日本女性学研究会 25周年記念シンポジウム

女性センターって
いったい何をするところ?

―NPOが描く GO government との協働―
と き : 2003年2月16日(日)10:00〜12:30(受付 9:40〜)
ところ: ドーンセンター(大阪府立女性総合センター)4階 大会議室
参加費 : 会員 500円 , 非会員 700円
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「女性センターの限界と可能性」・・・・・・・・・・・桂 容子(男女共同参画推進センター 非常勤嘱託)
「自治体の男女共同参画政策と女性センター」・・・・・・・・・交渉中(行政機関職員)
「NPOが描く協働のスタイル」・・・・・・・・・・・森 綾子(NPO法人 宝塚NPOセンター 事務局長)
   *コーディネーター ・・・・・・・・・・・小川真知子(男女共同参画センター 非常勤嘱託)
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わたしたちがよく利用する地域の「女性センター」が、最近「男女共同参画センター」や「男女共同参画推進センター」などという長いなまえに変わっていっています。中には「女性」という文字がなくなり「○○県民センター」と変わったところもあります。そもそもの目的であるところの女性の問題は解決し男女平等社会が実現されたというのでしょうか? わたしたちNPOの側も基本にかえって、「女性センター」っていったい何をするところなのか、きちんと問い直しをし、提言し、実践していかなければなりません。この記念シンポジウムでは、桂容子さんにはウーマンズスクールの時代から民間や公的な女性施策関連機関で働いてこられた経験をもとに、その「女性センター」で働く立場からの問題も絡めたお話しをしていただきます。また自治体の男女共同参画政策ということについて、「女性センター」の存在と関連したGO側からのお話しを行政機関職員の方にお願いしたいと考えています。さらに森綾子さんには、NPOが「女性センター」に積極的に関わる方法としてどのようなことが考えられるか、例えば委託方式や協働の姿はどのようになるのか、その近未来戦略を語ってもらいたいと思います。

『女性学年報』 23号合評会

と き : 2003年2月16日(日)13:30〜16:30(受付 13:10〜)
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★女性学年報23号・特集:読み直す<女>〜物語・経験・アート〜より
【発表論文と執筆者】
@公共彫刻の女性裸体像――なぜ作られ、なぜ置かれつづけるのか………… 森 理恵
駅前、公園、歩道に置かれたハダカの像に違和感を覚える人はたくさんいます。のひな利子さん、桂容子さんはじめ、その違和感を広く訴えている人たちもいます。しかしながら行政は、芸術活動支援、景観美化、といった目的を掲げて、公共空間にハダカを設置しつづけています。一方、彫刻家たちは、駅前、公園、歩道に展示するためにハダカの像を製作しつづけています。ハダカの像の製作過程にモンダイはないのでしょうか。住民・行政・彫刻家という三者のすれ違いも大いにモンダイですが、合評会では、ハダカの像をつくるということじたいについて、もう少し考えてみたいと思います。
Aホガースにみる英国風テイストの生成―偶像の破壊からシティの女たちへー…………細川 祐子
「日本人なのに、何故英国のことを…?」英国にかぎらず、いわゆる先進国のことを『女性学年報』で論じようとすると、どの分野であろうと一度は向けられる問いかけです。ましてや三百年近くも前の雑誌やグラフィック・アートなど…。けれどそれらを女の目で見直してみると、英国18世紀に面白い現象をさぐりあてることとなりました。18世紀初め、「ファッショナブルな女は不潔で国を滅ぼす存在だ」とされたのが、英国が覇権をにぎる世紀の終りには、「ファッショナブルな女は英国の文化的優越性をあらわす」ようになったのです。実はこれは、女の問題というより、男は、英国人はどうあるべきかという議論をめぐる男と男の関係のなかで打ち出されたいった女の姿でした。男の、芸術家の、国の、どんな都合と論理が女のイメージを作っていったのか、できるだけ大きく把握してみたいと思います。

★17:00〜19:00 ミニ企画&交流会:短編ビデオを観て語り合おう!

