やフェミニズムの中でも程度の差こそあれ同様です。だから私は私自身を守るためには、100パーセントカミングアウトすることはできないのです。多かれ少なかれ息苦しい思いをし常に裏切りの予感におびえながら、コミュニティーの中のほんの一部の限定された人間関係の中にしか安らぎを見出すことができないのです。
 だからこそ、なおさらこの報告会を開くことは大きな賭けでした。

 私はこの報告会の中でもまだすべてを語り尽くせませんでした。事実経過とコメントを大雑把に語るだけで時間は過ぎて行きました。私に「ジェンダーフリーセミナー」を紹介したのは、男性学で有名な伊藤公雄大阪大学教授であったこと、その教授の部下やゼミ生がさんざんセクシュアルハラスメント発言もしくは性差別を繰り返していたこと、その具体例、たとえば自らが買春していたことを何の反省の念もなく語っていたゼミ生、シンポジウムでの一部のパネリストによる性差別的言動、数え知れないバックラッシュなどです。

阪大で初めてなされた、セクシュアルハラスメントに関する掲示を会場のホワイトボードに貼って、これらのことについて私は時間の限り語りつづけました。それでも、私がどれほど深い絶望感と喪失感を味わったことか、幾度死のうと思ったことかについては、時間の都合もあってほとんど語れませんでした。

 この事件を通して思ったのは、ピア、すなわち共通の経験を有しているもの同士のサポートの重要性と、ピアサポート以外のサポートもまた絶対必要だということです。遠くからでも、性別やセクシュアリティーが異なっていても、いろんな形でサポートすることはできるのです。サポートなしに被害者一人で闘うのは無理です。だから皆さん、決して被害者を一人にしないでください。孤独は被害者を絶望の暗い闇の淵に突き落とし、被害者の心身を蝕んでいくのですから。

「ジェンダーフリーセミナー」セクハラ事件についてはこれでやっとけじめがついたということでしょうか。だけど私は今も神経科とフェミニスト・カウンセリングに通い、薬を常用せねばならない状態ですし、結局大学も留年してしまいました。まだまだ立ち直るには時間がかかりそうです。

 また、阪大での掲示や伊藤公雄教授の謝罪文をご覧になりたい方は、すこたん企画のウェブサイトのトップページから「最新情報」のコーナーに行って、この例会の情報のところをクリックすればアクセスできます。
 最後に、この報告会に協力してくださった方々に心から感謝の念を申し上げます。