       第1部:記念シンポジウム「女性センターって いったい何をするところ?
               ―NPO・NGOが描くgovernmentGOとの協働―」の報告

                                                              松本澄子

 コーディネーターの小川真知子さん(A市男女共同参画センター非常勤嘱託)が、まず今回のシンポジウムの問題意識として@女性センターは男女平等社会の実現に寄与しているのか、また寄与し得るのか、A行政改革の一環として女性センターのNPOへの委託ということが出てきているが行政とNPOの協働ということをどう探れるか、という2点を挙げ、シンポジウムは始まった。

 一人目の発言者である「グループみこし」(関西圏の行政担当者等による自主研究グループ)のメンバーは「自治体の男女共同参画政策と女性センター」というテーマで、主に行政の立場から男女共同参画政策を推進するためのポイントとして「男女共同参画計画」「庁内推進体制」「担当セクション」「審議会」「センター(拠点施設)」「条例」「苦情処理機関」「政策評価」の8つを挙げ、自治体のあらゆる施策の中に最重点施策として位置付けるためのシステム作りをわかりやすく解説。そのためにはさまざまなテーマの多くのグループや個人、その連携組織などの市民と行政との連携・協働(パートナーシップ)のあり方−@参画型事業、A事業委託、B協働事業−を検討してゆくことや、センター(拠点施設)との関係で政策担当セクションの企画調整力、計画の進行管理力等が鍵となる。またセンター(拠点施設)の役割として、事業の中で見えてきた課題を政策へ落としていく「アンテナ」の役割や、必要な施策を担当課に先行して行っていく「パイロット」の役割の重要性を強調した。

 二番手は桂容子さん(B市男女共同参画推進センター非常勤職員)が「女性センターの限界と可能性−ローカルな検証から共通の課題を−」というテーマで発言。民間の「ウーマンズ・スクール」で徹頭徹尾女性のためのエンパワー事業を企画運営してきた後、某市の行政の女性政策セクションの仕事をして現在にいたる経歴から、女性センターの役割として啓発、情報、相談、市民活動支援、調査研究の5つを挙げ、現状は、これらが本当に効果的に機能しているのか、もしこれが他の既存施設で代替でき得るのならそもそも女性センターって本当に必要なのか、という根本的な問いを提起した。

 すべてにジェンダーの視点をもって総合的に行うことが女性センターの仕事とすれば、本来的には今ある事業のすべてにジェンダーの視点を入れていくことこそが必用なのであって、女性センターはそのための役割を担わなければならないはず。そこで女性センターの現状はどうかというと、啓発偏重の事業展開や生涯学習事業の講座と区別される男女共同参画講座、来館者数で測られる成果、フェミニストカウンセリングでも福祉の対象でもない市民の相談ごとやニーズに対応し切れていない現状、政策に反映されない現場事業、男女共同参画のゲットー化などを列挙。そもそもセンターの運営の実質的な担い手が、権限もなく裁量もできない非正規雇用者が圧倒的に多いことなどの大きな問題点が語られた。そしてそれでも女性センターが必要な理由やセンターへの期待として、過渡的施設としての必要性や、行政主導でなく、市民からの発想を組み込んだ、既存の行政のあり方を変革していくような市民パワーの醸成が不可欠であると締めくくった。

 パネリストの最後は森綾子さん(NPO法人宝塚NPOセンター事務局長)が「NPOが描く協働のスタイル」と題して、NPOの基礎を言ほぎつつ阪神大震災でのボランティア活動を契機として組織化と自己実現を果たしてきた森さん自身と宝塚NPOセンターのスタイルを例に、NPOで女性センターを委託運営することの意義をわかりやすく解説。「第1セクター(行政)と第2セクター(企業)に偏っている社会資源(人、モノ、カネ、情報)のアンバランスを変えてNPOを核とした市民セクターを強化していかねばならない。NPOは社会変革を目的としているが、人も変える、だから男も変える。それはNPOと企業、行政の3つのセクターがそれぞれの特徴を活かしながら切磋琢磨し多様なニーズによる社会サービスを創造提供する社会である。そのためには地域のいろいろなNPOの育成、ネットワークづくり、行政や企業との媒体機能、政策提言・評価、社会基盤の整備などが可能な『中間支援組織』としてのNPOが絶対必要。女性センターをNPOに委託したいが、、、という行政からの相談は実際にいっぱい来ている。その流れの中で中間支援組織となり得る、かつ女性学・フェミニズムの視点というミッションをしっかり持ったNPOが女性センターを担って行かねばならない」と、熱意を込めて語った。

 後半の質疑応答では、そもそもここで語られている「市民」とはどのような市民なのか、そういった「市民力」をどうつけていくのかといったフロア−全体への問題提起や、男女共同参画政策を推進する上での政治の力、議員力への市民の側からのバックアップについても言及があった。行政、女性センター、NPOという多角的な視点からの発言により問題意識が整理でき、次へつなぐ展望も見えたたいへん有意義なシンポジウムであったと思う。



<当日の参加者の質問や感想など(抜粋)>
○行政の担当者も2〜3年で配置換えになり、男女共同参画すらよく判らない年配の男性が来られます。センター職員さんも非正規なので、何年おられるかわからない。そんな中で、市民はまた「女性センターって、何するところ?」という問題意識を相互に確認し合わねばならないのが現状です。桂さんの話で、行政担当者は「女性問題はもう既に解決している。男女平等になっている。」と言う、と言われていましたが、行政担当者の資質に左右されるところがとても大きいと思います。

○私は、市民として、ここ1年少し近くの女性センターをよく利用し、そこでたくさんの出会いや知識をいただきました。今回、女性センタースタッフの募集があり、受けようと思います。お話しを聞くうち"女性センターってなんなん?"と、あらためて気づいた訳ですが… 女性センターのいちスタッフとして、前向きにやってゆける一番の役割とは、これからの時代、なんなのでしょうか… まだまだ解らない事だらけの私にできることがあるでしょうか。

○情報分野と保育のNPOが立ちあがりましたが、協働という名のもとに行政に安く使われる危険性があります。本当の意味での対等な関係性をどう作るか?(センター及び行政と)

○@「行政」内部にも課題や問題が多い状況(ヒト、モノ、カネ)と、市民活動のエネルギーとのスレ違いがありはしないか? 社会に出て必要でよい事柄も、市行政の限界があり、その限界への不平・不満が、多分、市民エネルギーの根源にある。このジレンマをどう軽減・解消していけるか?…。A 森さんの話は、実に先端性に富み、良きロールモデル。唯、それゆえに、「コミュニティビジネス」「中間支援組織」等、新鮮さがむしろ(私としては)概念化がすぐにはむすべません。

○女性センター、非常勤職員です。自らの雇用問題から、女性センターのありように問題を感じるようになりました。本日のシンポジウムでは、行政・女性センター非常勤嘱託・NPOと、多角的視点から考えをうかがえて、問題意識を整理することができました。やはり、立場からいって、桂さんのお話・問題提起に最も共感しました。森さんのお話しをうかがって、市民としての力をつけていく必要を感じました。

○常日頃から、色々と面倒臭い行政・女性センターで、身動きのとれない不自由さを感じている中で、森さんが言われていたように、いっそうのこと、民間で女性センターをつくってしまえばと思っています。しかし、切りばり、搾取のプロの行政が中途半端に女性施策を実施するために、なかなかには民間で女性センターを運営するのはムズカシイと思います。その可能性を教えて下さい。

○センターで見えてくる課題を、施策に反映させていく時に、担当課をどう動かしていくのか。行政機関ではなく、市民が、センターのニーズを、この問題は○○の機関が何らかの施策展開をしていく必要がある…と、訴えていくために、どういうことが有効なのかを知りたいです。

○グループみこしのお話は、今まであいまいな位置づけだった知識を、系統化していくために大きな助けとなった。 桂さんのお話は、今なおしっくりこない現在の社会と、本来の男女共同参画社会のちがいを漠然と感じていたものを、明快に分析され、又市民の側からは、なにかおかしいけれどよくわからない当局の姿勢、現状を、経験されたことの中からお話しいただいて、とても有意義でした。 森さんのお話は、おかしいと思っていたがなぜか問うこともないまますぎてきたことをわかりやすくしてくださって、ヒラ職員とはいえ公務員の立場にいるものとしては非常に有益だった。NPOのお話は、今後の社会の指針を示されていて、とても刺激的でした。 女性として、あわせて公務員という立場にいる者として、市政の本来あるべき姿を一つ示していただきました。